西医学健康法昭和303月発行

西 勝造著

二健康の四大原則

(二)食は命なり

●理想的な食餌

 今日栄養を口にする人は、猫も杓子もカロリーを述べたてる。わたくしとても熱量の単位として、カロリーをということには反対ではない。しかしわたくしの主張する栄養学は、熱量学の第二法則のエントロピーを基礎とする栄養学であって、従って今日の栄養学とは異なっている。

 またわたくしは栄養学においては、蛋白質が糖質にもなるし脂質にもなるし、糖質はまた蛋白質にも脂質にもなるし、更にまた脂質は蛋白質にも糖質にもなるということを、化学方程式を挙げて論じているのである。即ち三大栄養素は交流するというのである。従来の学説では糖質と脂質のは蛋白質に変化しないということになっているが、わたくしはこれ等の論者に対して次のことばを浴びせている。空を翔ける鳥も土をもぐるもぐらも、北極のエスキモーも南洋の土人も、その土地のものを食べて生きている。従って各々の食糧は異なっている筈である。ところがその生体を分析してみると、蛋白質の含有率は同率を示している。これは何故か。草食を主とする牛や豚の体内の蛋白質や糖質はどこから来るものか。

 わたくしは理想的食餌の摂り方として。つぎのように系数を挙げている。即ち主食物を十とすれば、副食物の割合を、野菜を三、魚肉類を三、果物を一ということにしている。

 次に西医学においては、朝食を摂らぬことになっている。即ち昼と晩の二食主義の実行をすすめている。

 また西医学では白砂糖の過食を極力避けるようにしている。これはカルシウムを破壊するからである。

次に体液の中生を保つために、最近アルカリ性食品が盛んに奨励され宣伝されているが、ここでは省略するであろう。できるだけ野菜食を多く摂るようにすれば、この問題も自然に解決するのである。また、西医学健康法を朝夕実行すれば、この問題も解決されるであろう。

●ビタミンCを多く摂る

 わたくしは一にも二にもビタミンCを取れと提唱している。わたくしのビタミンC論を、ろくに研究せずに、某栄養学者が、西は馬鹿の一つ覚えのようにビタミンCばかり宣伝していると悪口を言われたそうだが、わたくしにはわたくしの主張があってビタミンCを提唱していているのである。

 第一ビタミンCの一日の所要量が、他のビタミン所要量に比較して殆ど絶対的に比較して殆ど絶対的といっても過言でない程多いことからも、ビタミンCを高調せねばならぬ理由がわかるであろう。しかし、わたくしは、所要量の点からのみビタミンCを論ずるほど軽率ではない。ビタミンCを十分に摂取してなければ、他のビタミン類が効果をあらわさぬという理由からでもある。更にまた、ビタミンCを多量に摂るように食品の選択に意を配っておれば、それ等の食品の中には自ずから他の必要なビタミンやミネラルが含有されているから、特にビタミンCを主張するわけでもある。

 また一つには、日本の医学者はあまり注意を払っていないが、コラーゲンの生成にはビタミンCが絶対的に不可欠のものであり、またこれも日本の医学者の多くは研究に手を染めていないが、動静脈吻合管もまたビタミンCが欠乏していては完全というわけにはいかぬからである。

 ビタミンCの生理的作用及び二十六種の各種疾病の治療上の効果等に就いては、拙者「ビタミンC」を参照せられたい。

●体温と発汗の処置

 一般の人々は、皮膚を身体の包装だと思い込んでいる。包装が汚れると見た目にきたないから、洗濯するつもりで入浴している。とんでもない話である。皮膚は確かに包装のように体を保護する役目ももっているが、体と外界とを連絡する重要な連絡機関でもある。

われわれが生活しているということは、体内で新陳代謝を行っているということである。そして新陳代謝は一種の燃焼作用であって、熱を作ることである。

暑気になって、皮膚からの放散だけでは体温の調節のとれぬ時には、皮膚の汗腺から汗を出して調節する。別段汗をかいていない時でも、われわれの体からは、水分がガス体となって蒸散されている。それがガス体だけでは間に合わない時は、液体となって即ち汗となって分泌されるのである。

汗の成分は尿に似てその主成分は水分であるが、発汗によって体内から失われるものは、塩分、尿素、尿酸、ビタミンC、等である。このうち塩分とビタミンCは、体にとって必要欠くことのできない成分であるから、発汗したならば、必ず水分と塩分とビタミンCとを補給することを忘れてはならぬ。

●皮膚の新しい解釈

皮膚というと、多くの人々は、内臓の内側等はこの中に含まれぬと考えている。ところが内臓の内側内皮も蒼白になる人がある。例えば人体旋転儀にかかると、顔色が蒼白になるひとがある。かかる場合は内臓の内皮膚も蒼白となっているのである。

さてこの場合、蒼白になるという生理現象は、皮膚毛細管が収縮して血液が動静脈吻合管を通ることであり、そしてこの現象は、その毛細管によって養われていた細胞を一時的に断食状態に陥れることである。このことは消化管の内皮も同様である。さてこの断食状態は組織を賦活せしめる効果のあるもので、従って凱旋気によって我々は、腸の内皮の機能を高め、やがては宿便を排泄するという思わぬ好結果にめぐまれることもある。

また、皮膚は神経と共に発生学的には外胚葉から発生したもので、両者の間に緊密なつながりがある。従ってわたくしは皮膚は神経であるとも極限できると考えている。神経の鈍い人ほど、皮膚も鈍いということは、あながちこじつけばかりではない。

特に皮膚の健康のためにわたくしは温冷浴法という療法を創案して、多くの病者は勿論、健康者からも感謝されている。

 

紹介者からの一言

 西勝造先生時代から、栄養学は少しも進歩していないどころか、後退している一方に思われます。むしろ、昔の時代に後退した方が進歩するのではないでしょうか?今の時代の食生活をしていたら、病気になるように思われてきます。

 私は甘いものが大好きです。そのため、お菓子のない生活は淋しいです。おいしいコーヒーと美味しいケーキを食べているときが、生きていて幸福感を感じます。白砂糖はどうして悪者なのか、酵素ジュースを作ったことがありますか?酵素ジュースは白砂糖でないとうまく発酵しないのです。ミネラルが含まれているとうまく発酵できないようです。

世の中で、砂糖の嫌いな生物はいますか?乳酸菌はオリゴ糖や砂糖を入れればよく発酵します。EM菌の善玉菌はお米のとぎ汁と白砂糖で発酵させます。黒砂糖でもできますが。細菌だって、ウイルスだって、蝶や蜂、熊や犬や猫もたぶん、もちろん蟻やカブト虫、子供も、地球上の生物で甘いものが嫌いな生物はいないのではないでしょうか?

お米を発酵させれば甘酒に、甘いお酒がおいしいです。お料理はお酒やみりんを入れるとコクが出ます。

お砂糖が悪者扱いにされる原因は人間の進化に秘密があるようです。人間だけが体の中でビタミンCを作ることができないからです。他の動物は自分の体の中で産生ができるのです。

白砂糖は骨がもろくなるとか、酸化するのが早いとかビタミンCを破壊するとか言われています。人間だけがビタミンCを身体で産生できない、人間が進化する段階で、人間だけが甘いものをたらふく食べられない動物になり下がってしまったようです。私としては、非常に悲しい進化です。

西先生は赤ちゃんの産湯も温水と冷水を交互に、皮膚を刺激することが、後々の赤ちゃんの呼吸状態を悪化させないと言われています。私も、経験上、帝王切開の赤ちゃんに、生まれたときには元気に泣いたのに、しばらくすると、多呼吸が多くいるのが不思議と感じていました。帝王切開の赤ちゃんこそが、皮膚刺激が大切のようです。今の小児科や産科医はそれを絶対に認めません。お母さんに麻酔をして、赤ちゃんの皮膚を鈍感にさせて、人工呼吸を優先にします。今の医療には、嘆かわしいものを多く感じられてしまいます。

リンパマッサージは温冷浴ではありませんが、肌に直接の皮膚刺激です。神経の刺激になっていて、やはり凄いマッサージだと、改めて、感じます。