前回の最後にちらりとお話しした…
1974年製 Gibson ES-175のトグルスイッチ、シールド配線材、ボリュームポット、アウトプットジャック…
これには深〜いストーリーがありまして…
ちょこっと長いお話しですが…
先にストーリーを簡単に申し上げると…
フリマアプリで購入したのに…
昨年亡くなった私の師匠のES-175のパーツだったのです。
私は25でバンドをやめ、音楽制作の仕事に就きたくて、当時は新聞広告だけで音楽業界の職探しをしておりました。
大手レコード会社なども回りましたが、中途採用で大した実績もないので難しく…
苦労していた時に拾ってくれたのが、とある老舗の音楽制作会社の制作部長だった、その師匠でした。
レコーディングディレクターの仕事を叩き込んでくれ、公私ともにお世話になり、ご自宅にも良く遊びに行って息子さんと遊んだりもしておりました。
その時に師匠が大切にしている1974年製のGibson ES-175をよく弾かせてもらっていたものです。
今から十数年前、音楽業界を引退したジャズ好きの師匠は、郊外の小さなジャズバーのマスターに収まり、そこにはいつもケースに入ったES-175が立て掛けてあり…
ライブも出来るジャズバーなので、師匠はセッションになると持ち出して弾いてました。
ずいぶん前に離婚されていた師匠は一人暮らしで、健康には疎く…
その後、師匠は大動脈解離を患い、ジャズバーの営業もマイペースにせざるを得ない状況に陥ってしまったので…
私と友人の有志でそのジャズバーのオーナーになり、撮影やレコーディングでも使う形で運営を行い、夜は師匠のジャズバーという形にする事で、図らずも、また師匠と一緒に仕事ができる事になったのです。
私たちがオーナーになってからは、みんなそんなに儲けたいとも思ってなかったので、楽しくのんびりな溜まり場になって、穏やかな日々だったのですが…
昨年からのコロナ禍で営業が出来なくなり…
持病を抱える師匠は外出も出来ず…
部屋で塞いでいる事が多かった中…
昨年の7月、突然の大動脈解離の発作で逝去されてしまったのです。
関係者や常連さんも悲しまれども集まる事も出来ず…
未だに追悼の会を夢見ている状況なのですが…
そのジャズバーがまだ営業していた頃、持病を抱える師匠をいつも支えてくれた師匠の後輩の方がいて…
いつも献身的に師匠をサポートするその方を師匠はとても頼りにしており…
発病した時、みんなの前で「俺に何か有ったら、あのギター(ES-175)はお前にやるからな。」と公言していたのです。
お亡くなりになられた際に、そのことは私からご遺族にも説明し、ご納得頂いた経緯もありました…
そのギターを受け継がれた方とはそれ以降お会いしてもいないのですが…この夏…
本物のビンテージ配線材ってのは、音が良いんじゃろか…と疑問に思ってしまった私は…
フリマアプリにオークションに「Gibson 配線材 vintage」で網を張りまくっていた際に…
「Gibson 175 配線材 ビンテージ (1974年製) 」
で、こちらが引っかかったのです。
販売者のニックネームには、その方の実名も含まれていたので、すぐにわかりました…
他にも「Gibson T-TOP P.A.F. 175 (1974年製)」も売ってたので…
「ええ〜〜っ!分解して売ってんの??」と最初はビックリしましたが…
考えてみれば、本体は売られていないし…
その方は他にも50年代のギターをいくつか所有されてたりしてますし…
1974年程度のビンテージで、配線の面倒くさいフルアコをパーツ売りするのも割りに合わないと思われるので…
おそらく気に入ったパーツを寄せ集めてES-175をブラッシュアップしたのだろうと…
思い込む事にしました。
様子を見ているとピックアップはすぐに売れ…
こちらの配線材はどんどん値下がりし…
…考えてみれば私が頂いた師匠の形見は、師匠が音楽プロデューサーとしてインタビューを受けている、平成初期の「平凡パンチ」だけだし
σ^_^;
私が20代の頃から弾かせてもらっていたギターのパーツだし…
また、マテリアルとしても70年代の配線材は「50年代の物ほど抜けは良くないが、まろやかで超高域が美しい…」というレビューもネットで見かけたので…
形見として購入して見ようかと思い立ちましたが…
さて…
フリマアプリの世界で知り合いに身分を明かして取引するのも変だよな…と…
その方はジャズバーでご一緒させて頂いている時、私をオーナーとして、非常に丁寧に扱っていてくれたので…
個人的に連絡して「譲ってください!」ってのも「あ、では差し上げますので!」になっちゃいそうで、それも図々しいし…
悩んだ末、知らない人のフリをして購入する事にしました(笑)
正直、値下がりしたとて、70年代の配線材としては、ちょっと高いので…
知らんフリして値段交渉もしまして…
知られんまま手元に届いた次第です。
もし、次にその方に会った時…
正体を明かすのか…(^◇^;)
今は考えるのやめよーっと(^◇^;)
そんな経緯で、昨年、大動脈解離でご逝去された、私の師匠の愛機Gibson ES-175の…
大動脈を手に入れたお話しでした(^◇^;)
これをどうしようか?
ポットで音も変わるのか…
どうやって音のテイスティングしようか…
楽しみでっす!
P.S. 本当の形見はディレクターとしての腕です。
あれから32年、一応それ一本で食えてます^_^
師匠、ありがとうございますm(_ _)m