中学1年に上がったとき、姉は高校を卒業して家を出た。
こうして書いていると、あの頃の家の中と家族の風景が浮かび、それがそんなに前の事とは思えない。
姉はスポーツが得意でバドミントンの大会で道内で上位になった事もあり、体育の大学に進学したかったが家計面で難しく、地元の役所に就職した。
しかし肌に合わなかったのか一年で辞め、以来母に繰り返し繰り返し「◯◯を辞めなければ良かった」と言われることとなったが、どうして家計が厳しかったのかと言うと家を建てようとしていたからだ。
母にはSさんという友達がおり、官舎からはやや離れた、当時は殆ど家など建っていない場所にSさん一家と隣り合って家を建てるべく、母がよく部屋の見取り図を描いていた姿を覚えている。
父は公務員とは言え薄給で(よく母から聞かされた)資金は恐らく父の親たちに少し出してもらったか借りたのだろう。
今のように銀行にローンを組んだりはしなかったと思う。
それはともかく、家を建てる計画に父と母は夢中になり、夜になるとSさんのご夫婦とその話をするためによく出掛け、姉も家を出ていたので私は一人で留守番だった。
留守番には赤ん坊の頃から慣れていたはずなのに、その頃は何故か狭い家に夜一人で居るのがとても怖かった。
夜というのは不思議な時間帯で、明るい内には一人で居ても何でもないのに、暗くなると不安な気持ちが大きくなって、戸の向こうの風呂の脱衣所から「ガタッ!」っと音がした時は肝が冷えてソファから動けなくなった。
あとで考えればあれは風が風呂を沸かすストーブ(風呂の湯も石炭で沸かしていた)の煙突に吹き込んで蓋がちょっと動いただけだったのに(多分)誰か、何か、居るんじゃないかと思い始めたらさあ大変、身動きが出来ずにひたすらお父さんたちが帰って来るのを待つしかなかった。