葛西術から1ヶ月を越え、減黄しないことが
明らかとなったいま
もう、入院していてもやることがなくなってきた。
採血をしても、黄疸は下がらない。
肝機能も悪いまま。最悪でもないけれど正常値とは
桁違い。
薬は1日3回飲んでいるが、それは家でも飲める。
3時間に一度特殊ミルクを飲んで、
あとは病棟の廊下をぶらぶらするだけ。
病院滞在中は、せめて娘に窓越の景色を見せながら、
歌を歌ってあげることくらいが、
親としての私にできる精一杯だった。
とはいえ家に連れて帰ることには不安が募る。
急に悪くなったらどうしよう?
仮に発熱しても近くの病院では診てもらえないだろうし…。
自分一人で面会に行くのはまだいいが、
さくらを外来や救急に連れてくるのは
果てしなく遠い道のりに感じた。
一方で病院と自宅が「通えるギリギリの範囲で遠い」ため、
付き添いと長男の子育てを両立させるのも大変だった。
働いているときより、時間的にも体力的にも更にハードで
夜は疲れ果てて光と一緒にそのまま寝てしまうことがほとんど。
光が妹のことを忘れてしまうのではないか、きょうだいで
同じ時間を共有させてやりたいという気持ちも常に強かった。
お家に連れて帰ってやりたいけど、不安…。
主治医からも退院の話が出たが、そのように回答した。
主治医は早めの退院を強いることはなかったが、
「もうたまの採血くらいしかやることもないし、
値もここ最近はあまり動いていないし、
おうちでお兄ちゃんと過ごさせてあげたらどうですか。」
と促された。
2013年6月7日、
移植外科との二度目の面談を行い、
同日退院することが決まった。
退院…
本当は、病気がスッキリ良くなって
「おめでとう!!」と祝福されながら盛大に送り出されたかった。
入れ替わりの激しい外科病棟で、これまで何度も晴れやかに
退院していく子どもたちを見送ってきた。
でも今回は、ただただ、移植までの時間つなぎなだけ。
治ったわけではなく、おめでたいわけでもない。
ベストを尽くした結果なのだから致し方ないと承知していても
ふとため息が漏れる。
さくらにとっては、病院でずっと同じ天井を
眺めているよりも、家でいろいろな刺激を与えて
あげた方がいいんだろうな…。
だから、退院はきっといいことなんだよな。
少なくとも、家で過ごせると判断されるくらいの
体調なんだから。
いろいろと考えては自分の気持ちを落ち着かせた。
さて、久々に赤ちゃんをフルに育てることになる。
これまでは疲れに任せて夜ぐっすり寝てたけど、
そうもいかなくなるなぁ…。
楽しみなような、通院の負担が減るような、却って
てんてこ舞いになるような、緊張するような…
何とも言えない気持ちだった。
「おめでたいけどおめでたくない」が、この頃の心境。
少し前まで、長男の保育園などで、知り合いから
「赤ちゃん産まれたんだよね!?おめでとう!」
と笑顔で声をかけられるたび
「ええ…」と多忙なふりをして詳細な話を避けていた。
(クラス担任の先生には事実をありのまま伝えていたが。)
「おめでとう」の言葉が苦痛だった。
特に最初は、病気のことを受け入れられなかったので、
「ちっともおめでたくないよ…」とすら思っていた。
今回もまた、「退院おめでとう!」
と声をかけてもらったのに
「全然治ったわけじゃないんだけどね」
と内心つぶやくのだろうか。
退院は嬉しいのだけど、素直に喜べない。
そんな段階だった。
【この頃の採血結果】
2013年5月27日 月齢2ヶ月10日
T-bil 6.72
D-bil 5.10
AST 184
ALT 200
γ-GTP 639