昔好きだった「エロイカより愛をこめて」という漫画がある。

主人公はNATOの少佐(ドイツ人)と美術品泥棒(イギリス人)で、由緒正しい少佐の家ではマイセンの食器が使用されていた。

どうやら高級食器らしいということはわかったのだが、なんだか知らないけれど家にある昭和の和風の皿しか使ったことのない少女時代の私にとって
それは本当に存在するかどうかもわからない天女の羽衣レベルの代物であった。

この春、そんな我が家にマイセンの食器がやってきた。ネットフリマで手に入れたマイセンのブルーオニオンだ。

美しい・・・そして眺めれば眺めるほど、日本の焼き物に見えてくると同時に、「青いタマネギ」の絵を陶磁器の図柄に使おうと思ったのはなぜだろうと疑問で頭が一杯になった。

鬼滅の刃の無惨様は青い彼岸花を求めて乱行を繰り返していたが、さすがの彼もまさか青いタマネギを陶磁器に絵付けする人が遠い異国にいたとは思わなかったろう。

由来を調べてみると、定説になっているのは中国の焼き物にあった「ザクロ」の絵を見たヨーロッパの絵付け師が、ザクロなんて見たこともなかったため、「これはなんだ!?」となり、自分たちの知っているもので一番近い形のタマネギにあてはめて模写したとか。

当時の世界のエクセレンシー、ヨーロッパの芸術家よ!そんな狭い知識でよく世界の覇者気取りをしていたな!と思わずにいられないではないか。21世紀の私からすればとんでもない安易な置き換えだなと思う。

また説明によると縁起の良い竹とか菊とかの絵も描いてあるらしいが、どんなに目を凝らしてもどれが竹なのか、菊らしき花はあるものの、どこから、またどこまでが菊なのか判然としない。

ブルーオニオンというよりはブルーカオス、日本語訳「アジア~ヨーロッパへ:青の混沌」と言ったところだ。

まあ、マイセンの場合素晴らしいのはデザインというより、絵付けそのものの技術のようだから、ザクロだろうがタマネギだろが、クワイだろうが発芽玄米だろうが、きっとそこはどうでもよいに違いない。

そもそも陶磁器はボーンチャイナ(bone china)と呼ばれることからもわかるように中国発祥だ。ヨーロッパの絵付け師も、その絵付けの図案、技術を中国から学んだとて不思議はない。改めて中国文化の来し方に圧倒される。陶磁器を使う時、いちいち思いを馳せる必要もないではあろうが、時として中国あっての陶磁器だということを思い出してもいいのかもしれない。

ちなみに「エロイカより愛をこめて」には旧KGBのスパイも登場していた。世界情勢が変わっても今も連載が続いている勉強になる漫画なのでお薦めである。