今からたしか3〜4年くらい前、今回関わることになった多頭飼育現場の相談がありました。
いま個人で活動されている方からの相談で、外から見ても酷い状況になっているということでした。
当時の対応としては、多頭にしている本人にLYSTAから電話をして手術の案内をしましたが、その後、本人が電話にでてくれることはなく、こちらに連絡がくることもありませんでした。
去年も、その個人で活動されている方と他の会の代表とでこの現場の本人とコンタクトをとろうとしていたそうですが、お話することは叶わず、足踏み状態で終わってしまったと、その会の代表さんから聞いていました。
そして7月、LYSTAに来た相談メールが、その現場の本人からでした。
その現場に関わり解決したいと動いていたその方たちにも一緒に来ていただいて、現場の確認に行くことにしました。
その時の様子です。
生活保護を受給するため、亡くなった親御さんの持ち家をリースバックにして賃貸していたご自宅の家賃滞納で、退去しなくてはいけなくなった。
同じタイミングで、知り合いの社長さんから新しい仕事をするから手伝ってと言われて、その方を頼って二時間離れたところに猫と共に引っ越しできることにはなった。
しかし全頭不妊去勢手術をすることが条件だったための相談でした。
正直に書きますが、ここまでの状態にしてしまっている人を、本当に猫共々受け入れてくれる場所があるのか、自分の目で確かめないと、口だけでこの本人を信じることはできませんでした。手術した先の猫の生活が保障されないと、手術のサポートはできません。
二時間先の引越し先を確認しに行ってきて、本人と猫を受け入れてくれることになった社長さんともお話をして、猫が入居する場所も確認してきました。
社長さんが仕事を誘ったときは、本人が生活保護を受けていることも、家がこんな状態になっていることも、多頭飼育崩壊になっていることも知らなかったそうです。
それが、次から次にそんな話がでてきたとのことでした。
そんな請け負ってくれるひとがいるのかと疑心暗鬼でしたが、社長さんは「しょうがねーじゃん、うちで働いたらって言っちゃったんだもの。面倒みてやるしかないじゃん。」とおっしゃっていました。
私の人を見る目がよっぽど劣っていなければ、ああいう仕事の社長さんをやってきたくらいの方だから、面倒見のいい社長さんなんだろうと思います。
猫が入居する場所には、新しく始める広い仕事場に壁を作り仕切って、床張りクロス・キャットウォークのようなものをリフォームしてくださるとのことでした。
猫が暮らしていける場所は確認できたので、崩壊現場の成猫18匹の避妊去勢手術を実施しました。
引っ越し先の準備が整ってから、8月中旬くらいを目途に引っ越し予定です。
本当は、LYSTAで引き取ったほうが私は安心だし、手元にいたほうが楽です。
でも、すでにギュウギュウのシェルターで18匹の猫を受け入れるには1つのお部屋が必要になってしまいます。
そんな状況で、居場所が確保されたこれだけの頭数の子たちを無理に引き取ることができません。
そのため、これからもこのご本人とは連絡を取り続け、この猫たちと付き合い続けることを選択しました。
引っ越すと言っても片道二時間、本人には猫18匹を移動するキャリーも車もありません。
LYSTAの車で猫の引っ越しに同行し、その後、本人が猫のお世話を衛生的に実施していけるのか経過観察し、猫たちが不幸なことにならないようにして見守っていく、というか、監視していきます。
もしまた衛生的にお世話できないような状況になり始めたときには、本人から猫を引き離すことにして誓約書を交わすことにします。
入居するお部屋のリフォームは、社長さんの費用負担で始めてくださっています。
多頭飼育崩壊にさせてしまった人のために、そこまでのお金をかけて受け入れてもらって、本人はその恩を感じているだろうか。
「こんなことしてくれる人、なかなかいるもんじゃないよ。」
「絶対に裏切っちゃダメだよ。」
「逃げちゃだめだよ。」と本人に伝えました。
本人に、「今のこの家の状況をどう思いますか」と聞きましたら、「サイアクです」と言っていたので、多頭飼育崩壊だということは認識されているようでした。
新しい土地で、愚直に仕事をし、毎日猫のお世話をして、生きなおしていってほしいです。
今回の手術費用は、社長さんが頭金として半分ほど入れてくださって、残りはLYSTAで支払いし、毎月1万円ずつ返済していただくようにしました。
とは言っても、今後も二時間も離れた場所に猫を移す手伝いや以降の監視で、LYSTAにいただいたご寄付を使わせていただくことにはなってしまいます。
ご寄付を使わせていただく以上、あの子たちがまた不幸になるようなことにはさせないようにしますので、お引越し、そしてその先まで、支援者の皆様にも見守っていただけたらと思います。