梨木香歩著「からくりからくさ」
先日映画「西の魔女が死んだ」を観た、というツイートが盛り上がって
原作者に興味が湧いたところで
たまたま本を持っていた方から貸していただき
普段借りた本も買った本もなかなか読めずにいるところが
珍しく発熱などしたもので
日曜にベッドで一気に読了。
ああ、小説は楽しいな。
本を読んでも実用書が多かったので
文学世界にどっぷりは久しぶり。
「からくりからくさ」
は染色家を目指す管理人、機織り大学生、進級大学生の外国人の
「何物でもない」若い4人の女性(とふしぎな人形1体)の共同生活を中心にした物語。
好みとしては
人物描写や食べ物描写がもっと子細だったら・・・
と思う。
この世界観を自分のものにするには
感情がもっていかれないのだ。
登場人物が多いからなおさら?
だれがどんな髪型でどんな服装で
という視覚情報の記述がもっとあったらいいのかな。
いや、あったけど私が受け取りきれてないのかも。。。
読み進みながら
登場人物の誰も、顔も姿も浮かんでこなかった。
せっかくのアートの部分も
(テーブルクロス上の花
博物館の面
キリムの柄
ラストの合作
そうだ、りかさんの美しささえも)
もうひとつありありと胸に描くことができなかったのが残念。
それでもこの小説の大きな功績は
「人は変わらずにはいられないのだ」
と言いきっているところだと思う。
一見、それが醜く気色悪く嫌悪を持たれる対象であろうと
別の角度から観れば美しい。
さらにその変容の瞬間に立ち会えばなおさら
一度嫌悪したことを打ち消して
美しさに胸打たれるものであると描いている。
孤独と個性と受容も重要なテーマになっている。
それぞれが抱える孤独。
それぞれが持つ、変え難い個性。
そのどちらをも受容できるのだという希望。
変わること
生きること
生き切ること
それを伝えること
その運命づけられた軌跡を描いているので
あらためて
自分の個性や
生き切ることや
変容を止めていないだろうかとか
周りの人の軌跡・個性を受容できてるだろうかとか
今後の新たなものさしになってくれそうな本でした。
変わらずには、いられないんだよ。
自分だけは変わらずにいたいなら、それもまた、変わることを余儀なくされる。
だって時代は変わり、
社会では事件が起こり、
人体は年老いていくのだから。
誰も変わらずにはいられない。
そして愛も憎しみも同じものだと。
ここで象徴的に出てくるのはドラゴン。
地を這うヘビは、やがて天地を自由に移動する飛べる龍となるのだと。
天と地を結ぶ。
自由に行き来する。
私には、陰陽のシンボルが浮かぶ。
陰極まれば陽となり
陽極まれば陰となり
その中央に対極を抱く陰陽図。
マクロビオティックでは中庸を目指すのかもしれないけど
私は自由に行き来していたい。
龍のように
山繭蛾のように。