阿佐ヶ谷「うさぎ」② | 慟哭のプリンス/咆哮の油姫

阿佐ヶ谷「うさぎ」②

入口の頭上には監視カメラが付いている。

防犯というより、やはり監視用だろう。

事務所のような無機質なアルミ扉のノブを引く。

すると、センサーを感知したチャイムが鳴る。

少し間を置いて、奧から地味な黒のワンピースを着たママが、

大塚時代と変わらぬ満面の笑顔で迎えてくれた。

「お久しぶりです、〇〇さん。」

「ああ、元気そうだね。」

彼女は、大塚の人気韓流エステ「ファニー」で3年間ママを勤めた。

その後、次のママにバトンタッチして辞めたのだが、

店は一年後にガサが入り潰れた。


「こちらへは?」

「うむ、近くに用事があったから。」

「そうですか、電話で御予約有り難うございます。」

「ははw」

かしこまるママが、少し可笑しかったw

左手にある待合室に通される。

3人座れば満杯の狭い部屋だ。

メニュー表には、60分と90分のコースがあった。

この店には初めて来たので、馴染みの嬢はいない。

ママからコースの詳細を聞いてから、60分で様子見とした。

奧へ引っ込んだママが、嬢との段取りを終えると戻って来た。

「それでは、御案内します。」

中はパーティションで仕切られ天井が開いた部屋が、4~5個。

一番中央の部屋に通されると、中で20代後半とおぼしきアガシがスタンバイしていた。

「〇〇ちゃんです、どうぞごゆっくり。」

部屋は、少し広めに取っていた。

穴開きベッドが置いてあり、茶色で統一された枕カバーとタオル。

行燈の横のサイドテーブルには、小さなキャンドルの灯が揺れていた。


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