パリ五輪の柔道は28日、男女各1階級が行われ、連覇を狙う男子66キロ級の阿部一二三(パーク24)は2戦連続で一本勝ちし、準決勝に進んだ。妹で同じく連覇を狙った女子52キロ級の阿部詩(パーク24)は2回戦でディヨラ・ケルディヨロワ(ウズベキスタン)に一本負けし、敗退した。

2回戦で敗れ、涙を流す阿部詩(28日)=荒木優斗撮影

 痛恨の一本負けで五輪連覇を逃した女子52キロ級の阿部詩は、背中を畳につけたまま起き上がることができない。しゃがみ込み、ふらふらと畳を降りると、平野幸秀コーチに支えられ、叫ぶような大声で泣き続けた。

 1回戦を快勝し、迎えた2回戦。技ありを奪い、有利に進めていた3分過ぎだった。投げを仕掛けようとした瞬間、懐に飛び込まれて谷落とし。背中から畳に沈み、主審の右手が上がった。全日本女子の増地克之監督は「あの一瞬だけ。相手にチャンスを与えてしまった」と悔やんだ。

 対戦相手のケルディヨロワは、世界ランキング1位の強豪。今年来日して全日本合宿に参加した際には、詩からの乱取りの誘いを断っていた。手の内を隠していたのだろう。詩は6月の国際合宿後、「海外の選手は私の技を返そうとしてくる。そこをどう対応するか」と語っていたが、まさにその執念の返し技にのみ込まれてしまった。

 

 

 東京五輪後、国際大会は負けなしだったが、不安はあった。昨秋から腰痛に苦しみ、「あまり良くない状況の中で、どう勝ち切るか」と、体と相談しながら稽古に励んできた。

 コーチの肩を借りて退場する際には、会場は「ウタ! ウタ!」の大合唱であふれた。阿部詩が立ち上がり、畳に上がる姿を誰もが望んでいる。