学生の頃お泊まり行事の時、就寝中いびきをかいたり、おならをしたり、寝言を言ったりする子がいると、話題になったものだ。

 

たまたま関係者に意地悪な子がいなかったからいじめには発展しなかったが、一歩間違えればそんな問題もはらむ現象である。私自身「実は私も・・・?」などとヒヤヒヤしながら宿泊行事をこなしてきた。

 

20代になってから「いびきかいてたよ」と率直に言ってくれた友人がいたので「え?私もいびきをかくの!?やっぱり・・・」と正直衝撃を受けたが、それがどの程度のいびきなのか取材をすることもなかったし、「いびきがうるさい」などの不満は通常本人には言いにくいものなので、自分のいびきがどの程度のものなのか不透明なまま早何十年も生きてきた。いびきというのは、自分の為す行いでありながら、自分の知り得ぬシチュエーションで起こるため、自分の中の未知の自分、アナザーセルフの為せる業とも言え、なかなかに厄介なものなのだ。

 

ここのところ何度か入院生活を送り、見ず知らずかつ、様々な年齢の女性達と同じ空間で寝る機会があったが、約半数の人が、若かろうが歳をとっていようが、結構な大音量で、激し目のいびきをかいていた。猛獣レベルの方もいた。たまたまハンドバッグに入っていた耳栓を深夜取り出して使用するほどのノイズだ。いびきと言えば通常肥満傾向のおじさんがかくイメージがあるが、それはまったくもって誤解かつ、差別だと主張したい。

 

そんなわけで、自分のいびき疑惑に加え、いろいろ悩みが絶えず毎晩うなされているのではという疑惑も生じた先日、「いびきレコーダPro」というアプリを購入してみた。これは就寝前にセットすると、音が検知された部分だけが録音されるというもので、一晩で録音時間は5分程度という仕組みになっており、聞くのも簡単だ。かれこれ2週間あまり使用しているが、自分が寝ている間の様子がわかり、毎日未知との遭遇を体験している。例えてみれば見たことのない深海魚の生活を垣間見るような神秘的な気分だ。しかもその深海魚は暗闇の中で本人の意識を離れて活動するもう一人の私。「鶴の恩返し」で鶴が機織りをしているところをのぞくように、見てはいけないものを見るようで、最初は結構勇気を伴う行為であった。

 

結論とすれば私は結構静かに寝ているようだ。5日に1度くらいいびきをかいているようだが、それも「規則いびき」とされるもので、小さく数分続いて終わっている。少なくとも猛獣レベルではないので安心した。

 

このアプリは無音状態の長さも可視化され、睡眠時無呼吸症候群の可能性もわかるようになっているが、私も一晩に何度か無音状態が検知されているので、ただ静かに寝ているだけなのか、無呼吸なのかが今の関心事だ。

 

データをお医者さんに見てもらうこともできるようなので、ちょっと興味がある人から深刻な睡眠時無呼吸症候群の可能性がある人まで、試してみると良いかもしれない。