ー7日目ー (Fussen)
本日は、ミュンヘンから電車で2時間、ロマンティック街道のフィナーレの街、フュッセンへ。この街に来たのは、ある城に行くためであった。その城とは、アメリカやパリのディズニーランドにある眠れる森の美女の城が建設の際、モデルにしたとされる城、ノイシュヴァンシュタイン城のこと。ちなみに、東京ディズニーランドのシンデレラ城もこの城をモデルにしたと言ううわさもあるが、事実ではない。(TDLのシンデレラ城がモデルにした城は、フランスのユッセ城)。ここに行くことは、おれたちの計画性のほとんどないこの旅の中で、唯一、日本で日程の計画をしていた時から、決めていたことである。しかし、この日の天候は大雪。しかも、とても寒く、観光日和と呼ぶには、程遠い状況にあった。まぁ、2月のドイツに来ているわけだから、それなりの覚悟はしていたけれども。
フュッセンの駅に到着。肌に突き刺さる冷たい空気と視界を遮る大雪。おれたちは、駅から城のあるホーエンシュヴァンガン村までバスで行き、そこから歩いて城を目指した。村には、ノイシュヴァンシュタイン城の近くにもう一つ大きな城、ホーエンシュヴァンガン城があり、チケットは同じ場所で二つの城のチケットを購入することができる(入場の時間指定有り)。おれたちは最初にホーエンシュヴァンガン城へ行くことにした。この城もまた、人気の城で、フュッセンの街に来たら、だいたいの人がノイシュヴァンシュタイン城とセットで見るらしい。真っ白で幻想的な雰囲気が漂うノイシュヴァンシュタイン城に対し、このホーエンシュヴァンガン城は黄色で覆われているため、ポップな印象を受けた。城の見学ツアーでは、入場時に説明イヤホンが手渡され、この城で起こった様々な出来事や、展示品に纏わるエピソードなど詳しく知ることができる。おれは、歴史がすごく好きだし、アンティークなものを見ることも大好きなので興味深く城の中を巡ることができた。
この城からわずかではあるが、ノイシュヴァンシュタイン城を見ることができた。山の中に浮かぶ白亜の夢の城。ガイドブックには、雪が降っていない日の写真が載っていたため、緑の中に美しく映えているが、この日は残念ながら大雪。しかし、雪に覆われた山の中に浮かぶ城は、また違った良さが出ていて、幻想的な城をより、美しくしているようにも見えた。
※ノイシュヴァンシュタイン城: かつてのバイエルン国王ルートヴィヒ2世が、17年の歳月と巨額の費用をつぎ込んで自己の夢を実現させようと、精魂込めて造った白亜の美しい城。中世風ではあるが、築城は19世紀のこと。見るアングルによって違った城のように見えるのも興味深いが、この美しさの裏にひそむルートヴィヒ2世の、姫をめとらず孤独で数奇な狂気に満ちた運命は、シュタルンベルク湖での謎の死に至るまで、今もって多くの人の関心を集め、映画や多数の書物に語り継がれている。(下の写真:晴れた日のノイシュヴァンシュタイン城)
おれたちは一度、昼食をとるためバス停付近まで戻った。食べる場所が、2~3つしかなく、ここは観光地なので値段が少々高かったけれども、ずっと寒い中を歩いていたせいで体が震えていて、何か温かいものを必要としていたおれたちは、財布が思ったより軽くなることに抵抗はなかった。こういう状況になると、暖炉のそばで飲むコーヒーは格別だ。何気ないスープだって、特別なものに感じる。おれたちは、午後に訪れるノイシュヴァンシュタイン城までの山道を耐えるため、小さなレストランで体を温めていった。
いよいよ憧れのノイシュヴァンシュタイン城へ。真っ直ぐではあるが、1時間近く坂道を登ることはやはり、簡単なことではなく、その上、雪が降っているため地面がぬかるんでいたので、とても歩きにくかった。城にはおれたちのように徒歩で行く手段のほかに、馬車で行く手段もある。しかし、おれたちは格安の旅。使わなくてもいいところは、基本的には使わないことがルールである。それでも、馬車に乗り楽そうな人を見れば、羨ましく思ったりもしたけれど。
城の見学ツアーの基本的なことは、午前中に行ったホーエンシュヴァンガン城のそれと変わりはない。入場時に説明イヤホンが手渡され、それを聞きながら各部屋を回るというもの。ここでは、おれたちの他にも、何組か日本人のグループが来ていた。やはり、この城の美しさは、アジアの極東まで届いているという事であろうか。城の中にある各部屋の窓から眺めるフュッセンの街並みもまた、とてもきれいであったが、撮影禁止と言うのが残念で仕方がなかった。おれは、興味深く、イヤホンから流れる説明に耳を傾け、驚いたり感動したりを繰り返したのだが、この城は歴史に興味がない人でも充分楽しめる城であると思う。心動かされるものが多くあり、訪れる観光客の感情は激しく揺れ、忙しくなるに違いない。
おれたちは来た坂道を今度は下り、バス停を目指した。ぬかるんだ山道は、上りよりも下りのほうが危険だ。おれは、何回か転倒してしまい、着ていた服も履いていた靴も、ドロドロになってしまった。それでも、そんな嫌な思いを、それほど感じずにミュンヘンまで戻ることができたのは、この日見たもの聞いたものが、自分にとってあまりに素晴らしく、貴重な体験であったからに他ならない。
ミュンヘンに戻り、おれたちは夕食へ。この日は、ドイツ最後の夜であったが、そろそろ日本の味が恋しくなってきていたため、おれたちは宿から歩いて10分ほどの日本料理屋に行くことにした。お店の名前は、'庄屋’。しかし、ここは居酒屋ではなく、ご飯やうどん、そばなどが楽しめるジャパニーズ・レストランだ。おれは、きつねうどんとおにぎりを日本語で注文した。ニューヨークでもそうであったけど、外国で食べる日本の料理は特別に美味しい。多分、味は日本で普通に食べられる程度のレベルであるのに、なぜか特別なものに感じてしまう。料理と共に出された日本茶も、とても美味しかった。また、ドイツの人が美味しそうに、’UDON’や’SUSHI’を食べているのを見ることも興味深く、それはおれたち日本人を微笑ませてくれる光景だ。次にどこか海外に行く機会があるなら、またこのように日本料理屋に行き、現地の人がどのように日本のものを食べているか観察したいと思った。
宿に戻り、次の日の準備。明日はいよいよ、電車で国境を越える。7日間のドイツの旅が終わり、オーストリアへ。オーストリアはどんなふうにして、おれたちを喜ばしてくれるのであろう。おれは、ドイツでの感動がオーストリアでもあることを期待し、ドイツ最後の夜、眠りについた。