バブソンMBAのベンチャー日記 -41ページ目

国際会計基準(IFRS)が日本企業に与える衝撃②

昨日の投稿に続き、今日はIFRS(国際会計基準)の導入が日本の企業経営に与えるインパクトについて考えてみたい。

大きな変更点として5つ挙げたが、それぞれについてコメントすることにします。

1.「経常利益」の概念(勘定科目)がなくなる。
今まで日本における損益計算書の中に、利益といわれるものは大きく分けると「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「当期純利益」の4つがあった。その内、経常利益は、営業利益に営業外収益と営業外費用を足し合わせたものであり、要は本業の利益に金利(利息)の+-を加味したものが経常利益である。経常利益自体はけっこう重要な科目であり、会社によっては営業利益よりも経常利益を利益指標として重視する会社もけっこうある。ただIFRSにも米国会計基準にもこの経常利益という概念はない。IFRSが導入されると、営業外収益・費用は、その他営業収益・費用と金融収益・費用に分割され、本業に直接関わる部分は営業利益に加味され、残りが純利益に加味されるようになる。これによって、事業運営をする上で多額の借り入れをしている会社の営業利益は減少することになる

「経常利益」は日本にしかない利益カテゴリーだが、実はけっこう便利で、純粋な本業だけの儲けは営業利益で見て、お金の貸し借りを加味した場合の企業成績として経常利益をみることができる。合わせて、経常利益は長い歴史の中で伝統的に使われてきた指標だけあって、「経常利益」がなくなることに企業経営者にとっては心理的な抵抗感があるはずだ。

2.損益計算書の純利益の下に、「包括利益」という新しい利益概念(勘定科目)が加わる。(包括利益は、純利益に、企業が抱える資産(為替や株式、土地など)の時価評価変動分を加えたもの)
この包括利益は、今まで全くなかった利益指標なので、ある意味で会計のパラダイムシフトが起きるものだと思う。今まで利益というものは、ビジネスの結果としていくら設けたのか、損したのかを表す指標であった。しかし、この包括利益は、資産の時価の増減を加味して、その期でその会社の総資産が時価でどれくらい増えたか、減ったかを示す指標である。資産の中には、土地があり在庫があり、株式があり、ブランドもある。そして時価評価するということは、本業が極めて好調でも、株式市場が不調であれば資産時価は下がるし、海外事業を行っている会社にとっては為替変動によっても当然時価が変動する。要は操作不可能な要因をもろにうけるのだ。よって、会社によっては純利益が過去最高益だが、包括利益は赤字なんてことも発生する。

時価主義が進む中で包括利益というものがでてきたわけだが、概念としては結構面白いものだと思っている。今までは、操作可能である自社ビジネスのパフォーマンスを最大化することに経営者は集中していたわけだが、包括利益が入ることで、経営者は資産を合わせた時価資産を最大化することを気にしなければならない。言い換えると、今までバランスシートなんかほとんど気にしてこなかった社長さんは、在庫や為替や株式など資産のポートフォリオも含めてお金の使い方を考えなければいけないことになる。ちなみに、これは株主にとってはプラスである。

ちなみに日経ビジネスで、1部上場企業の2009年度決算ベースでの純利益と包括利益の比較を行っているのだが、その内容が衝撃的。日本水産の包括利益は純利益の200倍、ブリヂストンは90倍など、非常に大きな差異が生じている。また逆に近畿日本鉄道は純利益36億だったのにもかかわらず、包括利益は62億円の損失に。事業運営だけでなく、資産運営も巧みに行わないと、経営者は評価されない時代がやってくるのかもしれない。

3.「特別利益」、「特別損失」がなくなる。
経常利益に「特別利益」と「特別損失」を加味したものが、純利益だったわけですが、IFRS適用後はこの「特別利益」「特別損失」はなくなることになる。そして、事業に関わる特別利益・損失は営業利益に加味されることになる。今までは事業再編やリストラに関わる費用は特別損失として計上し、かつ保有株式などの売却で特別利益を計上することで、本業の利益である営業利益と最終的な利益である純利益を見た目上よくする決算テクニックが可能だった。けれども、IFRS後は事業に関わる部分は、営業利益の中に組み込まれる。

これにより特に影響を受けるのが、成熟・衰退期にある産業だ。例えば、卸売業、新聞、書籍、外食など。何もしなければ売上はどんどん下がっていくのでリストラを行い、ダウンサイジングをしなければいけない。一方で最終利益の帳尻も合わせる必要があるので、資産を切り売りしてなんとか益出しする。今までは上述の決算テクニックを活用することで、なんとか営業利益は黒字を確保することができていた。しかし、IFRS適用により、なんでもかんでも都合の悪いものは特別損失にということができなくなるため、営業利益ベースでははっきりと赤字になってしまうのだ。このような業界における上場企業経営者は非常に頭が痛いところだと思う。


長くなったので、続きは明日

国際会計基準(IFRS)が日本企業に与える衝撃①

最近、本屋でIFRS(国際会計基準)に関する特集記事や専門誌を多く見かけるようになりました。今までそこまで気にかけてなかったのですが、中身をよくよく知ると、今までの常識的に使われていた日本の会計原則が大きく変わることになり、日本企業へ与えるインパクトが非常に大きいことが分かったので、ここで少し整理してみたいと思う。


IFRS(アイファース、アイエフアールエス、もしくは、イファースと呼ばれ、統一的な通称はまだ決まっていない)は、ヨーロッパ企業を中心に世界で110カ国以上が採用する国際会計基準。EUは、2005年に上場する5,000社に強制適用しました。一方日本は日本基準、米国は米国基準と、主要国では日本と米国だけが独自の会計基準を採用している実態があったのだが、会計基準の世界共通化の流れをうけ、米国のSECは(米国証券取引委員会)もIFRSの採用を義務付ける方向性で議論を進めており、日本も同様の方向に向かっている。

具体的には、日本は2012年に上場企業にIFRSを強制適用するかどうかを判断、決定すれば2015年か2016年に強制適用が実施されることとなる。つまり今から5年で、全ての上場企業は今まで慣れ親しんだ日本の会計基準を捨て、IFRSに切り替えることが求められるのだ。また2010年3月期から任意適用が可能となっており、先んじてIFRS基準で財務諸表を作成する企業も出始めている。


では、IFRSの適用で何が変わるか。以下、私が思うところの特に重要な変更点。


1.「経常利益」の概念(勘定科目)がなくなる。

2.損益計算書の純利益の下に、「包括利益」という新しい利益概念(勘定科目)が加わ
る。(包括利益は、純利益に、企業が抱える資産(為替や株式、土地など)の時価評価変動分を加えたもの)

3.「特別利益」、「特別損失」がなくなる。

4.減価償却費の計上方法(定率法か定額法)の選択基準が厳しくなる。

5.M&A後に発生する「のれん代」の償却が不要になる。


他にも様々な変更点があるので、その概要については、こちらを参照。


6月7日号の日経ビジネスにて「IFRSが壊す日本的経営」と題した特集記事が組まれており、その中で監査法人アヴァンティア日経ビジネスが共同で行ったフランス企業へのアンケート調査の結果が公開されている。

IFRSを導入する際に苦労したこととして、「社内の業務・ガイドラインの作成」「会計処理方法の判断」「採用した会計処理の説明資料作成」全体の9割弱を占めている。これは日本においても、当事者企業は何らかの支援が必要になってくることを示唆している。

内部統制制度の導入の際もどうだったが、上場企業は制度変更に伴う準備・施行を計画的に進めなければいけないため、ここから先5年はある意味業界関係者にとって、IFRS特需が生まれる可能性が高い。会計系コンサル、システム系コンサルにとっては、上記の苦労点への支援およびシステム変更・刷新が格好のビジネスのネタだ。昨日、国内大手コンサルでも一部IFRSネタで仕事を作ろうとしているという話を聞いて、もはや業界の一大テーマになりそうだ。

当然いろんな人たちがビジネスをしたくて話を広げるので、現場の経理・会計責任者(担当者)の間にいろんな誤解も生まれてくる。そうした中、面白いのが、金融庁が「国際会計基準(IFRS)にという関する誤解」という資料を公開していること(苦笑)。興味のある人は、是非読んで下さい。


次に、上記の変更点が企業経営に与えるインパクトについて考えてみたい。

不都合な真実

元アメリカ合衆国副大統領のアル・ゴア氏主演の「不都合な真実」をやっと観ました。

内容は、ゴアさんが地球温暖化の問題を啓蒙するために行っていた世界各国をまわってのプレゼンテーションをドキュメンタリーとしてまとめたもの。

表現の仕方は、やや扇動的であるように見受けられる点もあるが、言っていること自体は筋が通っていて、アメリカにおいて珍しく(?)良識のある政治家であることが良く分かる。

プレゼンがお上手なのは置いといて、彼は劇中、

・地球温暖化は、人々の倫理観の問題である。
・政治家が覚悟を決めて、行動するかどうかが重要なのだ。

と述べている。今まで地球温暖化は倫理観の問題であると捉えたことはなかったが、言われてみたらまさにその通りである。

経済を優先させたい政治家にとっては、まさに”不都合な真実”であり、多くのアメリカの政治家そして議会が長年、地球温暖化の事実を見て見ぬふりをしてきたこと、先進国であるにもかかわらずアメリカは京都議定書を批准しなかったこと、そして、アメリカは世界最大のCO2排出国であることなど、重要な事実を指摘している点は見逃せない。

他国のことではあるが、2000年の大統領選挙でゴアではなく、ブッシュが僅差で当選したことは、アメリカだけでなく、世界にとって不幸(不運)だったなぁとしみじみ思うのでした。

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