『360億光年の彼方のブルー』 第一章
枯れ葉が宙で静止していた。
真紅に彩られた軽やかな曲面に、紫色の斑点が葉脈に添ってにじ
むように広がっているのが見えた。
八幡神社を目前にして、縁日の賑わう音が、目の前を急行列車の
通過した後のように遠ざかった。
目の前が暗く閉ざされる直前に、一瞬、待ち合わせをしていた満
利子を見た気がした。
そのまり子の姿も廻りの景色も、スライドの画像がゆっくりと変
わってゆくような情景であった。
どれほど時間が経過したろうか、葉太は深い眠りから目覚めた
ような感じがした。
目を開けているのに、暗い中に小さな光が無限に点在する光景が、
網膜をとおさずして見えるような感覚がした。
自分が今、横になっているのか立っているのか、それ以上に、上
下、左右すらも感じられなかった。
無意識にか、意識的にか分からないが起きて立ち上がった。
立ったが体重が無いくらいに軽く感じた。
それどころかバランスをとる努力は全く要らなかった。
重力が無いのだ。
葉太は360億光年の彼方の宇宙にいた。
不確定性原理の応用と質量をエネルギーに変える超対称性変換を、
重力子素子のワームホールで、360億光年の彼方の知的生命体
が実験したからだ。
相対的な双極子の一方の宇宙、反粒子でできた反宇宙の領域に葉
太が変換されたのだ。
そして葉太の肉体は、今や純粋エネルギーの存在に変換されてし
まったのだった。
ま、ま、まりこおおお~
(注:中野区野方のマリちゃんではない)
葉太は叫んだ。
大気が無いから叫んでも、意識に直接声がこだまするようで変な
気分だ。
それ以上だ。
ブランコで酔った気分だ。
なんで、なんで、こんなあ、うっそおだろう。
いくら、おれがSF好きで泥沼人生で、女に振られて落ち込んで
いるとはいえ、誰がおれを、こんな現実あるかよ。
そういえば昔、田舎のじいちやんが神隠しの話し、してたなあ・・
かんけいないか・・・・・
(注:大気が無いからカギカッコは要りません。肉体も無い)
『360億光年の彼方のブルー/遭遇』
葉太は次第に意識が覚醒してきた。
先ほどの暗いブルーの宇宙は、淡いダーク・ターコイズ・ブルー
色であることが分かった。
無限に点在する光の点も形がはっきりしてきた。
渦巻き星雲や波状星雲、今まさに、ふたつの銀河が結合しようと
するツイン・スピン星雲で、どれも光の色が違っていて無限の美
の存在だった。
無限の時空のまっただなかの葉太は無限の美をきれいに思った。
それはまた、有限の美の思い出の彼方、まるでふる里の宇宙の東
京のネオンが輝く夜景のようでもあった。
無限に拡がる銀河、無限に点在する星々、無限に点在する星雲は、
天文写真でどれも一度も見たことがないかたちをしていた。
きれいだが、孤独であることが実感された。
ふる里の宇宙は無限に遠い彼方にあることが実感された。
葉太は泣きたくなった。
しかし、声も出ない、涙もでない。出る訳はない。
肉体が無いのだ。変な気分だ。この感じは、夢だ!悪夢だ!!で
ありや万事解決。
葉太はホームシックになっていた。
クリスマスイブの夜、満利子と銀座で食事をしてクリスマスケー
キを買って、手をつなぎ、銀座をぶらぶら歩いたことを思い出し
ていた。
エエエエエエエン、ワアアアンー
葉太は思いっきり、わざと子供のように意識の中で泣いた。
グエエエ、ゲー、吐きそうになった。
これって、宇宙飛行士の毛利さんが言っていた宇宙酔いかなあ、
プラス体なし酔い。
体が無いからぼくちん体裁が無いなあ、もはや、ぼく、ちんも無
いんだ!ぶつぶつ、ぶつぶつ・・・・
ボク、チンモナインダ、ブツブツ、ブツブツ、・・・・
大気がないのにこだまがした。
なななんだ、おれの考えが、意識がこだまするかよ!
コダマスルカヨ・・コダマスルカヨ・・コダマスルカヨ・・・・
『360億光年の彼方のブルー/出現』
音の無い声が途絶えた。
無限に埋め尽くされた星々のまっただなかに独り葉太はいた。
宇宙の深淵で、葉太は感情的な法則を超えた『物理的な法則の絶
対』という孤独の恐怖に襲われた。
それは葉太が好きで、よく見ていたNHKの宇宙大紀行スペシャ
ルの宇宙の映像が写し出されたブラウン管の中に、永遠に閉じ込
められたような恐怖だ。
葉太はいまの状況を完全には理解していなかった。
人類は、あまりにも唐突に発生した非現実的な出来事は、受け入
れられる能力がないのだった。
葉太は神経回路が狂ったかリアルな夢を見ているのだと考え始め
ていた。
先ほどの声も、音がないから、自分の意識がそう思っただけなの
かも知れないと葉太は思った。
どれほど時間が経っただろうか、葉太はここにいる限り、数分
でも数年でもさほど変わらない気がしてきた。
永遠の時間と無限の空間に存在する者にとっては、時間の長さや
空間のサイズなど意味をなさないことだけは理解できた。
また、葉太は胸のつまる思いがして目に涙が潤んできた。
(注:体がないから涙は想像です)
涙で星ぼしの光が、雨の日の窓ガラスから見る夜景のように、に
じんで見えるように感じた。
宇宙がにじみ、歪み、くしゃくしゃになり始めた。
くしゃくしゃのまん中で、星ぼしがスパークするように、光の渦
が水平に横に拡がるように出現した。
『360億光年の彼方のブルー/選択肢』
眩い光が真空の空間をゆらしていた。
やがて、光がゆらぎ始め、ところどころに明るさの異なる空間が
でき、ひときわ光の強い空間が、無数にビアズリー形のまだら模
様を描くように現れた。
しばらくするとその光の空間が、今度はいっきょに弧を描くよう
に引きのばされ、一ヶ所に集められ光の渦ができてきた。
光の渦には、お台場の夜空の観覧車のように小さな光の点が無数
に現れ、手を広げれば、抱きかかえられるほどの小さな渦巻き銀
河になった。
葉太は、目の前に起こっている超幻想的な宇宙創造のパノラマに
恍惚とし、息を飲み、茫然自失するほどの感動をしていた。
「よーさーん!よーさあーんてば!!」音のない声がした。
(注:音なし声にカギカッコ?貴方はあれ?とお思いですか、カ
ギカッコがないとかっこうが付かない。これは確固たる事、読
者サービスです)
葉太はドキッとした。
浮気しているところを目撃されたような衝撃が全神経に走った感
じだ。
(注:たぶん・・経験がないから分かりません。え?信じない?)
葉太は予想もしない、いや、予想もできない出来事で驚き、無い
心臓がバクバクするのが感じられた。
まり子が声をかけてきたのだ。
その小さな渦巻き銀河から。
「あああ、れれれ、まりこおお??????」
「そうよ!と言ってあげたいところだけどね、あたしは360億
光年の生命体ブルー!あなたの記憶、頭のメモリ-バンクからま
り子さんの情報をインストールしたのよ~ん」
葉太はこんな状況では、ひたすら口を開け、遠くの景色を見る物
理的現象に陥るほかはなかった。
葉太は気を持ちこたえて言った「まり子はそんなにセクシーなしゃ
べり方しないよ!」
「ウフッ、セクシーなのはあなたの深層意識の抑圧された欲望よ!
こんな状況ですものね!アフターケアーよっ!」
「ア、アフターケアー!?誰のせいでこんなところまで無理矢理
連れてこられて!こりゃあテロだ!詐欺だ!拉致だ!くそだ!返
せ!戻せ!おれの人生!おれの青春!おれの身体!おれの童貞か
えせ~」
「あらら、どさくさに紛れて、とられていないものまで言ってな~
い?」
「慰謝料だ!、利息だ!」葉太はムスッと口を尖らせて言った。
「しょうがないわねえ~そんなに怒っているけどねっここはいい
とこよー何でも思いのままよ」ブルーは小首をかしげ、ニコッと
して言った。
(注:たぶん、見えないから話しの筋から想像、なにしろ純粋エ
ネルギーだカラ)
・・・・知的生命体も進化しすぎると、人情ちゅうもんが無くな
るのか?
あ!!そうか!人間じゃなかったな、ブル-は・・・・
葉太は頭の中で、そう思った。
「ちゃんと聞こえているわよ~ん!そんなにここが嫌なら、帰ら
して上げてもいいわよ~でもねっ!西暦2002年じゃないのよ
ねえ~ちょっと1000年ぐらい加算されるかしらあ~ ウフッ」
・・・・・・まいたなあ~なんでよお・・・・と、葉太落ち込む。
(注:しゃべらなくとも通じるのだ)
「あらら~ん!、落ち込んじゃって、それではねっ!あと三つ選
択肢があるわよ。360億年の後に元のちょっと変わっているか
も知れない地球のまりちゃんに再会できる。この場合、お互いに
過去の記憶は無し。
二つ目はまりちゃんの夢の中ならすぐにでも会える。
三つ目はあなたの記憶、頭のメモリーバンクから情報をダウンロー
ド、あなたの宇宙をコピーしてまりちゃんと再会する。さあ~ど
うしちゃおうかな~ウフッ」
「も~~こんな人生やだ~こんなアホ文章を書くのもいやだ~~」
(注:作者のせりふです)
『360億光年の彼方のブルー/続行??』
「あら~ あら、ら、勝手にエンド!?」
渦巻き銀河ブルーが台風8号並みに荒れてきた。
作者宅では雨漏りが激しくなってきた。
とうとう、トイレのバケツまでも動員するはめになった。
・・・・雨漏りの文面で、貴方はぼろい所をご想像?
チッチッはずれ!!古く多少壊れ雑然としているけどモダンでお
洒落で広い洋風建造物です。
某TV局のドラマ制作スタッフがロケに使いたいとの申し入れ。
丁重にお断りしました。
(なんで自分の小説に作者が登場するだ!マナー違反だ!と貴方
はお思いですか?これは作者がお昼寝タイムの夢の中のお話です)
「そもそも、作者のあなたがこんなに面白いストーリーを書いて
電気信号に変換するからいけないのよ!!あなたが、この360
億光年の彼方のブルーのストーリーを太陽系西暦2002年、枯
れ葉の散る季節に、XXXさん宛にメール出したでしょう」
「ちょっと、XXXさんてなんだよ!」作者はぶ然として言った。
「実名を出して、また弊害が生じたらまずいでしょう、うふっ」
ブルーは小首をかしげてニコッとした。
「ああ、あー、お心遣いありがとう」作者は言いながら二分の一
のため息をはいた。
「続けるわね、そのメール発信中にあなたがたの宇宙の馬頭星雲
で、ブラックホールが爆発したのよ。その影響で、そのメールの
電気信号がニュートリノ素子重力パルスに変換され、全宇宙、超
次元時空までも放射されてしまってね。それで純白な、もとい、
純ブルーのバージン時空は早速あなたがたの宇宙をお手本にして、
あたし達の宇宙に新次元を創ったってわけっ」
「もう作者じゃ済まされないわよ!!ちゃんと小説の登場人物と
して、責任をとってもらうわよ!!わたし、バージン時空だった
んだから・・・
私をブルーの女に変えた責任とってよねっ」
「これからのあたし達の身の振り方、うん? もとい、意識の振
り方を完結させてよね!」ブルーはぶ然として口をとがらせて作
者をにらんだ。
(荒れ台風ブルー、東京上空に停滞ぎみ。地方快晴なり。)
葉太もぶ然として言った「そうだそうだ、最後まで生かせろ!!
責任とれえー」
「あら、最後と言う表現、イメージ悪いわよお~ ふっ」
「それじゃイクまで生かせろ~ プラス それじゃ生くまで生か
せて~」
(ブルーと葉太の声が合わさって、ハモッた)
「ん??おれたち気が合う!?」
「あら~違うわよ~このケースではナイトマナーが近似している
かも~と、あるいはナイトマナーを共にする予定が全くないのに
もかかわらず、接近してしまった不果実性と言う解釈が適切だわ
ね」
「あれー、進化や文化を異にする存在なのに、ブルーもそういう
こと思うの?」
あら、らららあ~おばかさんね~ あなたの深層意識の抑圧され
た欲望を大便、うん? あれ~あ!!代弁したのよ~うふ~ふっ」
「おまえ、だんだん人間ぽくなってきたなあ」葉太は嬉しそうに
言った。
「なんで自分の書いた小説の中の登場人物に、クレーム付けられ
なきゃならないんだよ!やだやだ、もうーやだ!こんな小説」と
夢の中の作者。
「あら~ら、あたしのせいかしらあ~、寂しいわっ」とブルー。
「シ、シー」と作者。
おしらせ
各位
いつもご愛読ありがとうございます。
360億光年の彼方のブルーは作者の体調不良につき、
あしからず臨時休刊いたします。
次回の発刊および無料配信をご期待下さいませ。
敬具
Mcode 出版/M通信社/ロイター伝?
『360億光年の太陽系のブルー』 第ニ章
2007年12月6日、朝から全国的に快晴。天高くブルー吠
える冬。
朝から作者のパソコンの調子がさえない。
エラーマークが連発している。
どうやらメモリー不足らしい。
そんな重いデーターなどダウンロードした覚えはないのだ。
いらいらしてきた作者だった。
「コヒー飲もっとっ」
「よーし、いざ出陣、2000年代の武士は朝飯は食わねどコー
ヒーは飲む!とっ!」
キュロロロ、キュルルル、ボ~~~ン!!
「こ、こんどは、ばばば、爆弾マーク~」かなり旧式のパソコン
です。
学術論文はスーパーコンピューターを使用しています。
「くそー強制終了してやる!」暗黒の病み?がモニターを覆った。
「ようし、もう一度、オン」キュッ、ボ~~~~ン!!
「ななんなんだよ!」
作者は胸に空気を、目いっぱい吸い込み、もとい、この場合は胸
に空気を胸いっぱいが適切かな~と考えつつ、ゆっくりと息をは
き出した。
そうこうしている内に爆弾マークが分裂して、砕けた黒色粒子
が白く光りはじめた。
とうとう、ハッキングされたか?
やがて、モニターには青白い閃光がほとばしり、光の粒子はスピ
ンをしはじめた。
それはどう見ても、見なくともいいが!渦巻き銀河だ!!
「ブブブ、ブルー!?」今度はパソコンではなく、作者がコヒー
カップを口元あたりで傾けたまま、かたまった。
「あら、らあ~、股間がコーヒーでエラーマークよ!」ブルーが
流し目で作者の股間を見ながら言った。
「ん!? ポピュラーサイズ!? うふっ」
「でで出たあ~~~~~~」 ボ~~~ン!!
「あら、ら~ん、椅子から落ちて今度は作者が爆弾マークね!う
ふふっ」
「ドうナてイルンだア~」ろれつが回らない作者。
「そのケースでは頭が回らない作者と書くのが適切ねっ、ふっ」
「うう~ぼくのお陰で生まれて来れたのに!生意気な!そんな子
に設定した覚えはないんよ!あくまでも、可愛く、いろっぽっく、
超、賢っく」
「あら、ら~、子供は親の背を見て育つ、のよねえ~」
「ところで、何のようだい? 360億光年の彼方の花形が、東
京くんだりまで」
(すでに、作者が完璧にレギュラー出演?こりゃ問題だあ)
「ちょっと一言、言いたいのよね~、それで360億光年の彼方
から意識だけでなく、あたしの眉目幽霊、ん?眉目秀麗な私の肉
体を同伴して来ちゃったのよね~むふっ」いまだ日本語をマスター
していないブルー、人類より進化しているはずなのに以外とアホ
なやつだ!と頭の中でつぶやく作者。
「主人公に対してアホとは何よっ!!作者の分際でその態度、も
う~許さないんだからっ!あたしには、今や、28才のOLのフ
アンだっているのよ~ふっ!」さあ–どうかな!もう嫌われてい
るかも!!
「このストーリー廃刊なんかしたら、もう~~ぜったい許さない
んだからっ!とりついてやるっ!・・・・あれ、あれれ、いけな
いんだあ~ロッカーのハナコさんじゃないのよねっ! あたし」
「うふっ」小首をかしげてニコッとブルー。
「この仕草、たまんないなあ・・ブルーは女性だもんな」独り言
の作者。
「あれえ~XXXさんは!?」とブルー。
もちろん!!
小生意気なブルーなんかよりもいいのに決まっている。
本当はそんな彼女はいるような、いないような。
「あら、ら~でしょうね~不確定性心理ってわけよね!うふっ」
つづく
えっ!? ・・・・・・