【備忘録】人生初の新体操観戦、イオンカップ2022 | カラフルトレース

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明けない夜がないように、終わらぬ冬もないのです。春は、必ず来るのですから。

新体操経験者の優しいフォロワーに連れられ、人生初の新体操の試合を観戦してきたので、記念としてどんな感じだったか書いておきます。

イオンカップ 2022/10/19-22@東京体育館


【開催日まで】
※ここだけ完全に文句ですごめんなさい

・チケット情報が10月になるまで公開されず、結局タイムスケジュールも出場者も会場に行くまで分からないという、フィギュアスケートに慣らされた身としてはかなり不安な状態だった。日本新体操連盟だけならまだしも、FIGのサイトでも詳細が公表されていなかったので「それでいいのか?」感がすごい。

・できれば本当は座席表はチケット販売時に公開してほしかった。


【会場の様子】

・正面から入場すれば、当日のタイムスケジュール、出場順、注意事項は掲示されていた。

・新体操を習ってるキッズおよびその家族、が客層の大半を占めていそう。少なくともスケートの試合のように「経験者でも何でもないけど観戦しているオタクのコロニー」は発生していなかった。

・男女比の偏りがスケートの比ではない。

・ポーラ(スポンサー)のブースでは日本代表選手のパネルと一緒に写真が撮れる。どうやら化粧品のサンプルも配布していた模様。

・新体操用品店の二大巨頭、チャコットとSASAKIの出店を確認。手具、トレーニングウェア、ハーフシューズ(新体操特有の靴。バレエシューズの上半分だけみたいになってる)、手具装飾用のカラーテープが販売されていた。

実際に並んで買っている人の多さに驚いたが、新体操用品を購入できる実店舗というのは想像以上に少ないらしく、こうした試合会場内のブースは貴重な場として機能しているのだとか。

・上記に関連する余談。新体操キッズに紛れて手具を触らせてもらったが、クラブもボールも意外と重い。より正確に言えば「1分半これを持ち続けて演技するのか」と想定すれば重いな、という感じ。逆にフープは予想より軽かった。リボンはネクタイケースみたいな容器にくるくる巻いて保管することを知る。まあ繊細な生き物だしな、リボン。

・これまでの人生において、最も激しくピンク色に染め上げられた空間だった。ピンクの中でも薄めの色で、別にイオンのコーポレートカラーに忖度したわけではないはず。選手が出てくる通路も、パステル系のピンクを基調とした花々に囲われている。ジャッジ席もピンク、関係者のマスクもピンクで「これZoomだったら全部消えそう」と思ってしまった。

・今回は2日とも2階席で参戦したが、東京体育館で新体操を見るにあたっては、2階席(横から)でも不自由はない。


【謎のキティちゃん推し】

・謎も何も、サンリオがスポンサーについている。

・土日の試合は3部門(ジュニア、シニア2、シニア1)に分かれていたが、各部門の前に必ずキティちゃん(着ぐるみ)が登場する。フィギュアにおけるたまーりんやどーもくんと同等の存在なのだろうか。キティちゃんがハーフシューズを履いていたり手具を投げたりすることはなかったので、恐らく中の人は新体操関係者ではない。

・キスクラ(でいいんだよね?とにかく、選手が得点を待つ場所)にはキティちゃんのぬいぐるみが2体常設されている。一応、キティちゃんには妹がいる設定だったはずなので「2体いるならもう1体はミミィちゃんにしなよ」とは言いたい。これってチップとデールの片方だけが2体置いてある状態に近いんじゃないの?大丈夫?二人合わせてヤンマーのはずがヤンヤンになってるようなもんでしょ?

・最後の表彰式はキティちゃんに先導されて選手が登場する。ジュニア選手の個人表彰のみ、優勝者にキティちゃん(着ぐるみ)自らキティちゃん(ぬいぐるみ・小)が手渡される。自分の顔を分け与えるアンパンマンってああいう感じなのかな。

・キティちゃん以外のサンリオキャラクターの気配は一切ない。大人の事情だろうか。


【試合について】

・個人戦は各選手の演技が1分半で終わるので、かなり進行がサクサク。採点もさほど時間がかからない。集中力に不安のある人間でも存分に楽しめる。

・演技中は実況も解説も無言だが、演技後は喋ってる内容が会場全体にマイクで発信される。テレビでなくても演技後すぐに専門家の解説が聞けるのはありがたい。「回転するときにかかとを上げていたので加点」なんかは教わらないと分からないし「この選手は手具を扱う勘が良い」「イタリアの選手は回転力が高い」「イスラエルの選手は安定感がある」などなど、改めて言語化されると納得できる。余計な煽りがないのも良い。

・今回初の試みらしいが、選手が演技しているフィールドの背後にデュアルスクリーンが設置され、右側には現在の順位・得点状況、左側にはAスコア・Eスコアの減点がリアルタイムで表示されていた。何かあるたびに減点が表示されるので、ルールの理解には役立つ興味深い機能ではある。ただ、慣れないうちは演技と減点を同時に把握するのがなかなか大変。TESカウンターに馴染んだスケオタとしては、むしろD得点の積み重ねがリアルタイムで見れたらいいな。

・今回はインクワイアリー(異議申し立て。再採点を依頼できる)が一度も発動しなかった。誰もやらなかっただけなのか、そもそも許可されていなかったのかは不明。

・ウクライナチームは高崎での合宿からそのまま全員いらっしゃった模様。声出し応援はダメですよというやんわりアナウンスが開始前にあったものの、かなり大々的なコールが入っていた(シニア2以降は誰も声を出さなくなったので、たぶん怒られが発生したんだろうな)ちなみにウクライナ名物ユニタード衣装は今回も健在でした。

・生で見ると「どの手具もみんな違ってみんな怖い」という見解に落ち着く。とはいえやっぱりリボンがいちばん怖いよ。
フープ:軽いので予期せぬ方向に飛んでいくし転がる。
ボール:球体なので当然転がる。しかも跳ねる。
クラブ:2本あるので両方をちゃんと扱うのが難しい。
リボン:投げの軌道も落ちてくる場所も読めない。すぐ結び目ができて動きが狂う。人体に絡まる。

・落下や場外の減点幅は「手具と人間のうち、場外になったのは片方か両方か」「落下物を拾うまでに何歩歩いたか」「フィニッシュポーズを取った時点で手具が外に出ていたか」など、複雑な分岐があるらしい。

・いかんせん一人当たりの時間が短いので、フレーズの息が長い曲は使いにくそう。自ずとビートの効いた、呼吸の短い曲が増える。これでもルール改正によって、その傾向は緩和されたそうだが…(以前は技を入れられる数に上限がなかったので、より落ち着かない曲が多かったし、そもそも曲想を演技に反映できていたかも怪しかったそうな)

・このルール改正(得点に反映される技の数に上限を設定・いわゆる「芸術点」に相当するスコアを新設・時間の長い技に加点)があってよかった、というお話は解説の方が何度もされていた。

・斯くして、新体操見てると逆に「スケートはせっかく演技時間が長いんだから、もっとゆったりした曲いっぱい使いな!もったいないよ!」と謎の惜しさが湧いてくる。さすがのわたしも、新体操でクラシック使えとは言えない。

・逆にバレエ曲って使いやすいし動きやすいんだろうな。陸で踊るために作られた曲だから、という前提はもちろんのこと、ヴァリエーションやコーダって1分から2分の長さで作曲されていることがほとんどだし、似たフレーズの繰り返しも多いので、編曲がかなり楽そう。

・というわけで、スケートで唐突な編曲にある程度は慣れた身でも、新体操だとたまに顎が外れそうになる編曲に出会うが、なんかもうそれは無理なものを無理やりなんとかした結果なので、そういうもんだと割り切って見るしかない。逐一ツッコむのは野暮。

・DB(身体難度のスコア)を着実に積み重ねられる選手が強いというのは実感した。個人的にはDBはウクライナ勢の強みになっていそうだし、DAはやっぱりイタリアの世界女王、ソフィア・ラファエリが卓越していたなあという印象。ラファエリのネメシス(ボール)とクルエラ(クラブ)は掛け値なしに良いプログラムだった。


【余談】
新体操における「熊蜂の飛行」の音源は一意に定まる上に、ほとんどがクラブの演技で使われるらしい。