赤ちゃんの進化学

西原克成著

●アトピーだらけの一歳児

 日本の病院の多くでは、生後五カ月から離乳食を勧めている。

 離乳食を早く与えると、乳児はアトピーになる危険性が高い。まず症例から紹介してみたい。

 ある時、八か月から離乳食を与えたために、顔も含めた全身のアトピー性皮膚炎になってしまった一歳児を連れたお母さんが、私の診察室にこられた。その子は、顔から背中、手足にいたるまでアトピー性皮膚炎が見られ、目がトロンとして、まるで頭脳の働きがストップしている様子が、はたからも見てとれた。

 お母さんの手も皮膚炎でただれていた。この若いお母さんは、冷たい物が大好きだったのである。冷たい飲み物やアイスクリームを、日頃好んで飲んだり食べる人は、アトピーになりやすい。なぜなら“腸を冷やす”からである。妊娠中に冷たい飲み物やアイスクリームを、日頃好んで飲んだり食べたりしていたこのお母さんは、まず自分自身がアトピーになっていた。生まれてきたこの子も、当然お母さんの母乳を飲んで、生後すぐにアトピーになった。 母親の生活スタイルが、育児に、大きく関わってくる。つまり、母体の状態が、そのまま乳児に反映されるのである。お母さんは、このことを自覚する必要がある。

●離乳前の幼児には味噌汁も毒になる

 このお母さんには、冷たい物をやめるように、また一歳児には、離乳食をやめさせ、乳児用のミルクに戻すか、カタクリかスターチを溶いて与えるように指導した。すると一週間ほどで、この乳児は、本来の珠タマのような肌に戻った。お母さんの手のアトピーの方も、あれから冷たい物をやめたために、著しく改善されていた。ところが、三週間目の再診のとき、子供の顔に、また赤い湿疹がでていたので、「味噌汁をのませたでしょう?」と尋ねてみると、「味噌汁の“済んだところ”ならいいと思って与えた」というのである。それで私は、「味噌汁というものは、たとえ澄んだところでも、大豆タンパクがはいっています。これを離乳前の乳児に飲ませるのは危険です。へたすると、一生涯、大豆が食べられない身体になってしまいます」と注意した。さすがこのお母さんは驚いていた。無知とは恐ろしいものである。だれでも、元気で健康な子に育ってほしい。だから自然界の掟オキテというと大袈裟に聞こえるが、生命の原理に即した育児をすることが親の使命である。そしてこれを伝えるのが医者の指名である。ところが、今の医学者までが無知なのだから、素人のお母さんが無知なのも無理のないことである。

 さて、一カ月後の再診のときも、やはりこの子は、再び軽いアトピー性皮膚炎になっていたのである。どうしてこうなったのか。また、お母さんを問いただすと、乳児用ミルクを、ある離乳用のサポート・ミルクに替えたのだという。この離乳用のミルクは、よかれと誤解してか、さまざまなタンパク質が加えてある。

 一般のお母さん方にしてみれば、周囲のいろいろな人たちから、いろいろな意見を聞き、いろいろな助言を受けたくなるのは当然である。あれこれ試してみたいのもわかる。決してこのお母さん一人が、意志が弱いわけではないと思う。

 しかし、『聖書』に「知らずに犯す罪は大きい」とあるように、知らないから何をしてもゆるされる……という道理はない。現実に子供が、誤った育児によって、取り返しのつかない障害を抱え込むことがある。

●育児意識に大きな開きがある

 「アメリカでは、二歳まで母乳で育てます」というと、お母さん方は一様に驚かれるが、これは戦前の日本の育児法と同じなのである。それでも日常生活に戻ると、どうしても周囲の意見に押されてしまう。アメリカの育児法がいろいろな事件があって、戦前の日本式になっていることを知っている日本の医学者は皆無に近い。

 アフリカでは、30年前までは、子供は四歳までお乳だけで育てるのがふつうであった。これを未開社会の“遅れた”育児法だと笑ってはいけない。生物学的に見ると、これが本当の“ヒト”の乳児食なのである。ゴリラやオランウータンは、成体はヒトより大きくなるが、二歳めでは母乳だけで育つ。ゴリラの二歳は、ヒトの四歳である。

●「早すぎる離乳食」が生み出す病気

 実際に「離乳食は三ヶ月から」というセリフはよく耳にする。あるいは、「一歳になったら乳離れ」という文句もよく言われる。

 しかしこのような言葉には、なんら医学的な根拠がない。すくなくとも、動物学や進化学、医学の正当な知識をもたない人の“言葉”であるが、じつは有名なアメリカのスポック博士の育児書にはこれが書いてあるのだ。しかもこれが、我が国の厚生省の“虎の巻”となっているというから驚きである。しかも、ご当地アメリカでは、この育児書を信じている医者は、今や医師失格の烙印ラクインを押される始末であるのにもかかわらずである。さすがに厚生省も、スポック博士の「離乳食三ヶ月」説を、最近になって、「離乳食は五、六ヶ月から」というように変えたが、いずれも迷信であることに変わりはない。この迷信がまかり通ってきたことが原因で、つまり“早すぎる離乳食”が原因で、日本中がアトピーの子供達でいっぱいになったのである。 次回に続きます

 

紹介者からの一言

娘が保育士をしているので、保育園での離乳食の開始時期を尋ねましたら、6カ月だよ、5カ月は早いよと、と言っていました。少し、ホットしました。

私は、30年前の母子手帳に書いていた、生後2カ月から、果汁を与え、更に、30年前の育児書に書いていた、4か月に離乳食を始めました。そして、一年目に離乳食が完了しました。その30年前の育児書を今でも、持っています。そこには、「生後三カ月ごろまでは、お乳だけがただ一つの栄養源、四~五カ月でお乳以外の食べ物を消化する準備が整い、五~六ヶ月になると、赤ちゃんに必要な栄養はお乳だけではとてもおいつきません。離乳が遅れると、赤ちゃんの健康や発育に色々な悪い影響があらわれるようになります」と、書いてありました。なんということでしょう。アトピーは免れたものの、オネショ(関係ないかな?)喘息、リウマチに悩むことになりました。この責任はどこに? 今の母子手帳には、この記事はいつのまにか、こっそりと抜かれています。

今の母子手帳に書いている誤りの一つに日光浴があります。日光浴は必要ありませんと書いてあります。化粧品会社とグルになっています。

人間には日光浴が必要です。30年前の育児書には「日光に当たることによって、皮膚や気管を丈夫にするうえで欠かせないことです。暖かい季節では一ヶ月過ぎから、徐々に行います。日光浴は皮膚を強くする以外に、紫外線を浴びることによって、ビタミンDがからだの中に蓄積され、骨の発達にも欠かせません。また、股やおしりなども、つとめて日に当てるようにすると、皮膚が丈夫になります。日光浴で注意しなければならないことは、直射日光は赤ちゃんにとっては刺激が強いので、長い間当てないことです。頭や顔には、直射日光をあてないように、つばのある帽子をかぶせることです」と書かれています。大人でも、夏は日焼けして、黒くなるのが自然なのです。それを、今の人は、赤ちゃんから大人まで、まるで、お日様を敵に回しています。自然界の植物も見てください。お日様を嫌っている植物は誰もいません。シダも苔も、多少の違いはありますが、お日様が大好きです。人間だけが嫌っています。これは化粧品会社の策略なのです。化粧品に含まれた粗悪な油脂や香料等が原因になって(事実は防腐剤のメチルパランが皮膚の老化を促進するので、日焼けのシミと言う事に転化した)、色素沈着をおこし、日光にさらされると悪化するのです(医学博士 宇都宮光明)所沢の8月の広報の健康づくりに、「牛乳・乳製品で丈夫な骨や歯をつくる」と、相も変わらず載っていました。杏林大学の分子栄養学の山田豊文医学博士は、牛乳や乳製品は骨を脆くすると、御著書をたくさん出版されて、講演もしています。私も聞きに行きました。

もう一つは、奇形予防の葉酸です。妊娠中のごくごく初期ならまだしも、手足ができあがってしまえば、あまり意味がありません。医者も厚生労働省もわかっているのですが、一旦決められると、容易に消されないようです。権力者のメンツがつぶれるからなのでしょうか?私が働いていた頃の上司が言っていました。管理者になれば自分の言葉の間違いを訂正できないのだと、簡単に間違いましたとはいえないのです。間違ったことを認めれば、役職から退くことになるようです。だから、言葉に慎重にならなければいけないと。わかったような、わからないような。上司であろうが下であろうが、同じ人間です。間違いを犯して、どうして間違いましたと言えないのだろうか、しかし、権力者には権力者の厳しい世界があるようです。それが日本の風習なのでしょうね。それに比べたら、今の権力者はなんと軽く“間違いました”と言うのでしょうか、それも悲しくなります。先人のように、切腹を覚悟して、自分の言葉にもっと責任をもってほしいです。誤れば許してもらえると軽く考えているようです。役職が泣いています。それとも今の時代の役職は吹けば飛ぶように、軽い物になってしまったのでしょうか。それならば、理解が出来ます。当てになりません。

取り敢えず、正しい知識は自分で掴むしかない時代です。今の権力者は、頼りになりません。間違っていても責任をとりませんし、すぐに頭を下げて、謝るのですから、どっちにしろ、自分の身体のことですから、自分で責任を取るしかありません。後世の子供たちのために、正しい知識を持つように努力しましょう。