いやー……
寝てると思ってたんだよ。
遠目に布団が盛り上がってたから。
でも、食事をしていたら
足をベロベロ舐める輩がいて
慌てて下を見たら
何故かテーブルの下から
上半身裸の赤子が
満面の笑みで鎮座していた。
いやいやいや、風邪引くって!
慌てて猫の持ち方で
和室にダッシュ。
どうやら、
丸めた毛布に布団が被せられ
そこに脱いだ(と言うより脱げた)服が
いかにも其処に
赤子氏がいるかの様に
工作されていた。
か……
変わり身の術じゃねぇか!!
私が高校生の時に
点呼対策でやったのと一緒……
まぁ私の時は
ドラムバッグと
ユーラシアトランクで
やったけどな。
髪の毛は黒いタオルを
枕元にそれっぽく置いて。
私が脱走して
徘徊しているのを
知らなかった
同室の友達とか
私がベッドにいると思って
ずっと話し掛けてて
「寝ちゃった?」
って見て、そこでやっと
気付いたくらいの
クオリティだった。
まぁ彼女は
明け方に徘徊から帰って来て
窓から入って来た私に
再び脅かされた訳だが……。
うん、私に友達が少ない理由、
すこぶる納得。
まぁでも、
それを赤子氏にされると
「もーー何なの!?」
って当時の同室の友達と
同じ様な反応しちゃった。
長女も驚いたらしく、
「服着せてあげないと!」
「あのね、赤ちゃん!勝手にどっか行ったらみんな心配するでしょ?」
とか何とかアワ食って説教してたが
当の赤子氏は
長女に服を着せられながら
相変わらず、お得意の
「ヒェッヒェッヒェッ」
と引き笑いをしていた。
赤子氏がテーブルの下に
来る理由は只一つ。
飯、である。
ミルクでも離乳食でも無くして
我々が食べている
炊き込みご飯を
虎視眈々と狙っているのだ。
もう何かね、
マサルさんに出てくる
メソみたいなキュピーンぶり。
ヨダレもリッターでダクダクだし。
このヨダレ女子が。
そんな事を思っていたら
赤子氏はクッションが
堆積している
ダートセクションに
乗り上げ、抜け切れずに
ミルク切れを迎える。
で、ミルクあげてるんだけど
やっぱり寝っ転がってる
私の脇を尻をフリフリ、
ンバンバダクダク言いながら
またテーブルへと旅立って行った。
こうして子供は親から離れ
自立の道を……
短い間だったけど
楽しかったぜ、赤子氏。
そんな事を思っていると
テーブル手前のソファーで
ミルク切れらしい。
だからちゃんと飲めっつーんだよ、
全くもう。面倒臭ぇ。
すると長女次女が
私の横を哺乳瓶片手に
駆け抜け、赤子氏に
燃料補給。
ピットクルーの方から
走って来てくれるなんて
赤子氏はいいね。
「ミルク空になりました!」
「赤子氏、まだ欲しいって?」
「あっ、赤ちゃん!!そっち行っちゃダメですよ!!」
「ヒェッヒェッヒェッ」
「うわー赤ちゃんってばぁあぁ!」
「ヒェッヒェッヒェッヒェッ」
……どうなる。
どうする、長女次女。
すぐ横で見ていたら、
2人は赤子氏を持ち上げるのは
危険だと判断したらしく
赤ちゃんの布団を持って行き
その上に乗せて
2人で布団ごと引きずって来た。
………ほぅ。
「ママしゃん!赤ちゃん連れて来ましたぁ!!」
起き上がりたくない
私の代わりにご苦労様。
赤ちゃんも満面の笑みで何より。
……相変わらず、引き笑いだけど。