ダリア -㊤- | ひとつ前のかどはさよならサヨナラ
洗濯機、ある…?

携帯に出た瞬間、唐突にそう言われた


とっさの事で
その女友達の言葉が何を意味しているのか判らなかった


あるけど、何…?

僕は聞き返す

貸してよ

笑いながら、どうしたんだよ急に
と言いかけた所で思い出した

彼女が今、家を出ていることを…。


僕は地上げを主に活動している事務所で
世話になってる時で
頭はパンチパーマー、絶望的なセンスの服装でいた

僕を見て彼女は

もっと、どうにかならないの

なんてよく笑われた

彼女は当時、メイクアップアーティストの卵だった


彼女は
その日の午後にやって来た
見覚えのある鞄をパンパンに膨らまして担いで来た

バッグの洗濯物を
洗濯機に放り込んでいる後ろ姿を見て
痩せたな…って思った


ちゃんと食べてるのか?

熱い紅茶に
ミルクと砂糖を用意しながら訊くと

彼女は面倒そうに首を傾けた
それは
肯定でも否定でもなかった


黒いバックがまた視界に入る

いつも
綺麗に魅せるためのありとあらゆる道具を詰め込んでいたバックが
今日は洗濯物かと直視出来なかった


仕事なんか、やってらんないわよ

そう言われてしまっては僕はもう何も言えず
ただ、
楽しかった思い出を
頭に浮かべていた

彼女が家を飛び出したのは
一緒に住んでいた男に他に女がいるのがわかったからだった


とりあえず
落ち着くために部屋を借りたけど
ひどい気持ちで部屋を転がり出てきた彼女に余裕なんてひとかけらもあるわけはなく
その部屋には
洗濯機はなかった


やんなっちゃったんだ
急に…


彼女はぼんやりとりあえずしゃべり始めた


え…?


僕は慌てて思考を【今】に引き戻し
彼女の表情を見る


遠いわけよ、これがまたさ


何の事かわからず
僕は素直に聞き返す

何がさ…?。


コインランドリー。

紅茶にたっぷり砂糖を入れながら
彼女は答える


あぁ…
僕のカップの紅茶は僕の心と声を表すように
不安定に揺れる


別に人に自慢出来るような人生は送ってないけどさ
誰が使ったか判ンない様な洗濯機に自分の下着放り込んでたらさ

なんていうか
あぁ…あたし何やってんだろって気になってきちゃって





僕は黙って聞いているしかなった


彼女は続ける

そしたら急に
すごーくやんなっちゃって
入れたばかりの洗濯物全部バックに戻して
コインランドリー出ちゃった…


うん…

僕は相変わらず、揺れる紅茶を
口にした


続く→