ダブリンの鐘つきカビ人間 | Lyrics for M

Lyrics for M

何する?

自分用の記録



「愛は いつも間違う」





2024.7.9 東京国際フォーラムC


カビ人間 七五三掛龍也くん

サトル 吉澤閑也くん


生で見る初トラジャ

今日はトラジャの結成日だったらしい


30年前、下北沢の駅前劇場で何度か観ていた遊気舎

最後に行った時、もらった手描きフライヤーの次回予告が、ダブリンだった…覚えてる

トラジャのおかげで2024年に出会うとは、なんと不思議な縁

大王 後藤ひろひとさんの天才を、もう一度観たいと心の片隅で思っていて、叶ってしまった

それが私にとってのダブリン2024である


定かではない記憶の中で、1996年にもらった手描きフライヤーには、カビ人間の絵があった

せ◯し男の姿で、まるでノートルダムの鐘(ダブリン初演は1996.4.18、ディズニーのノートルダムの鐘日本公開は1996.8.24)

アングラぱんだちゃんの4コマ漫画も


んー、あれは幻なのか???

記憶のすり替え??


私が遊気舎を観てたのはほんとに小さい駅前劇場だったけど、ダブリンはスズナリだったらしいから、今思えば遊気舎の意気込みを感じる


遊気舎の舞台は、演目が変わっても、いつも同じキャラクター(ワイシャツにピストルを持つ男)が出てきたり、脚本演出の後藤さんが美味しい役で出てきたり、今で言う椎名林檎さんみたいな貫禄の女優さんがいたり、飛び抜けてお下品な女優さんがいたり、「お馴染みのキャラ」込みでの楽しみがあった

劇団の公演はそういうところあるんでしょうね

いつものアノ人が出てくるだけで、いつもの間合いで喋り出すと想像するだけで、笑ってしまうような

そしてあの小さな劇場の濃密な空間!

楽しくないわけがない


※パンフレットに後藤ひろひとさんのインタビューがあり、面白かった

そして、以前のダブリンキャストも記載あり、楠見さんはあの役だろうなぁという予想が当たってた

久保田さんはジジイだった(笑)なるほど


今回、演出はウォーリー木下さん

ウォーリーさんは後藤さんの同世代で後輩

ダブリン初のミュージカル化


ダブリンは今までG2さんの演出で再演を繰り返していたらしい


G2さんと言えば、トニセンだし

松尾貴史さん、中村梅雀さん、入野自由くんも出演していて

今回のヒロイン井原六花さんは今度、剛くんの舞台に出られるそうだし

演劇界、狭すぎないか😅



****


ケルト音楽

奇病に冒された不思議な町


序盤から、ほぼ終盤まで、恋人どうしであるはずのサトルとマナミの噛み合わなさ、物語への熱量の差が居心地悪いのだけど、その居心地悪さが舞台の大きなスパイス

サトルとマナミの衣装の違いも、2人ののめり込み具合の差をよく表してる


奇妙な世界には入りたくないサトルがいてくれるお陰様で、観客は奇病が蔓延する町へ、サトルと共に否応なく引きずり込んでいってもらえる


閑也くんの元々のキャラクターが愛くるしくサトルが閑也くんそのもの、あわあわと巻き込まれてるのがかわいい

セリフも聞きやすく、歌も上手い

愛嬌がすごいんだよ、アイドル


町の人がそれぞれの奇病について歌で説明するところは、ちょっと退屈だった

手足が木になってしまう人、背中から天使の羽が生えてしまった人、電気を発生してしまう人、膝が悪い人、亀の甲羅の人、、

その奇病が物語に作用するかというと、それほどでもない

天使っぽい人だけ少し🤏話に出てきた


遊気舎では、もっとそれぞれの奇病がフィーチャーされたんじゃないかな

セリフというより、役者の存在感とかでダークファンタジー感を高めたんじゃないかと思ってしまった


2024版は、歌も上手いし美術もいいし、役者さんも芸達者でレベルは高いけど、序盤、学芸会感が出てしまいがち

だって、みんな被り物とかしてるし、一歩間違うとコント

劇場が豪華なだけに…


ところが、カビ人間しめちゃんである

陰鬱で世間に背を向けたせ◯し男みたいなキャラクターを想像していたら、無垢で健気でビジュが美…

これは、惹きつけられる

仕方がない

これはファンタジーであるというのを、1人で体現し、成立させていた!

すごいと思う

カビ人間が天使のように善良そのものだから、酷い目に遭うたび観客の涙を誘う

触れるものが腐ってしまうカビ人間は、シザーハンズでもある


劇中、カビ人間とジジイ(おさえちゃんの父親?)が、かつて何か因縁があったらしいことが仄めかされる

ジジイが盲目になった原因は、カビ人間?

それなのにジジイはカビ人間に優しい

おさえちゃんを助けたから?

それだけで…?

ここのサイドストーリーは想像するだけだけど、物語に深みを与えてる

口から思ってることと反対の言葉が出てしまうおさえちゃんが、もどかしくも可笑しく、そしてやるせない


同窓生コンビ政治家と神父の悪事は

裏テーマ(体制批判とか)というほどのものでは無いと思うけど

あれだけ笑わされた果てに

あんな呪いが残る結末へ繋がるのだから

後藤さんの性格の悪さ(いい意味で)が私には刺さる

後味が良いわけないのに、夢を見てたみたいな楽しい気持ちで終わってしまう

ファンタジーですから、と、悪い顔で微笑む演者と観客は、共犯関係にある

抜けられなくなるのは、こういうところ



追記

パンフレットによると、

1996版ダブリンでは、途中、観客に物語をどちらへ転がすか決めてもらう演出があったそう

そして、その観客はステージ上の特等席で観劇するのだけど、どの選択肢を選んでも、いたたまれないストーリーになるようになっていたとかで、ほんとに毒がすごい(笑)

最高なんだよ