”ももへ”とだけ書かれた手紙を遺し、
お父さんは天国に旅立ってしまった。

「ほんとうはなんて書きたかったの?」

心ない言葉をぶつけ、仲直りしないまま父を亡くしたももは、
その想いを抱えたまま、母いく子と瀬戸内の島に移り住む。
慣れない生活に戸惑うももだったが、
不思議な妖怪”見守り組”のイワ、カワ、マメと出会う。
食いしん坊でわがまま、でも愛嬌たっぷりの彼らには、
実は大切な使命があった・・・・・・。

もものために明るく振舞いながら忙しくする母いく子。
そんな中、ちょっとのすれ違いからももといく子はケンカをしてしまい、
さらにいく子は病に倒れてしまう。

母が自分の為に無理をしていたこと、母の想いに気づいたももは、
”大切な想いを伝える”奇跡を起こしていく――。


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まぁ前評判どおり、ジブリを思わせる今作であったのだけれど。

なんとなくジブリを連想させつつ、
どことなく「サマーウォーズ」を思わせるアニメであっただけに
とりあえず目を通して置こうかと映画館に足を運んでみた。

総評としては、少し残念であったと言わざるを得ない。
残念というよりもテーマが良いだけに少々もったいなかったかな。

話の展開やテンポ、それに作画レベルの高さは秀逸で
スクリーンから伝わる瀬戸内の空気感は
なんとも形容しがたいものがあるだけに
今ひとつ各キャラの行動への動機付けの描写が甘いのは頂けない。

っとつらつら誹っても、どうしようもないのだけれど。


それはさておき、今作の最重要なテーマ「すれ違い」
人は日々を何気なくも誰かと「すれ違い」ながら生きている。

今作ヒロインである”もも”もまた、父との「すれ違い」にはじまり、
後半にかけての母との「すれ違い」に至るまで、
原因こそ些細なものかもしれないのだけれど
しかして言葉の少なさは、あっけなくも簡単に
人と人をすれ違わせてゆく。

そしてそんな「すれ違い」も、もう亡くなってしまった父には
今更想いを届けることも叶わず、
ただ父が最後に残したももへの手紙だけが
父との繋がりを再確認する唯一の術と。


今日会ったあの人は、もう明日には会えないのかもしれない。
それは寂しい事ではあるのだけれど、
人は絶えずして出会いと別れを繰り返し生きている。

これはもうどう抗ってみたところで不可避の絶対の理で、
顔を合わせる事が当たり前に成れば成るほどに
人は別れを失念する。

故に人は、意図も簡単に「すれ違う」

今この出会いは、全くの当たり前なんかじゃありえない。
それはとても特別なことであって大切なことであって
だからこそ、今を大事にしないといけないのであって。

父とすれ違うままに別離を経験した主人公ももは
それを糧とし成長し、今ならばまだ想いを伝えられる母との
心のすれ違いを埋めていく。


今貴方の大切な人に貴方の想いを伝えられていますか?


そんな想いを、亡き父と娘は手紙というかたちで伝え合う。
今作もうひとつのテーマ「手紙」

父が残した”ももへ”とだけ書かれた簡素な「手紙」。
それは確かにたった3文字であるのかもしれない。
けれど「文」は確かに誰かに何かを伝えたいという意思表示であり、
父はももを慮り、想いを込めて綴った3文字だからこそ
それはなんと豊かな想いが込められた3文字なのであろうか。

きっとね、言葉の多寡や文章の優り劣りなんて
ほんとはとても瑣末な問題なんだと思う。

寧ろ「文」なぞと言うものは、「文」そのものではなく
行間を読むものなんじゃないだろうか。


その時何を想い、何を感じ、何を伝えたかったのか。


そんな想いを込めながら、今でしか伝えられない言の葉を
「文」に認めたい。
そんな事を思わせる映画でした。


この映画のラスト、父から届く最後の「手紙」
これは是非映画館に足を運んで、読んでいただきたい。

そして「手紙」のもつ不思議な温かみを感じてもらいたい。
思い出かぁ。


彼女はとてもお姉さんだった。

美人であったとはお世辞にも言えないのだけれど、
長い髪に透けるような白い肌をした、
目を細めて含羞む姿がやけに頭から離れない、
そんな、そんな女性だった。

今にして思えば、女性に艶やかさを覚えたのは
彼女がはじめてだったんじゃないだろうか。

僕は彼女に恋をしていた。

それは憧れにも似た情感だったのやもしれないけれど
確かに僕は彼女に恋をしていた。

そんな彼女を前にすると僕の拙劣なオツムは
何時だって可哀想に真っ白で、
まるで言葉を忘れた阿呆のように為す術もなく、
只彼女の言葉だけが脳裏を木魂した。

僕はどうにか言の葉を紡ごうと、
彼や此れやと話柄を紙に書きとめ、
いつもそれをポッケに押し込んでいた。

それは結ばれる想いより遥かにたくさんの
世の中に満ち満ちる片想いの中の、
ほんのほんの一つではあったのだけれど。

ほどなく彼女はバイトの先輩と交際をはじめた。
そして僕はバイトを変えた。

それからも彼女は、まるで弟をでも案ずるかのように
何かにつけては僕のバイト先を訪れ、他愛もない話に月日を重ねた。
彼女の傍に居れるのならば、ずっとこのままでも構わなかったのだけれど
時は無常にも別離を告げる。

「元気でね」

そう告げに訪れた彼女は、ばっさりとその長い髪を切っていた。
髪を短くした彼女はどこか別人であるかのようで、
去り際に見せたその含羞みは、やはり彼女だった。

そうして彼女は大学を卒業し、田舎へと帰ってしまった。
僕は何十年たった今でも、その含羞みを忘れない。


思い出は綺麗過ぎていけないやね。
人は生まれもってさながら不幸な生き物かのように
往々にして愁いを求める。

まるで幸福なぞ泡沫の夢とばかりに
悲運に安堵し、不遇に心弛を覚える。

恰も思考停止に陥ったかの如く
闇雲に自らの幸せに降りかかる火の粉を探す事に狂奔し、
ひとつ難を見出すや否や、
鬼の首でもとったかのように、
それ見た事かと、己が不運にそっと心を撫で下ろす。

人は果たして不幸なる生き物なるや?
世界に唯一人しか居ない貴方という存在は
運命に存在な扱いを受ける程、其れ程までに卑小なるや?



貴方は貴方で在るが故に価値があって
貴方が貴方で在る事が切要なんだ。

だから貴方はこの世界にとって大事な大事な存在であって
そんな貴方が不幸であらねばならぬ道理なぞどこにもなくて
それ故に、貴方は幸せであってもいいんだ。


問題なんて探そうと思えば幾らでも見つかる。

問題点なんてものはね、

不遇を託つ為にあるんじゃなくて
不遇に備える為にあるんだよ。