朝通勤で運転中、文化放送を聞くようになった。これまで全くご縁がなかったラジオ局だが、他に聞くものがないのでザッピングしていたところ、やけに陽気に右派傾向発言をする声が聞こえ、ついつい好奇心をそそられて虜になってしまった。番組名は「おはよう寺ちゃん」というタイトルで、私が聞く7時台の前半、とにかく癖の強いコメンテーターが日替わりで熱弁をふるっている。しかも、7時40分くらいになると、これまた癖の強い武田鉄矢さんの「今朝の三枚おろし」という番組が始まり、全てに同意できるわけではないが、老年の悲哀などを語る武田さんのトークについつい耳を傾けてしまうのだ。

 

文化放送のアナウンサーと思しき「寺ちゃん」は、実に聞き上手だ。コメンテーターが好き放題に言うのを無難に受け取り、適切に相槌を打ったりしている。癖強暴走コメンテーターたち(特に月木の先生方)は本当に癖強なので、一つの問題点について、それぞれの意見をちょっと笑いをさしはさみながら雄弁に語り、ぶれることはない。同じ番組内で、同じニュースでも、「この間の人と違う意見だ!さあ、寺ちゃんの対応はいかに?」などと思う時もある。しかし、そんなときでも彼はしっかりと発言を受け止め、面白い要素があればちゃんとウケ、相槌を挟みつつも、時として第3者的視点を提示したりする。「よっ聞き上手!コミュニケーションの達人!」などともてはやしたいほどだ。

 

聞くところによるとこの文化放送は日本放送と同じフジサンケイ系列だそう。そして毎日聞いているにつれて、大変謎なことが起こってきた。地方で聞く東京のAM放送はとても電波が悪いのだが、この文化放送も例外ではない。さらに非常に頻繁に、なぜか韓国語が混ざるのだ。時には韓国語放送がメインで、それに「おはよう寺ちゃん」が混ざっている感じの時もある。度々中国に好意を持っていない内容があるので、中国からの仕返しでこんなことが起きているのだろうかと思っていたら、なんと韓国でも同じ周波数の番組が放送されていて、それが混ざって聞こえてくるらしい。黄砂が海を越えて飛んでくるのは知っていたが、ラジオ波まで。しかも東京からの電波より強い!何を言っているのか全く分からないのだが、ラジオ劇のような感じで抒情的音楽が流れたと思うと涙交じりの感情的な語り、やり取りが。

 

癖強コメントが聞きたいのに、こんなの聞きたくない!と思っていたら、FMでも文化放送が聞けると言うではないか。何しろそのうちAM放送はなくなってしまうらしい。それはそれで寂しいが、FM91.6で聞く「おはよう寺ちゃん」には朝から内容を理解できぬ感情的な韓国語は一切入ってこないので大変すがすがしい。ちなみにこのFM放送のシステムを称してワイドFMというようだ。今までもこんなこと聞いたことがあるんだろうけど、自己関連性がないと「それって何?」などと全く興味が持てないのが実情だ。寺ちゃんと癖強コメンテーターズのおかげで、今回ワイドFMという新たな仕組みとその意義を理解した私の脳裏には「必要は発明の母」「Where there is a will, there is a way.」などといった言い回しがよぎるのであった。