沖縄
大東島に行った時の事
1月から3月にかけて回遊して来るザトウクジラの群れを、
この島では運が良ければ岸辺から見えるって聞いたんだ
何十年か【人間】として生きてきて
死んだほうがましだな
凶暴な恐竜が胸の中で暴れるように
そう考えた時期でもあった
ぐるりと崖に囲まれた島には砂浜がないから
人工的に作られた海水プールが多く見える
パッと見には
岩場をくり抜いただけで、自然の岩棚にしか見えない
ガイドブックにも
高波や満潮時には充分な注意を!
なんて書かれてあった
ハハハハ…
これはなんちゅーか
死に放題だな
プールを見た途端、僕はなんだかとてつもなく可笑しくなってしまい
そんな事を呟いたよ
これほどまでに剥き出しの自然にたいして
柵や注意書きの看板も見えない
個人の危険は個人が管理すればいい
ウチの子供がケガしたのはあそこに柵がなかったからだ
なんて裁判を起こす人はきっとここには来ない
魂を抜かれたみたいに
しばらくの間
岩に打ちつける波を見つめていた
真っ青な水は岩に砕けて泡となり
ブルーハワイにそっくりな色になって再び
海に戻っていく
人間の歴史は
何との闘いの歴史だったんだろう
ふと頭によぎった
死なのか自然なのか
自分達が作り出した文明なのか
恐竜がいた時代
恐竜は何に負け消滅したのか
闘う姿をみた時
よく闘った
と、僕は感じるのか
自然と呼ぶのか
神と呼ぶのか
幻と呼ぶのかわからないけど
おいそれと人間が【闘える】ような相手ではないなって思っちゃった
巨きな巨きな手のひらの上で
何をしてるのかな、なんて感じる
泊まった宿で話を聞いた事を思い出す
この豊潤な自然がこの島にあるのも
本島や慶良間諸島をズタズタにした太平洋戦争での被害が
この島では少なかったんでしょうね
と僕が言った時
宿屋の店主は笑いながら答えてくれた
島がちっちゃいからさー、米軍も気にしなかったんさー
僕は僕の中で
自然の巨大さの矛盾にまたとてつもなく
可笑しくなって膨れ上がり
相変わらずしゃがみこんで波を見続けたまま
馬鹿みたいに笑ってしまったよ
恐竜のような
鯨には結局あえなかったけどね
神は死んだ
と、ニーチェは歌い
ロックは死んだ
と、ジョニーロットンは叫び
僕は死にたいなと呟いた
寝言は寝てから言えだよね(笑)
文明ってなにかね
果たしてカミサマはハイテク兵器で殺せたのかな
もう恐竜はいない
山下達郎 - アトムの子