偉大なるギタービルダー、百瀬恭夫さんが亡くなってしまった。

 

 

 

私が最初に買ったギターはヘッドウェイHD-512。

高校1年の冬休み、年明けすぐだった記憶があるので1982年1月か。

当時国産のギターは本場米国のマーチン、ギブソン、ギルドとは比較にならないような低い評価で値段も扱いも全然違うものだったが

百瀬さんが立ち上げたヘッドウェイはそうした海外メーカーと遜色ないクオリティと適切な価格で

ギター業界に衝撃を与えていた(当時のギター好き学生が楽器店や音楽誌などで得た印象)。

高校入ってすぐに週末は御茶ノ水に通うようになり

自分のギターが欲しくなったので(それまでは姉貴のお下がりのヤマハFG-125)、

ギター代稼ぎのアルバイトと幾つもの楽器店でのギター試奏に明け暮れた。

多分百本くらいは弾き比べたんじゃないかな。

そして十万ちょっと貯まった冬休み、

とりわけ親切に接してくれた(今はもう無い)ヲグラ楽器で

店員さんのアドバイスも受けて、最終的にこのモデルに決めた。

十代の頃に出演したライヴではこのギターが相棒だった。

何度か大きな修理を経て、今はライヴで使うことはほぼ無いけれど

いまだに家で弾いている、大切な一本。

 

その3年後くらいに同じくヲグラ楽器で運命的な出逢いとなった

ギターワークスOO-18。

ギターワークスはヘッドウェイから独立した職人さんが立ち上げたメーカーで

百瀬さんの技術やスピリットは当然受け継いでいただろう。

メーカーとしては短命だったが私の中ではこれ以上のギターは無く、

もう四十年近くライヴもレコーディングもずっと一緒だから

相棒というよりもう体の一部になってるのかもしれない(笑)。

 

そして2003年夏ぐらいだったかな、長いことコキ使いすぎたせいか(苦笑)

ギターワークスの調子が悪くなり、最初にリペアに出した工房との相性も合わず

修理後も思うような音が出なくなった時期があった。

だましだまし使っていたが限界で、

ライヴで同じように使えるクオリティのギターを探して

最終的に選んだのがやはり百瀬さんの作ったギターだった。

 

ヘッドウェイは工場が火災に遭うなどして営業停止を余儀なくされていたが

21世紀に入り見事にカムバック、ヘッドウェイブランドを蘇らせていた。

そんな新生ヘッドウェイの直営店だったと思われるモモセギターギャラリー(この店も今は無い・・・)に2004年6月、引き寄せられるように足を運んだ。

新しいヘッドウェイのギターを何本も弾き比べ、

これは!と思った時、私の表情を見て店員さんがニコッと笑い

“でしょ?これがダントツお勧めですよ”と言われたのがヘッドウェイ 04アーティスト。

これは百瀬さんがほぼ一人で手掛けてるんじゃないかと思ってるんだが、

出音がこの時点で素晴らしいのは勿論だが、もっと良くなる可能性の方を

より感じたことが大きかった。

以降バンドでもソロでもライヴで大活躍する。

 

その後信頼できる修理工が見つかり、

ギターワークスの音が奇跡的に蘇り(寧ろ更に良くなり)

2008年にバンドが無くなったこともあり

ライヴ・レコーディングのメインギターは再びギターワークスになったが

家で一番弾くギターはこのヘッドウェイ04アーティストだ。

 

今所有しているアコースティックギターはこの三本のみで、

全て直接的・間接的に百瀬さんが関わっている。

私は百瀬さんの作ったギターの音に死ぬまで魅了され続けるんだろう。

 

ありがとうございました、

今後も弾き続けます。

 

合掌。

 

※メーカーのエピソード等は当時の記憶や情報が更新されてないので、

正確でないかも知れません、ご了承ください。