※ その3の記述は、津村先生の著書『宇宙はなぜ「暗い」のか?」から、私が抜き書きをしてまとめたものです。

8は不適切な説なので、その4で検討しなおします。

このページでは、津村先生から「記述に間違いはないと思います。」とのお言葉を戴いたので、ご確認戴いた内容に以後手を加えません。

https://twitter.com/tsumura_isas6/status/1117346301866196992

2019/4/14 17:38

8、星の寿命が足りない・・・・ケルヴィン卿による正解

まず、ビッグバンとかそういう難しいことは考えないで、無限に広い空間に星が無限に存在する宇宙を考えて一つの正解を出します。

1000垓光年離れた星からの光が私たちに届くまでには1000垓年の時間がかかります。

一方で、恒星には寿命があります。

仮にすべての恒星の寿命が太陽と同じ100億年だとしたら、恒星が光っている確率はわずかに10兆分の1程度(100億÷1000垓)になります。

星が全体の10兆分の1程度にしか光っていないとしたら、私たちに届く星の量も10兆分の1になってしまいます。

結論として、夜空の明るさは太陽面の明るさ(3で説明した「太陽の面輝度」)の10兆分の1の明るさ(これはおおよそ私たちが知っている暗い夜空の明るさに相当)にしかならないということです。

これがオルバースのパラドックスを解決する説明です。

最初にこのような計算により夜空が暗いと正しく説明したのは、絶対温度の単位として使われる「ケルヴィン」卿の名で知られる、ウィリアム・トムソンでした。

ケルヴィン卿が見積もった値はここで紹介した値とは微妙に異なりますが、結論は同じです。

 

9、宇宙年齢では時間が足りない・・・・宇宙は138億年前に生まれた

ケルヴィン卿の時代にまだ知られていないことでしたが、現代に生きる私たちは、観測可能な宇宙が空間的にも時間的にも無限ではなく、その中に星が無限個あるわけでもないことを知っています。

宇宙マイクロ背景放射の観測から、この宇宙は138億年前にビッグバンで誕生したということがわかりました。

ここから導かれる結論は、私たちは138億光年かなたまでしか見ることができなということです。

そこより遠くにある銀河からの光が私たちの目に届くのに、宇宙年齢では時間が足りないからです。

一方で、背景限界距離である1000垓光年程度まで見通して、やっと「オルバースのパラドックス」で考えているように夜空が明るく見えるのでした。

つまり、オルバースのパラドックスに対するもう一つの回答は「時間的にも空間的にも宇宙は有限なので、宇宙の観測可能な範囲に存在する星の数は有限であり、しかも遠くの星や銀河からの光が私たちのもとに届くのに、宇宙年齢では時間が足りないから」となるのです。

 

その4に続きます