リガ&タリン旅行① | カラフルトレース

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明けない夜がないように、終わらぬ冬もないのです。春は、必ず来るのですから。

今わたしは、リガ旧市街の美しい宿にいて、贅沢にも二人部屋に用意されたソファに座ってこの記事を書いている。

 

 

そろそろヨーロッパへ、という話は去年から親友氏と幾度も重ねていた。

何を隠そう、わたしにとって人生初の海外旅行は(他の仲間も引き連れ)彼女の留学先を訪れた時であり、ヨーロッパ行きと親友氏の存在は切り離し難いものとなっている。

 

実は最初、行き先としてベルギーを予定していた。10月頃の話である。

それは互いの狭くて深い需要が奇跡の重なりを見せたからに他ならないが(親友氏とわたしは、気が合うのがかえって謎なレベルで趣味の細部が噛み合わない)、折悪くベルギーでテロが連発、さすがに方針転換を余儀なくされた。

 

親友氏が代替地の条件として「クリスマスマーケットが楽しめる」を掲げていたため、それを基準にヨーロッパ各地のクリスマスマーケット情報を漁り、相対的にきな臭さが薄いところ、そして二人とも興味を持てる場所、と絞り込んだところ、

 

選ばれたのは、ラトビアでした。

 

リガだけだとさすがに旅程として心許ないので、付随する行き先をエストニアかリトアニアかで迷った結果、クリスマスマーケットの評判、スケオタとしての感謝の念(※)などがエストニア行きの決定打となる。

 

※開催困難となった試合の代替開催地として、エストニアのタリンが三連続で頑張ってくれた事例があった。2021-22シーズンだったかしら。

ちなみに親友氏はスケートファンではないので、わたしが一人でめちゃくちゃ感謝している。

 

親友氏は仕事ができるしセンスがいいので、旅のしおりをわざわざ作ってくれた。しかもめちゃくちゃ可愛いデザイン。またウチの親の中で親友氏の株が上がってしまう。ありがたい友です、本当に。

 

ネイルまでちゃんとしている方が親友氏

 

海外は2019年のウラジオストク以来で、渡航の感覚が戻らないまま準備を進めていたところ、ユーロへの両替時より渡航直前の方が露骨な円高になって軽く落ち込み、海外旅行用の財布に紙幣が残ってる!と空喜びしたら1,000ルーブル札だった。置いてきた。

 

 

いざ渡航という夜、日本の塩が効いた出汁に味覚を染め上げられているわたしは、まず家を出る前に納豆巻きと塩焼きそばを食べた。

その後、空港で親友氏と集合、二人できつねうどんを食べた。

そしてあろうことか、出国後の機内食で提供されたのは、ごはん、パン、そして蕎麦だった。

 

蕎麦!?

 

半分くらいはわたしの責任とはいえ、怒涛の炭水化物を投入され、うまく眠れないまま乗り継ぎ先のヘルシンキ空港まで12時間以上ダラダラと座り続けていた。

 

ロシア上空を回避するため、戦争開始前より遠回りするんだろうな、というのは折り込み済みだったが、想像以上にきっちり回避していた。

成田を出て西へ向かうかと思えば、アラスカ方面を目指して北東に入り、ベーリング海峡を通ってから北極圏を横切り、北からヘルシンキに入っていく経路だった。

成田ヘルシンキ間、以前はもっと早かったのだらうか。

 

見てこの経路

 

今回利用したのはフィンランドの航空会社、フィンエアー。ムーミンやマリメッコなど、フィンランドの強みを前面に押し出してくれる。預け入れ荷物票はムーミンでした。かわいい。

 

丸っこくて可愛い!

 

海外の航空会社にしては遅延の幅も少なく、機体は清潔で乗り心地が良く、機内食も食べやすい味、ブルーベリージュースがおいしい、などなど、これはリピートありです。

 

トランジット先のヘルシンキ空港では、無料で横になれるソファーが空いていたので、着いてからしばらく怠惰に転がっていた。

若干物価が高めな気はするが、フィンランドらしい製品から普通のカフェ、免税店など、並ぶ店舗の幅は広い。サルミアッキのリキュールを買うか迷い、やめた。理性があるから。

ちなみに我々がヘルシンキ空港で口にしたものはミネラルウォーターとバナナだった。切実に、切実に瑞々しさとビタミンを求めていたのだ。

 

アイボみたいな自我がありそうなニョロニョロ

 

ちなみに2023年12月現在、日本と韓国のパスポートはEUエリアに入る時の審査がかなり楽でした。パスポートを機械にかざして顔見せるだけで通れたので(なお眼鏡のせいでやり直しになった)。

そんな充実したヘルシンキ空港の、僻地とでも呼べるような端の端まで歩かされ、リガ行きの便を待つ。人少ないし、日本人どころかアジア人すらいない

日本からの便が到着する前、機内アナウンスではマイナス11℃とか言ってたけど、空港内にさえいればそんなに気にならなかったわけだが。

さてリガ行きの便へ、というところで、タラップもなく、わたしたちは歩きで飛行機まで向かわされた。

 

そこで我々が目にしたものは、

 

 

 

まさかのプロペラ機。

 

成田ウラジオストク間でも使われることのなかったあのプロペラ機に!? 今ここで!?

いやいやそんな、と半ば怯えながら搭乗。機体が動き始め、そうかヘリコプターみたいな垂直移動じゃないんだなあと妙な学びを得つつ離陸を待っていたのだが。

 

 

急に液体洗剤を機体に大噴射され、窓が泡だらけになったのだ。

いやなんで!?ここでやんのそれ!?乗客もういるけど!!??

別にいい、良いんだけどさ、さすがに想定外だし、その……洗い流さないまま離陸するんだね……。

 

おかげさまで、去り行くヘルシンキの夜景も、積み重なった雲の上からしか拝めない混じり気のない朝焼けと日の出も、装備を奪われた近眼の視界みたいな見え方しかしなかった。

仕方がないのでマリメッコの紙ナプキンとフィンエアー100周年記念紙コップに入ったブルーベリージュース(飲みかけ)の写真でも見てくれ。

 

飲む前に撮れよ

 

睡眠不足のため、夢現を行き来しているあっという間に着陸体制に。まあ1時間ちょっとだしね。

小さい飛行機すぎてモニターもついていないし、緊急時の説明もCAさんの実演だったが、乗り心地は悪くなかった。

機体の高度が下がる。フライト中に少し窓からの眺めは明瞭になったので、そっと下界を覗き込む。

 

うん。冬だ。

一面に広がる冬の森だ。

 

雪の白を背景に、細長い木々の黒が模様を織りなす、これぞ北欧の冬、と我々が思い浮かべる、禁欲的とでも言いたくなるようなモノトーンの光景。

 

 

リガ空港に着いて真っ先に撮った一枚を見て欲しい。あまりにもTHE・冬の森すぎるから。

 

ふと、去年秋に日本で公開されていたエストニア映画「ノベンバー」を思い出す。

冬の森が舞台になった、張り詰めたモノクロ映像の美しさが話題になったが、北欧に住む人たちにとって冬の森に彩度がないのは、なんら不思議ではないのかもしれない。

 

 

6枚重ねの重ね着にしたら円滑な所作に支障が生じた上に、外気に触れても何とかなりそうだったので、厚手のパーカーを1枚脱いだ。ビビり過ぎにも程がある。

キャッチの差で荷物を受け取り、なんとか空港からのバスに滑り込み、リガ中心部を目指す。

パステルカラーが美しいリガの街については、また次回。