聞いてほしい、大事な話 | 絵本作家 ふじもとのりこの「絵本がもっと楽しめる!絵本製作裏話」

絵本作家 ふじもとのりこの「絵本がもっと楽しめる!絵本製作裏話」

絵本に関わり、早や40年。
ママと子が一緒に楽しめる絵本を4冊、工作本も出版!
絵本作家しか知らない、絵本の創り方、絵の技法、親子で作るキッズアート大公開
描いて、読んで、親子で絵本を10倍楽しもう♪

こんにちは。絵本作家ふじもとのりこです。

聞いてほしい、大事な話
 

 次の動画に向けて、出版社に絵本の読み聞かせ公開の許可申請しています。
これ、とても大事な話なのでお聞き下さい。(ちょっと長いけど)
 

 2社に問い合わせ中ですが、1社からは、フェイスブックで読み聞かせを公開するのは許可していないというお返事でした。
 

と書くと、「了見の狭い、堅苦しい出版社だな」
と思われる人もいるかと思います。
でも、これを貫く信念は私は大事なことだと思っています。
 

 そもそも、絵本ってどういうものか、絵本を通じてどんな形で社会に貢献したいかが、ゆるぎないということですから。
 

 私たち作家や編集者は、絵本を作る時、それを真剣に考えて作ります。
 

 絵本は本来、子どもたちに身近な大人が読み聞かせするものです。
子どもたちが信頼して大好きな人のぬくもりと声で出会う
その時に一番威力を発揮するように作っています。
 

 子どもたちに温かみのある声で、優しく楽しい言葉を語りかけてほしい。
そういう文章になっているだろうか、
小さい時から、できるだけ優れた絵に接してほしい。
そういう絵になっているだろうか。
 

 そうやって、言葉ひとつをずっと検討し、何日もかけるときもあります。
絵を何度も描きなおすこともあります。
 

 もちろん、売れるように、という要素がないわけじゃありません。
が、最後の最後の調整になります。
営業さんからの意見を取り入れて修正します。
 
 売れない本ばかり出したら、出版社は簡単につぶれてしまいます。
私のハロウィーン本を出してくれた出版社はなくなってしまい、重版できない状況です。
 

 今回読み聞かせ動画を撮ったのは、本当は出版社や書店の緊急事態だからなんです。かなりレアケースです。
コロナがなければ、実現してなかったと思います。
 

 今、4月出版の絵本は大変です。
 
 

 本屋さんは新刊の絵本をその月だけ平置き(表紙が見えるように置く)にしてくれます。

翌月は別の絵本が出版されるので、入れ替えになります。


 売れないと思われたら返品になるし、ちょっと置いておこうと思われたら棚さし(背表紙だけ見える)で、1,2冊置いてくれたりします。
そして前者の方が多い。
 

 ということは、最初の1か月が勝負ということです。
この期間に書店に並ばないと、もしかしたらずっと日の目を見ない、ということを意味します。
目に留まらず、手に取ってもらえない絵本は誰が買ってくれるのでしょう。書店にしても出版社にしても頭を抱えています。
 

 そのために読み聞かせ動画の許可が下りた、という裏事情があります。
 

 なので、「子どもたちのために」読み聞かせ動画をアップしようと思われる方は、まずその絵本の出版社に許可申請してください。
そして、許可が下りなかったとしても恨まないでほしいんです。
著作権を持っている作家でも、許可を得るのは難しいことなのです。
 

 そして、動画と本来の読み聞かせが違う、という事は、ぜひお伝えしないといけないことです。
 

 作家が読み聞かせ動画をアップすることで、「これはやっていいことなんだ!」と動画ブームになり、お母さんが自分で読み聞かせをしないことになったら・・・。
 

 それは、絵本に申し訳ないこと、絵本にかかわる人に申し訳ないことになります。
 

 今、多くの業界がコロナショックを受けています。
長引いたら、たくさんの倒産廃業が出るだろうことは誰もが予想できることです。
 

それは、出版社や書店も例外ではありません。
どんどんつぶれて行ったら、本当に優れた絵本が今後出にくくなり、手にとりにくくなるでしょう。
 

 優良な絵本を守るために。
皆さんの応援とご理解をいただきたいと願っています。
 

いつもたくさん応援して下さる方々の存在は、
本当に有難く心強いものです。
 

絵本は、大人が手渡さないと子どもたちに届くことがない。
多くの人の連携プレーで成り立っているものですから。
 
 

 子どもたちの生きる時代に、質の高い文化芸術を継承するのも
大人の役目ではないでしょうか。