発売直後に購入したので、購入~読破をあっという間に完了したことを考えるともう2か月以上が経つことになる。

 

年末の大掃除でこの本を手放すことにしたので、感謝を込めてこの本から得たことを残しておきたい。

 

実際の「お金の切れ目が恋のはじまり」最終回はとてつもない喪失感と暖かさ、そして渦巻く陰謀論にもたらされる懐疑に満たされたものだった。

 

そして、このシナリオブックを読み、やはり三浦さんの「猿渡慶太」は完璧だったと再確認した。

三浦さんが演じることができなかった第4話以降の慶太のどのセリフを読んでも、3話までに三浦さんによって視聴者(私)の脳裏にインプットされた慶太像が生き生きと再現され、「こんな声色で、こんな表情で、こんな体動で」その場面にいたであろう慶太の姿が浮かんでくるのである。

 

人それぞれに異なる価値観の違い、人には言えない心の傷、誰もがどこかにほころびを持っているが、正しい相手と出会うことで、そのほころびを繕い、過去と向き合い、未来に向かって生きていける。とにかく明るい慶太が春のつむじ風のように周りの人を巻き込み、そして自分自身も成長していく。そんなストーリーだ。

 

特別に書き直した最終回では、ラボットや板垣さんが果たした過去と向き合う旅のお供はやはり慶太だった。桃太郎のモチーフも確認できた。やはり当初の脚本で見て初めてこのドラマは納得がいくようにできている。それを何とか4話でまとめ上げたのは、ただ「プロフェッショナル」その一言である。

 

この物語、「方丈記」をモチーフにしているが、玲子の世を捨てたような生き方のバイブルであり、迷いながら生きる登場人物の心の写し鏡のような内容でもある。人生の真実を探る言葉が並んでいると思うのだが、その中に愛があり、笑いがあり、人の営みがあることを描いたのがこのドラマだ。同時に、深すぎて、暗すぎる面もあり、突き詰めると少しだけ辛い気持ちにもなる。記録として、各話に引用された部分を残しておきたい。(シナリオブックより)

 

感謝を込めて。

 

1.「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず

   淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし

   世の中にある人とすみかと、またかくのごとし」

 

2.「かむな(ヤドカリ)は小さき貝を好む  これ事知れるによりてなり

   みさごは荒磯にいる  すなはち人を恐るるがゆえなり

   我またかくのごとし

   事を知り、世を知れれば、 願はず、走らず、

   ただ静かなるを望みとし、憂へ無きを楽しみとす」

 

3.「いかにいはむや、常に歩き、常に働くは、養性なるべし

   なんぞいたづらに休みをらん 人を悩ます罪業なり 

   いかが他の力を借るべき

   衣食のたぐひ、またおなじ

   藤の衣、麻のふすま、得るにしたがひて肌をかくし、野辺のおはぎ、峰の木の実、

   わずかに命をつぐばかりなり

   人にまじはらざれば、姿を恥づる悔いもなし」

 

4.「静かなる暁、このことわりを思ひつづけて、みづから心に問ひて曰く

   世をのがれて、山林にまじはるは、心を修めて、道を行はんとなり

   しかるを、汝、姿は聖人にて、心は濁りに染めり」

 

5.「もし、夜しづかなれば、窓の月に故人をしのび、猿の声に袖をうるほす

   草むらの蛍は、遠く槇の島の篝火にまがひ

   暁の雨は、おのづから木の葉吹く嵐に似たり」

 

  ※以下シナリオ内で玲子によって解説された内容

   (慶太がいなくなったらと想像したときの気持ちと関連付けて)

    静かな夜は月を見て、もう会えない人を思い出す。猿の声を聞いて涙をこぼす。

    まるで篝火みたいに草むらには蛍が飛び交い、夜明け前の雨は、風に舞う木の葉に

    似ている。

 

6.「春は藤波を見る、紫雲のごとくして西方に匂ふ

   夏は郭公をきく、かたらふごとに死出の山路をちぎる」

   秋は日ぐらしの聲耳に満てり うつせみの世をかなしむかと聞こゆ

   冬は雪をあはれぶ つもりきゆるさま 罪障にたとへつべし」

 

7.「もしおのづから身かずならずして

   權門のかたはらに居るものは

   深く悦ぶことあれども、大にたのしぶにあたはず

   なげきある時も聲をあげて泣くことなし 進退やすからず

   たちゐにつけて恐れをのゝくさま

   たとへば雀の鷹の巣に近づけるがごとし」

 

8.「そもそも一期の月影かたぶきて餘算山のはに近し

   月かげは入る山の端もつらかりきたえぬひかりをみるよしもがな」

 

   「淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし

    世の中にある人とすみかと、またかくのごとし」

 

   「あしたに死し、ゆうべに生るるならひ、ただ水の泡にぞ似たりける

    知らず、生まれ死ぬる人、いづかたより来たりて、いづかたへか去る

    又知らず、かりのやどり、誰が爲に心を悩まし、何によりてか目をよろこばしむる」