かすかに遠くから聞こえるピアノの音が浅い眠りのなかに耳に心地いい。
どこかに切なさが混じるこのメロディに促されるように目を覚ました。

ゆっくり起き上がると眠る前に苦痛だった頭痛は治まったみたい。
そっとベットから降りて寝室を出てるとリビングとは反対側の部屋から聞こえてくる。

あれ?リビングのピアノじゃないんだ。こっちの部屋かな?

薄く開いた扉から邪魔をしないように部屋のなかを見るとたくさんの機材。それに囲まれた中から聞こえるヘッドフォンをした彼が弾く切ないメロディと彼の小さいハミング。

何て切ないんだろう、泣いてるみたい…

「あ、起こしちゃった?」

曲を弾き終えて顔を上げた彼と目が合った。

「おいでよ」

と言って私を自分が座って弾いていた椅子に座らせる。

「さっきの曲聞いてくれた?
まだ作ってる途中なんだけどどうだった?」

歌っていた時とは違い人懐っこい笑顔できいてくる。
勘違いだったのかな…?

彼が私にペンを渡す

(とても素敵でした。切なげで泣いてるように見えて、

「あっは!本当?じゃあ俺の思いは伝わってるってことだね!ふふっ」

と嬉しそうに笑った。

遊ぶようにピアノを弾きながら今作ったと言う歌を楽しそうに歌う彼をみて私も笑った。

「もうそろそろ朝だね。
まだ雪降ってるから結構積もりそう。

俺、雪が降ってる夜って好きなんだ…。
耳が痛くなるほど静かで孤独に感じるけど何となく空は明るくて…」

そう言った彼は歌っていた時のようにやっぱりどこか淋しそうで、あの笑顔の影にあるものを感じずにはいられなかった。

「あ、そうだ。
呼ぶ時にねぇとかちょっとばっかりじゃ淋しいからさ名前考えようよ。
うーん………………
ゆきとかどう?ね?ふふっ いい?」

名前…か……思い出せないし、コクンと頷いた。

「やったー!じゃあゆきって呼ぶね!俺のことはジェジュンって呼んでね!あ、そか…ね!口でしてみて?声でなくてもいいからジェジュンって」

戸惑う私に「ほらしてみて?」って催促する笑顔。


《ジェ……ジュ……ン》


「あっは!!うれしいーーーゆき!!
ゆきってどんな声してるんだろう。すごく聞きたい!
きっと少しずつ良くなるから、そうしたら聞かせてねゆきの声」

そう言ってまたピアノに向かったジェジュンは楽しそうに歌い出した。

───私の声……

何も思い出せない不安感とここにいると感じる安心感が入り混じる不思議な感じがした。