縦糸と横糸

ずっとワーカホリックだった。
仕事以外でも、写真やバンドや、詩や、イベントや
何かを創り出すこと、外に向かうことに
強い衝動があって

そんな風に過ごしてきた。
それは、縦糸のエネルギー。
先へ先へと伸びる縦糸。

でも、縦糸だけを、いかに色とりどりの糸を並べても
風が吹けばバラバラとなびく、
あわてて梳いてやらないと整わない、
まとう体は温まらない、
不安定なもの。

家の中の暮らしを紡ぐことは
横糸のエネルギー。

ばらけてしまう縦糸のあいだを網目状になみなみに織り成す時間があると
縦糸は縦糸を並べただけの弱いものでなく
織物として、しなやかで美しさも手触りも、温かさももった存在になる。
横糸が大事。
そう思って、横糸に集中しようとすると・・・
横糸だけぐるぐると体に巻きつけてまとおうとすれば
焼き豚にタコ糸を巻くように自分を縛る窮屈なものになる。
その窮屈さから逃れるように、また縦糸を先へと伸ばしていたんだな。

日々、順番に交互に縦横縦横、からり、とん。
糸を伸ばす先じゃなくて
糸を織り成した布をまとう自分自身を
同じ布にくるまる家族を
確かなものとして感じる感覚。

だしをとって、青菜と揚げのにゅうめんを作って
娘たちと食べ、夕方から仕事に出かけた日。

「洗濯物があと5分で終わるから、ふたりで干してね。
おいとかないで30分以内くらいには干してね、しわになるから。
おなかすいたら、何か作って食べなさいね。
○○や○○が冷蔵庫にあるからね。」

娘たちに出先からメールをしたが返事はない。

夜10時頃帰宅したら
夫I氏が意外と早くに帰ったので夕飯も作ってくれたらしい。
味噌汁と、ごはんと、冷凍庫の鯖の文化干しを焼いて、もやしのナムルと、
かぼちゃとブロッコリーを耐熱皿で焼いて、大根の味噌汁。

洗濯物は干してあった。

味噌がなくなったよと夫I氏。

翌朝、残った味噌汁（うまい）と、納豆松前漬けごはんを食べながら

ああ、これこれ、これだ、としみじみ思った。

縦糸と横糸を分担せずに
全員が縦横の織り手になる暮らし。

これがほしかったんだ。

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