猫絵の姫君人物帖 土方歳三③「蝦夷が島辺に散る魂」 | 智本光隆ブログ

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1,土方と武子の対話

 

さて、土方編の第3回ですが。

 

北海道での土方はもうちょっと描きたかったのですが、

これはあくまで武子が主人公の物語ですので(笑

土方は二股口で新政府軍を防ぎますが、

他の道が敗れたので撤退。新選組の「誠」の旗を揚げさせ、

堂々と撤退したのは作中の通りです。

実際には、追撃してきた新政府軍に、

更に一撃与えて、引き上げたそうですが。

 

 

五稜郭に戻りますが海軍は全滅。

もう五稜郭の落城も時間の問題になっている状態。

そこで、武子と対面する・・・という流れになっています。

 

 

ここで2人になにを会話させるか・・・

けっこうぶっつけだったような気がしますし、

かなり悩んで描きました。

 

「百姓の家に生まれて武士の時代と共に去った土方」

「武士の家に生まれて明治を生きた武子」

 

このふたりの対比をどうする?

岩松武子も特異な人間であり、

「清和源氏嫡流」というこの国でもっとも古い、

武家に生まれながら、鹿鳴館の主役になった人間です。

それを死を決めていた土方と対話させた時、

自然と「武士の時代と去る男」という形になりました。

 

 

作中で語ったように、

「鎌倉幕府を滅ぼして南北朝の動乱に散った新田義貞」同様、「古き時代の最後の象徴」たるべき人間は、そこで去るものかと思います。

よく、「○○がもし明治の世を生きたら」という想定がありますが、土方歳三に関してはあまり見ませんね。

あ・・・ロシアへの亡命説はあったか。でも、可能性があるのはフランスかな・・・

でも、まず逃げないでしょうね。

土方歳三は戦術的、組織的にはリアリストですが、

昇一郎との会話で語らせた「バラガキの喧嘩」が、

彼の美意識、彼の正義なのだろうな、と。

 


 

 

「土方歳三写真」 土方歳三 - Wikipedia

 

 

2,土方死後のあれこれ

 

土方歳三は5月11日に弁天台場の奪還に五稜郭から出撃。

戦死の場所が一本木関門付近が有力というのは、

それは承知していましが、

『猫絵の姫君』では異国橋になっています。

理由は・・・作中の都合でしかありません、はい。

 

 

『燃えよ剣』に土方の墓が出てくるので、けっこう長いこと函館に土方の墓があると信じていました。

 

 

なお、市村鉄之助も登場しています

(女性説使おうか・・・と一瞬だけ思いましたが、

話が長くややこしくなるのでボツに)

市村に対する態度や、写真を託して、

五稜郭から脱出させたエピソードは好きです。

(それで土方の写真が今に残っているのだし)

武子のセリフではないですが、

 

「この男の素顔に少しだけふれたような気がして」

 

 

ところで、函館って行ったことがないので、

一度行きたいのですが。

 

 

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※一部、加筆しました。

 

 

 

智本光隆