国内ドラマ三昧の今日この頃。私はとうとう相棒に食指を動かした。

テレビで再放送のものをアトランダムに見たことはあるが、今回はseason1から順番通りに見ている。

世間にあまりにも相棒ラブな方があふれているので、魅力ある作品なのだろうと薄々は思っていたが、ある時は反町さん、ある時はミッチー、ある時は亀山さんといった再放送のランダム視聴では、話の筋は追えても相棒ワールドに浸ることは難しく、正直「相棒、そんなにいい???」と思っていた。

相棒を好きになるためにはやはり亀山薫が必要で、そこに絡む伊丹刑事と米沢守が必要だ。これらの要素は途中から一部欠けていくようなので、まず最初から見て、相棒を、そして右京さんを好きになり、その後新しく登場する人物たちをも受け入れるというプロセスが必要なのだと思う。

というわけで、今回season1から見始めたことにより、相棒の良さがじわじわと染みてきた。それがピークに達したのは先日season3の第11話(当初10話と書いていたが2022.12.11再放送されるものの表示によると#11とあるので訂正)を視聴した際だ。

これは切ない話で、誰も幸せにならない。そしてじんわり心を締め付ける。

登場人物1 20年前に17歳で殺された女性。

登場人物2 彼女を殺した男。

  時効は既に成立している。ただ男は罪悪感からかノイローゼになり、強迫神経症のような日々を送った挙句、自首した直後、何者かに殺される。
 自首は悔い改めたからではなく、自分を狙う輩から守って欲しいという理由によるもので、被害者遺族に詫びる気持ちはなかった。

登場人物3 下手人=隣に住む司法試験合格を目指す男。
 ノイローゼ男が真夜中でも大音量で音楽を聴いているので腹を立て注意しに行き、そのまま殺してしまい、司法試験合格どころではなくなる。ちなみにこの俳優さんは真犯人フラグの太田黒部長演じた方。ずっと活躍していたんですね~

登場人物4,5 娘を殺された両親。

 警察に、自首した男の素性を教えて欲しいと頼み込む。二人とも老い、母親は体調が良くない。時効が成立した事件の犯人情報を教えることができない警察は、人情では教えてあげたくても教えることはない。人情派の亀山は悩んでしまうが、右京さんは冷静に、最後まで淡々と「お教えできません」という対応を繰り返す。

 妻が入院するから今日が最後だと犯人の情報を懇願する老夫婦。右京さんは最後まで拒み、衰えた老夫婦が肩を落とし、寄り添いながら警察を去っていく姿を見送る。
右京さんが亀山さんに「あの姿をよく覚えておきなさい。」と伝えるシーンがおでんのちくわぶに染みるだし汁のように、私の心に染みわたったのである。

殺人に時効はあっても、今回の犯人のように苦しみ続ける(殺人なんかしたから当たり前だ)ケースもある。


殺人に時効があるからこそ、せっかく犯人が自首しても被害者家族が犯人の情報を得ることも、犯人のことが報道されることもない。
 

時効とは何なのか、被害者の権利とは何なのか、自分の蒔いた種で結局殺された殺人犯は可哀そうなのか。
 

結局加害者のことを知らされない遺族は本当に真実を知ったほうが幸せなのか。
 

たくさんの答えのない疑問がその老夫婦の背中と、それを見送る右京さんと亀山さんの表情に凝縮された神回であった。

これから相棒がどんどん変わり、最新seasonで亀山さんが戻ってくるまで見届けるには随分な視聴時間が待っているが、たまには紅茶でも飲みながらこつこつ見るつもりだ。