母親学級で覚えていること 1 | 更新は全然頑張らない備忘録@フランス語圏スイス

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自分が後で振り返って「あ~、あの時はこうだったんだ」と思い出すための備忘録のようなもの。
海外生活、持病(婦人科疾患やアレルギー)、高齢出産、育児、子供の受験などのつれづれ。

現在妊娠中の方、特に初産の方、母親学級はお早めに。

私が初めて母親学級に行ったのは、17年前の今頃でした。
とにかく仕事優先の不真面目な妊婦でした。長男の出産は実家近くの総合病院と早い時期から決めていましたが、定期健診はずっと職場の近くのかかりつけクリニック(出産は扱わない)で済ませていました。
母親学級に初めて行ったのは、産前休暇になってから。つまり9ヶ月目になってからでした。

母親学級では妊娠初期からの食事の指導や、妊娠中の過ごし方など、大事な情報を得られましたが、9か月目になってからではちょっと遅すぎました(反省)。

それでも、おじいちゃん先生(院長)のお話で鮮明に覚えていることが幾つかあります。

先生のお話の要旨
9割以上の人は、実は医療の助け無しで自宅でも出産できる。
ただし、それは無事に出産が終わってみてからはじめて分かることで、事前には分からない。
しかしいったんトラブルが起きた場合は、赤ちゃんと母体の命を救うための処置は一分一秒を争う。このため、産婦を専門の人員と設備の揃った施設に集めて出産するようになった。
その結果、日本の出産時の産婦と赤ちゃんの死亡率は劇的に下がった。

↑ いろいろな意味で、びっくりしました。本当に、何も知らないままで臨月を迎えようとしてた怠け者の妊婦だったと、恥ずかしいです。

出産が終わってみてというのは、「赤ちゃんが出てきて終わり」ではなくて、後産と呼ばれる胎盤娩出はもちろん、子宮収縮や悪露の経過なども含めて、「産婦が無事に回復してみて」という意味です。
(出産後何時間もたってから子宮が破裂していることが判明する場合もあります)

子宮の手術の既往症、あるいは母体が経膣分娩に適さないもともとの疾患を抱えているなどの場合や、健診で前置胎盤のような、経膣分娩では100%助からない疾患が見つかった妊婦さんの場合は、最初からその人は「9割の、医療の助け無しで分娩できる人」にはならないと分かっているので予定帝王切開となります。

けれども、特別な異常が無いように見える妊婦さんのうちの誰に出産時に突発的なトラブルが起こり、誰には異常は起きないかは、事前には知ることができません。

実際、5人も産んだ私の幼馴染は、4人目の出産の時に、「もしかしたら死んでいたかも?」という事態になったそうです。妊娠中の経過は順調、お産も、赤ちゃんが生まれるまでは特別なトラブルもなく、順調だったそうです。ところが、胎盤がなかなか剥がません。仕方なくお医者さんが手で剥がしたところ大出血が起きたそうです。
(胎盤を子宮内に残したままだと子宮が収縮できない=出血が止まらないので、胎盤を放置はできません。胎盤を剥がすか、胎盤を子宮に付けたまま、子宮を取ってしまうか、どちらかになります)
幸い、止血に成功し、その後、5人目も無事に産んで元気に子供たちを育てている彼女ですが、4人目を産んだのがもし病院でなかったら、おそらく助からなかったでしょう。

コウノドリ(テレビドラマ)第6話でも、なんの予兆も予防方法も無く、発生確率は何万人に1人、ただし、いったん発生したら母体死亡率は80%と言われる難病「羊水塞栓症」のケースが紹介されました。

現在の高度に発達した医療が全力を尽くしても力が及ばないことは、確かにあります。
けれども、現代日本の妊産婦死亡率は世界でももっとも低いグループで、10万分の4~5くらい。
江戸時代(自宅で専門家の介助無し、経膣分娩のみ。介助は良くてもお産婆さん=助産師だけ)は10万分の400だったそうですから、現代の医療は素晴らしいと思います。

かつてはあった、無事に出産を終えたように見えても「産後の肥立ちが悪くて」母親が亡くなるという話は、現代ではまず耳にすることはありません。

また、洋の東西を問わず、時代もののドラマなどでときどきありますね。

「母親か、赤ちゃんかどちらか片方しか助けられない」

具体的にどんな場合?と考えてみました。

前置胎盤や常位胎盤早期剥離とは思えません。経膣分娩なら100%、母子ともに助からないはずだからです。どんな優秀なお産婆さんでもどうにもなりません。母親は大量出血に加えて血栓症に襲われ、胎児は長時間の酸欠にさらされてしまうからです。

そうだとすると、考えられるのは、「赤ちゃんの頭が大きすぎるなどの理由で産道を通り抜けられず、途中でつっかえている場合」です。
小鳥が「卵詰まり」で死んでしまうように、そのままではどちらも助かりません。

現代なら帝王切開で2人とも助けることができます。
けれども、外科手術がまだできなかった時代なら?
どうやって「詰まり」を解消していたの?

その時代、一度切ったら元には戻せないけれど・・・
「外側」を切り開いて道を広げて「中に詰まっているもの」は傷つけずに外に出すか、
「中に詰まっているもの」を小さく切って、「外側」を傷つけずに外に出すか。

それくらいしか思いつきません。

確かに9割以上の人は、医療の助けなしで自宅で分娩することが可能、なのでしょうけれど・・・。
1割弱の人は、程度の差はあれ、医療の助けが必要になる、という意味でもあります。

妊婦がどんなに健康で丈夫な人であっても、妊娠の経過がどんなに順調であっても、いざ実際に出産の時を迎えたら医療の助けが必要になる可能性が、最低10%近くある。

無視するには高すぎる確率だと私は思います。