ステイホームで家にいることが多かった時期にたまたま「徹子の部屋」を見ることが何度かあり、この長寿番組を今までろくに見たことがなかったと気づくとともに、その魅力をようやく認識したのである。

 

ステイホーム中は結構過去の回の使いまわしで、徹子さんの世間知らずかつちょっとKYだが決して憎めない面やちょっと天然で天真爛漫な面が目立つ内容の回をいくつか見た。(例えば徹子さんは豚汁を召し上がったことがなく、皆で豚汁を説明するがちっともわかってくれないとか、ゲストと一緒に餃子を包むのだが、超不器用とか。)

 

最近は新しいものが始まっているようで、たまたま7月の連休中に平野レミさんとジュディオングさんの回を見ることができた。

 

亡き夫を想い今後の生きるよすがを求めるレミさん。

 

「子供にも孫にも誰にも埋められないこの寂しさをどうやって埋めたらよいのか」といったようなことを問うていた。

 

『結婚歴も、夫との死別歴もない徹子さんに何を聞いているのだ?』と私は思ってしまったのだが、徹子さんの人間力は私の想像などはるかに超えたものだった。

 

「今まで、愛し、愛された思い出を抱いて生きていったらいい。」そのような回答であった。

 

徹子さんは寂しさいっぱいのレミさんのトークも愛情をもって「そうよね。」と丁寧に聞き、「黒柳徹子=ザ・ベストテンの司会のとにかくよくしゃべる人」という長年のイメージが一瞬で刷新される聞き上手ぶりを披露していた。

 

トーク番組のホストなのだから当たり前といえば当たり前だが、「ゲストの話をとてもしっかり聞き、ステキな相槌を打つ」この仕事ぶりはジュディオングさんの回にも惜しみなく発揮されていた。徹子さんはまた結構なほめ上手でもある。

 

そして徹子さんが嬉しそうだと見ている私まで嬉しくなるのだから、徹子さんが「まあ、かわいい!」などと言えばゲストの方はさぞや嬉しいことだろう。

 

ジュディオングさんもお姉さん的存在の徹子さんに心を許し、亡くなったお父さんのこと、高齢のお母さんのことなど様々なエピソードを話していた。この回を見て私は仕事で見られない普通の日も「徹子の部屋」を録画することを決め、以後毎日録画して見ている。

 

こんな素晴らしい番組を今まで見ずに生きてきたなんて私人生の損失とまで言っていいくらいだ。

 

徹子さんのトークに昔のような歯切れの良さはない。

 

しかし、あのちょっと癖の強そうな中尾ミエさんにまで「私のことを最初から知っていてくれるのは黒柳さんだけ」と言わしめる芸能界の大御所であるだけでなく、80代後半となった今も少女のようなかわいらしさと好奇心を保ち、同時に聖母のような広く温かい心で「あら、そうなの~」、「そう、そう、そう、そう」とゲストの話を優しく受け止めてくれるのだ。

 

老若男女に渡る様々なゲストたちが徹子さんを前にして心を開いていく。まさに徹子マジックだ。

 

そんな徹子さん、中尾ミエさんの回では野際陽子さんの名前を出しながら「みんな急にいなくなってしまって寂しい」と言っていた。先日の渡哲也さん死去の際も徹子さんはとても寂しそうだった。いつか徹子さんも・・・なんて思うととんでもない寂しさがこみあげてくる。

 

しかし、徹子さんは中尾ミエさんに「番組50周年までは頑張る」と宣言。なんなら「100歳までやるのも面白いかも」などと言い出し、さらに「ミエさんをずっと見張っている」というような頼もしい発言も飛び出した。

 

中尾ミエさんだけでなく、徹子さんにいつまでも元気でいてほしい人はさぞやたくさんいることだろう。私もその一人。

 

来週も、疲れた一日の終わりに、「徹子の部屋」を見るのを楽しみにしよう。