私自身は移植済のお子さんと実際に会う機会に恵まれ、
移植後の明るいイメージを掴むことができはじめていた。


いっぽう、夫や両親はまだいまひとつ実感を持てないまま
過ごしていた。無理もないことだが。


さくらの退院と、当時ドナーの最有力候補であった私の母の
移植外科面談・ドナー検査に合わせ、家族と
元気な移植っ子の対面が果たせないかと考えた。


コーディネーターさんに紹介してもらえないか相談したところ、
相当慎重な姿勢ではあったものの、外来で移植済の患者さんに
お声掛けしてみますねという回答を得た。


(病院側から恣意的に患者さんを選んで紹介するということは
 一種責任もありプレッシャーだったようで、ひとつ返事という
 反応ではなかった。結果的にご紹介いただけたが。
 移植外科の外来日を狙って、待合にいる家族へ
 勝手に声をかけるくらいのほうが良かったのかもしれない。
 ↑たぶん優しく対応していただけるのではないかと…。)


当日。ご紹介いただいたのがRちゃんだった。
当時3歳、目がくりっと愛らしくて元気いっぱいの女の子。
胆道閉鎖症で赤ちゃんの時に生体肝移植…と、さくらと似ている
ケースの方を選んでくださったようだ。


Rちゃんはとにかく可愛らしくて、家族みな一瞬で虜になってしまった。
移植前は黄疸で顔が茶色になっていた…とはとても思えぬ色白な肌。
性格も屈託なくて、お母さんから「お腹見せてあげたら」と促されると
ぺろーんと服をめくって傷跡を見せてくれた。
(お腹を横断する位とても大きな傷であることは間違いないのだが、
 傷跡は白くなっていて思ったほどには目立たないものだなと感じた。)


ドナーとなったお母さんも、いろいろとお話をして下さった。
私はそれまでの情報収集で「移植後はとにかく大変なことがあって、
何とか落ち着いていくものだ」と思っていたのだが、
Rちゃんの場合は術後の経過がとても順調らしかった。


合併症もなく、退院も早かったし(家に帰るのが不安になるほど)、
その後も拒絶反応などなく、大きな病気もなく、薬も少なめで…。
お母さんは「うちは特殊な方だと思うから参考になるかどうか」と
控え目におっしゃっていたが、こんなケースもあるんだ!と驚いた。


また、お母さんはドナー手術後に出産され、Rちゃんはお姉さんに
なっていて、そうした「いわゆる普通の生活」を送っていることも
励みになった。


さくらも、Rちゃんみたいにうまくいって、

元気に大きくなったらいいなぁ…。


その日からRちゃんが家族で共有する目標像になった。
ことあるごとに、「Rちゃんみたいになれたらいいね」と繰り返した。

移植…という重みに打ちのめされていた家族も、Rちゃんの笑顔から
発せられるパワーをもらってとても明るい気持ちになったようだった。


移植は広い意味の家族の力を合わせて、乗り越える大きなもの。
祖父母まで事前に移植っ子と会えるのはレアケースかもしれないが、
これからの方には可能な限りお勧めしたいしご協力したい。


Rちゃん、お母さん、長い時間お付き合いくださり

ありがとうございました。
更に可愛くお姉さんになったであろうRちゃんとまた会いたいです。