音楽を信じつづけ
ピアノを信じつづけて
そいつは
海外に出た
別れの前に
そいつが長く続けたバーテンのバイト先で
平日だったけど
みんなが集まったんだ
カウンターに
オレオの山が出来た
そいつの大好物だったから
カウンターの中で
そいつは
あ~…おれ、
ここでまだ働き続けたくなっちゃうよ
って言いながら
そのオレオの山を見て笑った
【したい事】
と
【しなければいけないこと】
が、
全面的に一致する人間なんていないなぁと
それを眺めながら感じる僕がいた
0時ぴったり
そいつはカウンターから降りた
店の後輩従業員や僕ら友人・客達から
花束を渡した
えーー
そいつは花束を嬉しそうに受け取って胸に抱くと
手のひらで
顔を覆い隠した
泣いていた
ダメなんだよ
俺こういうの弱いんだ…
照れ隠しみたいに言うと、抱き慣れない赤ん坊を抱く時のような感じで
花束を抱えながら
カウンターに山積みされたオレオを口につめていた
自分のしたい事の代償として
何かしらカバー出来る部分より
あきらめなければならない部分の方が
年々大きくなっていってしまう
自分の周囲にあるモノなりヒトなりに
ある程度自分のフォーカスを合わせる
それが【生活】なんだと、僕は思ったんだ
そいつに別れを告げて
僕は深夜の大通りに出た
遠くから近づく光に気がつき
手をあげタクシーを止める
タクシーは、道端の何度も車輪に踏みつぶされたせいで
ペチャンコ
になった空き缶の上にタイヤを軋ませた
僕はその瞬間、もの凄く不思議な気持ちを覚えたんだ
手をあげただけなのに
どうしてタクシーは停まってくれるんだろぅ…
僕はそんな当然の事を
車窓の向こうを速いスピードで流れ去って行く
街灯の残骸を見つめながら
飽く事なく考えていた
おかしな事に
僕はその時点ですでに
防犯用のプラスティックの板の向こうで
丸まった背中を見せている運転手に
感謝の気持ちを抱いていた
感謝の気持ちは
どんどん膨れ上がり
僕はバーテンの友達の【姿】を思い出し
涙ぐみそうにさえなった
乗った時から降りた時まで
運転手はずっと無言だったんだけどね
綾香×コブクロ - WINDING ROAD