「私は、Hさんときちんと向き合ってきたのかしら?」

いつも、彼と比較していた。

Hさんがどんな行動をしても、何を言っても、
私はHさんを通して別の人を見ていた。
別の人を想っていた。


最初は、まだ出会ったばかりだから
仕方がないのだと思っていた。
Hさんと彼との対応は世代間のギャップがあり、
その差に私が慣れていないせいだと思った。
私の気持ちが盛り上がってなくて
Hさんの気持ちの方が大きいから、
そう感じるのだと思っていた。

でも、いつからか、
Hさんの行動そのものを見ていない、
見ようともしていないことに気づいた。

「彼」というフィルターを通してしか、
Hさんを見れなくなっていた。
彼とここがほんの少し似てる。
こんなところが彼とは違う。
そんな風に、
「違い」と「ない」部分だけを抽出する
間違い探しの日々だった。

間違い探しというならば、
「彼」を基準にHさんを見て、
どうこういうこと、
間違い探しをしていること自体が
そもそもの間違いだった。

HさんはHさんなのに。

「比較してのHさん」ではなく、
「そのままのHさん」として見ること。
それが、次の私の目標となった。

先のことはわからない。

でも、Hさん自身を見てから
お付きあいを判断する。
付き合い続けるのか、別れるのか。

本人が、それで良いというのであれば、
あわてて結論を出す必要もないのかもしれない。

悩んだけれど、
私は、Hさんの申し出に甘えることにした。

Hさんの考えや要望を要約すると、


・私(=藍)に、すぐには忘れられない人がいることは

 最初から知っていた

・知った上で惹かれたし、それでも付き合いたいと思った

・付き合っていくうちに、自分(Hさん)の人となりなどを見て

 好きになってもらいたいなと思っていた

・何年かかってでも待つ気持ちはある

・こういったことを全て承知の上で付き合おうと告白したし、

 そのつもりで付き合ってきたので、

 時間がかかるからダメと言われるのは寝耳に水でびっくりしている

・嫌いでないのであれば、

 もう少し(好きにさせる努力を)続けさせて欲しい


正直、Hさんのこの捨身ともいえる告白にはぐらっときました。

不覚にも泣きそうになりました。


一途に好いてくれていることは知っていました。

Hさんに大切にされている自信、愛されている自信は

短い期間ながらも十分に与えてもらっていました。

言葉も行動も一貫していましたから。


でもまさか年単位の長期スパンで

考えているとは思いもしませんでした。

やはり、考えていることというのは、

きちんと言葉にしないと伝わらないものです。


「いつまで経っても振り向かないかもしれないんだよ?

散々待たせて『やっぱり無理でした。』

ってなるかもしれないのに、それでもいいの?」


「気は長い方だから。何年でも待つよ。」


「私の気持ちが変わるのなんて待ってたら、

おじいちゃんになっちゃうかもしれないよ?」


「今だったら、結婚して、家庭を持ってっていう幸せに

間に合うかもしれないのに。」


「それで、私が一向に振り向かなかった場合、

私は、Hさんの貴重な時間を返せないし、責任も取れない。」


「それでも、いい。嫌じゃないんだったら、一緒に居たい。」


「……だったら私が『もう無理!』ってギブアップするか、

根負けするか、Hさんが諦めるか。そのどれかまでってこと?」


「俺が諦めることはないよ。

なんたって何年でも思い続けられる自信があるから。

根負けかぁ。それもいいんじゃない?」


「根負け…本当にいいの?それで。」


「……藍はどうしたい?」


「え?!いや、今日は、Hさんの話を聞きにきたわけだし、

これだけ自分勝手でひどいことを言って、

まだ私から何かを望めるような立場ではないもの。」


「そっか。じゃあ言うね。『藍、もう一度付き合って欲しい。』」

Hさんの言い分(この言い方ちょっと嫌ですね…。考え?要望?)を

聞くに至った経緯は、以下の通りです。


1、私がSさんと別れた時、

  嫌いになったり愛想つかされたり、

  別の好きな人が出来たのでなければ

  最終的に別れるという選択をするにしても、

  まずは冷静になるために距離をおくとか、

  こうして欲しいという要望を伝え、その変化を待つとか

  改善する見込みがあるかどうかの

  猶予期間が欲しかったなと思ったこと。


 (気持ちがなくなったり、嫌われたりという場合は含みません。

 その場合、延長したところで「付き合っている」という

 名目を取っているだけで、 悲しいけれど実際の関係は

 破たんしているからと思うからです。)


2、「今後どうするかというのは、出来れば二人で決めたかった」

  という思いがあったこと。その後悔が大きいので、

  同じ気持ちをHさんに味あわせるのは良くないなと思ったこと。


3、紹介された友人に、

  「二人で話し合って出した結論だと思っていた。」

  と言われたことを考え、やはり、フェアじゃなかったかなと反省し、

  また紹介してくれた友人に対しての

  義理を立てる必要があると思ったため。

  (私勝手な行動のせいで、

  紹介してくれた友人が悪い印象になるのも嫌だし、

  友人の大切な友人をないがしろにしている

  というのも失礼だと思い直したため)


4、「Hさんと別れたけれど、ちょっと一方的だったかもしれない。」

  と、いうことをある人に相談したところ

  「相手は、もしかしたら藍からの連絡を待っているかもしれないよ。」

  という私個人では到底思いつきもしないアドバイスをもらったから。


5、「相手が告白してきて付き合ったというのなら

  温度差があって当たり前。  もっと長いスパンで考えてみたら?

  それとも相手が早急に結論を出してくれって言ったの?」 

  と、そもそも結論を出すまでの期間が短すぎるのではないか

  というアドバイスもありました。


以上のことから、

Hさんがわたしに伝えきれていなかった思いがあるなら、

それは真摯に受け止めようと思い、その日を設けました。