退院が決まると、これまで看護師さんにお任せだった
投薬の指導を受け、私があげるようになった。
当時の処方
1日3回 ウルソ顆粒 80mg (胆汁の流れを良くする)
インチンコウトウエキス顆粒ツムラ135 0.6g
(黄疸を改善し肝臓を守る)
パンビタン末 1g (総合ビタミン剤)
1日2回 バクトラミン顆粒 0.4g (抗生剤)
1日1回 アルファロール散 0.1μg (ビタミンD)
週3回 ケイツーシロップ0.2% 2mg/1ml (ビタミンK)
これらの粉薬は、ひとつの容器に集め、
少量の水をたらしてシリンジ(注射器のようなもの)で
吸い取り、子どもの口に流しいれる。
念のため更に少量の水を足し、いわばすすぎとして容器や
シリンジの内壁に残った薬も飲ませる。
子どもが飲む薬というと、
一般の方がイメージするのはいわゆる
「かぜシロップ」のような甘くておいしいものだろう。
だが、胆道閉鎖症の子が飲む薬に甘いものは基本的にない。
ウルソは大人が「錠剤」という形で飲んでも
顔をしかめるほど苦いし、
バクトラミン(バクタ)もものすごくまずい。
インチンコウトウはいかにも漢方薬という臭いで、
一旦服につけばどんなに洗濯しても黄色が取れない。
ただ難病の子どもたちは新生児のころから薬を飲んでいるので
苦味・臭みを拒否する前に身体が慣れるようだ。
さくらも含め、どんな薬でも飲めるという子は結構多い。
親の私が引いてしまうくらいのドロドロした黄土色の液体を
飲ませてもけろっとしているさくら。
その点では非常に助かった。
少し前までは「一生薬を飲みながら生きるなんて…」と、
内服そのものにすら抵抗感があった私だが、
より元気に毎日を過ごすため、
より良い状態で移植を迎えられるよう
コンディションを整えるために薬で助けてもらうことについて、
いちいち拒否感情も持っていられなくなった。
そんなことよりも娘の命や笑顔が大事。
少しでも胆汁が流れるように、
身体に足りていない脂溶性ビタミンを取り込めるように、
祈りを込めながらシリンジを押した。
※脂を分解できない胆道閉鎖症の子は、
脂溶性ビタミン(D/A/K/E)が吸収されにくい。
ビタミンKが欠乏すると出血しやすくなり、最悪の場合脳出血で
亡くなってしまうこともある。
また、ビタミンDが不足することから骨ももろくなってしまう。
そういった背景から、ビタミン剤を3種類飲んでいる。