「花はどこへ行った」などのフォークソングや「セサミストリート」への出演でで有名な歌手ピート・シーガーは、本年1月27日にニューヨーク市の病院で94歳の生涯を閉じた。彼については大きな思い出がある。
アメリカに在住していた頃、当時の大統領がテレビで重要な演説をするというニュースが入った。見ているとブッシュが話し始めて、"No one likes war."なんて言い始めた。そんなことないだろう(戦争が好きな人だっているはずだ。あんたがそうだろう)と思っていると、イラクを攻撃するという。あきれると共に激しい怒りがこみ上げてきた。でも当時、良識があると思われていた人たちも結構賛成した。戦争には魔力がある感じがする。アメリカには軍事産業もたくさんあるし、テレビ局も戦争になれば視聴率が上がる。
実は私はこの瞬間までは、アメリカという国が大好きだったのだ。だから随分長い間この国に住んでいた。英語ができないと変な顔をされる面はあったが、自国民と分け隔てなく扱ってくれる。大統領の選挙にはもう行ったのかとか、聞かれたこともあった(選挙権なんてないのに)。過去の因習にとらわれずに新しい事をやる、新しい概念が次々出てくる。優秀な学生が全世界から集まる。日本ではできないことがたくさんできた気がする。
この国の一番の欠点は、他国との戦争だ。とても戦争好きに思える。60年代に月に人を送った華々しい宇宙プロジェクトは、ベトナム戦争による資金難で頓挫してしまった。その後もリビア爆撃、パナマ侵攻、アフガニスタン派兵と続いたが、これらは結果的には成功だった(ソマリア出兵以外は)。そうすると過去の苦い経験も忘れてしまうのだろう。愚鈍な指導者を持つと、大国ほど危ない。
アメリカのフォークソングは大好きだ。昔よく「セサミ・ストリート」に出演していたピート・シーガーの名曲に "Waist Deep in the Big Muddy" (腰まで泥まみれ)がある。日本でも中川五郎の訳で高石ともやや海援隊などが歌っていた。ピート・シーガーがその昔、ルイジアナの連隊で演習をしていた時の経験を歌にしたものである。
それは大雨の後の月夜の事で、湿地帯には大きな水の流れが幾筋もできていた。現在地から移動して、本隊へ合流する道は二つ、これらの流れを突っ切っていくか、あるいは迂回していくかだ。隊長はとても勇猛果敢で第一の道を選択した。彼は叫ぶ。「進め!」
シーガーの歌詞には日本語では表現することが難しい微妙な事情がよく書き込まれている。無理に流れを突っ切るのはいいが、もし足が底に付かなくなれば兵隊達は死に直面する。重装備のため泳ぐことができないからである。しかも軍隊であるから、兵隊は隊長の命令には逆らうことができない。兵隊らは今や腰まで泥まみれだ。そして今や流れを突っ切ろうとする。勇敢な隊長は叫ぶ。「進め!」
月明かりが消え、突然、隊長のヘルメットが水面に浮かんだ。軍曹が叫ぶ。「引き返せ!」 軍隊では隊長に何かあったときには即座にその次の地位にある者に指揮権が移るのだ。そして軍曹の緊急のそして的確な判断により、シーガーらは難を逃れた。
兵隊達は重装備を解き、川に飛び込んで隊長の死体を引き上げた。そして流れの深さを知る。隊長は渉れると判断したのだが、大雨で増水した流れは実は前よりももっと深くなっていたのである。的確な判断のためには、まさに今の状況を知ることが大事だ。隊長の的確な判断が戦場では部下の生死を分ける。そしてそれはただの演習においても同じ事である。
ブッシュのイラク攻撃開始において、すぐにこの歌を思い出した。アメリカをよく思う人も悪く思う人もいるだろう。でも指導者の判断一つで国の性格も国民の運命も変わる。大学進学の資金を稼ぐため軍隊に入り、そして帰らぬ運命になった人たちも多い。とっさの判断において、現在の状況を正しく把握しておくことが必要だが、往々にして水かさが増えていることは気づかないものだ。
日本も今、同じ状況にあるだろう。われわれはこれまでの状況をよく知った上で、これからどうするかを判断していかねばならない。バブル期の頃の様に政府や企業のリーダーが、自己の利益だけを考えて金儲けだけに突っ走ったら、悲劇が待っているだけだ。この狭い日本に50いくつもの原発を作ってムラのメンバーに莫大な利益をもたらしても国が滅亡しなかったのは、バブル期まで経済が発展していたからである。
現在の我々は深い流れの前に立っている。危機を回避するために重要なのは、我々自身が正しい判断により、今の状況をよく把握できるリーダーを選ぶことである。未曾有の大震災への対応に失望した国民は強力なリーダーを欲する。そして強力なな指導者は強い国造りを目指して「進め!」という。しかし我々は既に腰まで泥まみれだ。やがてすぐに首まで泥まみれ。そしてその後には滅亡が待っているだけかもしれない。
--> Pete Seeger -Waist Deep in the Big Muddy-
http://www.youtube.com/watch?v=uXnJVkEX8O4
アメリカに在住していた頃、当時の大統領がテレビで重要な演説をするというニュースが入った。見ているとブッシュが話し始めて、"No one likes war."なんて言い始めた。そんなことないだろう(戦争が好きな人だっているはずだ。あんたがそうだろう)と思っていると、イラクを攻撃するという。あきれると共に激しい怒りがこみ上げてきた。でも当時、良識があると思われていた人たちも結構賛成した。戦争には魔力がある感じがする。アメリカには軍事産業もたくさんあるし、テレビ局も戦争になれば視聴率が上がる。
実は私はこの瞬間までは、アメリカという国が大好きだったのだ。だから随分長い間この国に住んでいた。英語ができないと変な顔をされる面はあったが、自国民と分け隔てなく扱ってくれる。大統領の選挙にはもう行ったのかとか、聞かれたこともあった(選挙権なんてないのに)。過去の因習にとらわれずに新しい事をやる、新しい概念が次々出てくる。優秀な学生が全世界から集まる。日本ではできないことがたくさんできた気がする。
この国の一番の欠点は、他国との戦争だ。とても戦争好きに思える。60年代に月に人を送った華々しい宇宙プロジェクトは、ベトナム戦争による資金難で頓挫してしまった。その後もリビア爆撃、パナマ侵攻、アフガニスタン派兵と続いたが、これらは結果的には成功だった(ソマリア出兵以外は)。そうすると過去の苦い経験も忘れてしまうのだろう。愚鈍な指導者を持つと、大国ほど危ない。
アメリカのフォークソングは大好きだ。昔よく「セサミ・ストリート」に出演していたピート・シーガーの名曲に "Waist Deep in the Big Muddy" (腰まで泥まみれ)がある。日本でも中川五郎の訳で高石ともやや海援隊などが歌っていた。ピート・シーガーがその昔、ルイジアナの連隊で演習をしていた時の経験を歌にしたものである。
それは大雨の後の月夜の事で、湿地帯には大きな水の流れが幾筋もできていた。現在地から移動して、本隊へ合流する道は二つ、これらの流れを突っ切っていくか、あるいは迂回していくかだ。隊長はとても勇猛果敢で第一の道を選択した。彼は叫ぶ。「進め!」
シーガーの歌詞には日本語では表現することが難しい微妙な事情がよく書き込まれている。無理に流れを突っ切るのはいいが、もし足が底に付かなくなれば兵隊達は死に直面する。重装備のため泳ぐことができないからである。しかも軍隊であるから、兵隊は隊長の命令には逆らうことができない。兵隊らは今や腰まで泥まみれだ。そして今や流れを突っ切ろうとする。勇敢な隊長は叫ぶ。「進め!」
月明かりが消え、突然、隊長のヘルメットが水面に浮かんだ。軍曹が叫ぶ。「引き返せ!」 軍隊では隊長に何かあったときには即座にその次の地位にある者に指揮権が移るのだ。そして軍曹の緊急のそして的確な判断により、シーガーらは難を逃れた。
兵隊達は重装備を解き、川に飛び込んで隊長の死体を引き上げた。そして流れの深さを知る。隊長は渉れると判断したのだが、大雨で増水した流れは実は前よりももっと深くなっていたのである。的確な判断のためには、まさに今の状況を知ることが大事だ。隊長の的確な判断が戦場では部下の生死を分ける。そしてそれはただの演習においても同じ事である。
ブッシュのイラク攻撃開始において、すぐにこの歌を思い出した。アメリカをよく思う人も悪く思う人もいるだろう。でも指導者の判断一つで国の性格も国民の運命も変わる。大学進学の資金を稼ぐため軍隊に入り、そして帰らぬ運命になった人たちも多い。とっさの判断において、現在の状況を正しく把握しておくことが必要だが、往々にして水かさが増えていることは気づかないものだ。
日本も今、同じ状況にあるだろう。われわれはこれまでの状況をよく知った上で、これからどうするかを判断していかねばならない。バブル期の頃の様に政府や企業のリーダーが、自己の利益だけを考えて金儲けだけに突っ走ったら、悲劇が待っているだけだ。この狭い日本に50いくつもの原発を作ってムラのメンバーに莫大な利益をもたらしても国が滅亡しなかったのは、バブル期まで経済が発展していたからである。
現在の我々は深い流れの前に立っている。危機を回避するために重要なのは、我々自身が正しい判断により、今の状況をよく把握できるリーダーを選ぶことである。未曾有の大震災への対応に失望した国民は強力なリーダーを欲する。そして強力なな指導者は強い国造りを目指して「進め!」という。しかし我々は既に腰まで泥まみれだ。やがてすぐに首まで泥まみれ。そしてその後には滅亡が待っているだけかもしれない。
--> Pete Seeger -Waist Deep in the Big Muddy-
http://www.youtube.com/watch?v=uXnJVkEX8O4