<①からの続き>

福井座長

北海道大学大学院医学研究科教授の玉腰委員よりご説明

玉腰委員

疫学研究はどのようなものか、集団内における健康に関連する状態や事象の分布と決定要因について研究、健康問題のコントロールに応用する学問。例えば病気の患者さんがどれぐらい、どこにいるか、ふえているのか減っているのか、ほかの病気に比べて多いのか少ないのかを明らかにする。

「その決定要因」は、どのような方にそのような病気が起きてくるのか、どのような生活習慣がその病気に関連、予防するのか、どのよう な人がハイリスクか、そういったことをみていく。「それを健康問題のコントロールに応用する」

集団の中で病気がふえているのか減っているのか、多いのか少ないのかという基本的な情報を明らかにするためには、全ての人を対象にしなければならない。同意をされた方だけをみていると、例えば重症の方が落ちるとか、軽い方が落ちることで、大きく判断を間違える可能性。やはり全数をきちんと対象とできるような枠組みが必要。

もう1つは、コホート研究、死亡や疾病罹患状況等を追いかけて、今の生活習慣などがその後の健康にどのような影響を与えるかを調べる方法。ここから得られた多くの結果が今の施策に生かされています、そのコホート研究は、 10年、20年かけてやっと結果が出る。個人情報保護法よりも前から始まっている研究、今の施策に生かされている。

ことしからがん登録法で別立て、循環器疾患の登録は都道府県単位、民間の医療機関、公立の医療機関から都道府県に向けて情報が出ている。学会単位での疾患登録も幾つも行われており、血液の疾患とか循環器の疾患、透析の患者さんの情報が集められている。 また、特定疾患、研究班が医療機関に問い合わせて、全国の情報を集めています。

長期追跡研究を行っている、国立がん研究センターの実施する多目的コホート研究の追跡情報として、地域の脳卒中心筋梗塞の登録を使われております。

特定の病気の患者さんの予後、予後要因を明らかにするような研究も同意が得られないために特定の方が外れ、正しい成果が得られなくなる懸念。

複数の既存資料を用いて疫学研究、研究が進めにくくなる懸念。

健康診断のデータもベースライン、対象となる方たちのそれ以前の疾患、病気があるかないかの情報源、その方たちがどう変わっていったかの情報源、医療機関や自治体からの情報提供を受けるも、これらもうまく動かなくなるおそれ。

医薬品の安全性、副作用を明らかにする研究、診療報酬明細書等のレセプトデータ研究、いろいろな形で病歴を用います、これらがうまく動かなくなる、偏ったデータになってしまう。

福井座長

独立行政法人国立がん研究センター企画戦略局長の藤原康弘先 生より

藤原(康)委員

臨床試験は、医薬品、医療機器、手術とかを使って、それぞれの手技の安全性や有効性を評価、観察研究は、保存血液とか組織を使って遺伝子解析、過去の診療録、カルテを調べて患者さんのいろいろな情報の解析、 看護の領域ではインタビューとかアンケート、これも観察研究の範囲。同意取得のプロセスは、臨床試験の場合は、文書同意、観察研究の場合はさまざま。例えば生体試料、血液とか組織を使って研究という場合には、文書によって同意を取得。ただ、過去の試料、10年も20 年前、保存試料、過去試料で同意取得が困難な場合はオプトアウト方式、情報公開、施設のホームページに出し、それに対して患者さんがみたときに、解析をしてほしくない、拒否をしたい場合は、拒否をする、そのオプトアウトで過去試料が分析できる方法。

カルテのデータを用いる研究、5年とか10 年、患者さんを呼び出して同意をとることはまず行いません、現実的に不可能、オプトアウト方式を使って観察研究が行われていることが多い。

患者さんからいただく採血とか手術などで出てくる検体の一部を将来的にいろいろな研究に使えるかどうかを、前もって文書同意をいただいております。

昨今の医療機関のホームページをみると、いまだに同意をとらずにオプトアウト方式の包括的同意でサンプル収集。今後、個人情報保護に関する委員会などでもう少し丁寧にみて、誤解をしている医療機 関がないかどうか検討した方が。

同意取得が困難な場合の取扱いについて、センターでの臨床研究、観察研究も含めて、 全部閲覧できるようにしてあります。

医療情報の研究利用というのは、将来の医療の革命、改善には必須、どうやって医療情報、病歴情報を使って研究したらいいかは腐心、国内には、医療情報の研究利用を安定的に支える仕組みが、あるのに、ないのが 一番不思議、個人情報保護法の第4章では適用除外規定、1月1日施行の第6条、全面施行の第76条は、医療情報はその適用除外の対象になる。適用除外と書かれているのに、適用除外になっていないというのが いまだに意味がわからない、

適用除外規定で医療情報は適用除外と書いてあるのに、ここでまたさらに議論するという意味がわからない。例えば国立国際医療研究センターがやっているような糖尿病のデータベース、JDREAMS、レセプトのデータベース、こういうデータベースの構築の過程で、その病歴データに載っけるためには、全員の患者さんの同意をとりなさい、何十万人のICをとる。そんなことをやらせて今後、本当に医療の改革ができるかどうかが私は理解に苦しみます。次世代医療ICT基盤協議会の中で、新聞報道では、将来的に第三者機関をつくって、 そこでデータをハンドリング、個人情報保護との整合性をとる、これも個人情報保護委員会の参事官の方にこういうものの取扱いの将来性を聞かせていただきたい。使えないデータベースを今から我々が必死でつくっている。海外では倫理指針の中の被験者保護ルールと、医療情報とか個人情報の保護のルールは割と離れて取り扱われていることが多く。 研究参加はアメリカの言葉でいうとinformed consentですが、informed consentを取得が同意、情報 提供、個人情報保護に関しての同意authorizationという言葉を使って、使い分けて表現。これが日本では、同意という一言葉にくくられてやっています。同意となると、医学系研究に関する倫理指針では、IC文書の同意の規定、非常に厳しくなりました。 これはディオバンの事案を受けて厳しくなった、現行では最低でも21項目 説明しないといけないのが同意。こういうのを個人情報保護法関連で今後全ての疾患分野について求めていく。非常識きわまりない、無理だと思う。

連結可能匿名化された情報の研究への利用、サンプルをいただいて、その患者さんの名前は伏せてほかの医療機関にお願いする場合、医科研には個人名は伏せて送り、医科研の先生は個人名等は全然わからず、匿名化された状態で解析。日本の今の指針の制度では、 研究者が対応表にアクセスできない場合でも、同意手続、オプトアウトや倫理審査を求める指針の規定。つまり、医科研の先生方はがんセンターにある対応表にアクセスできなくても、その患者さんの同意に関してオプトアウトとか倫理審査を医科研でやる、非常に手間のかかる仕組み。

藤原(靜)委員

個人がわかるかどうか、用途、目的は問題としておりません、定義に該当するかどうか。旧法も既に10年、聞 いておりますと、玉腰先生は自治体、府立大学、市立大学、条例を抜きには考えられません。国立がん研究センターは国立、行政機関個人情報保護法及び独立行政法人等個人情報保護法になります。行個法、独個法は、要配慮個人情報概念は導入、民間の改正個人情報保護法のような条件、上乗せの規律ではない。例外事由の仕組み、当該例外事由解釈、指針で何とかならないか。目的規定に利活用、学問の自由は入っており、それとの関係、

福井座長

恐らく個別の懸念、一つ一つ詰めていきたい、

別所委員

機関別にどの法律が適用、一旦整理、どこが問題か整理をしないと、複雑になる。

個人情報保護法でいうと、がん研究センターの方がおっしゃったけれども、76条の例外規定があって、4章が丸ごと除外規定。4章が適用されない人たちはどうなのか。適用される人たちになったときに、どこの条文がどう問題になってくるのか、整理をきちんとしていかないと、すごく混乱がふえるだけ、

山縣委員

今回の場合には、 自治体から国立大学に来る場合、公立病院から国立大学に情報提供する場合、民間から来る場合が全く違う話と、初めて理解、ガイドラインではそういう議論はこれまでほとんどされず、法律をよく知らない人間からするとそういう状況になっています、本当にこれをきちんと整理しないと、何を議論しているかわからなくなる。

病歴というのを何をもって病歴とするか、既往歴として書いたものも含めて全部病歴か。

武藤委員

そういった期間の学習とか積み重ね が一切なく、いきなり有識者の先生に、はい、どうぞという投げ方は、どういう意図があるのか。お三方の先生は大変お忙しい中で資料を準備、各種の個人情報保護法と先生方が置かれている環境の橋渡しは一体どなたがしているのか。現状をお話しと、政令の間に開き、いら立ちというか、どういった意図でそれぞれの機関の先生方 にお話をいただいたのか、事務局にご説明いただきたい、関係性の整理をぜひしていただきたい。<③へ続く>