民主党のマニフェストの一つに、
「相続税・贈与税改革の推進」という項目があります。
相続税については、
「富の一部を社会に還元する」考え方に立つ
「遺産課税方式」への転換を検討。
相続税の課税ベース、税率の見直しについては、
わが国社会の安定や活力に不可欠な中堅資産家層の育成に
配慮しつつ検討します。
税収を社会保障の財源とすることも検討します。
さらに、相続税の課税方式の見直しに合わせて、
現役世代への生前贈与による財産の有効活用などの視点を含めて、
贈与税のあり方も見直します。
・・・つまり、増税するよ、ということですね。
相続税はどうやって計算する![]()
相続税の課税方式には
(1)「遺産取得課税方式」
(2)「遺産課税方式」
(3)「法定相続分課税方式」
があります。
現在、日本は(3)「法定相続分課税方式」を採用しています。
かつて自民党の時(2008年)に
遺産取得課税方式への転換が検討されましたが、
経済不況のために見送りになりました。
民主党政権になり、遺産課税方式への転換が
目下、検討されています。
法定相続分課税方式とは![]()
現在の日本で採用されている方式で、
以下のようなプロセスで計算します。
①相続財産全体から法定相続人の数に応じた
「基礎控除額」を差し引く
②①に税率を掛けて全体の相続税を計算
③②の税額を、各相続人が取得した財産の額に応じて按分する
この方式によれば、
相続人間で遺産をどのように分けても、
支払う税金の総額はほとんど変わりませんが、
相続人の数によって
相続財産全体から差し引かれる額が変わるので
同じ遺産額でも、相続人の数が多いほうが
税額が少なくなります。
極めて単純化した説明ですが、たとえば、
①相続人が2人の場合、
⇒基礎控除5,000万円+1,000万円×2=7,000万円
よって、遺産が7,000万円を超えるまでは
相続税の申告義務がない。
②相続人が3人の場合、
⇒基礎控除5,000万円+1,000万円×3=8,000万円
よって、遺産が8,000万円を超えるまでは
相続税の申告義務がない。
※厳密には、生命保険に入っている場合の控除制度なども
ありますので、専門家に御相談ください。
遺産課税方式とは![]()
それでは、今回導入が検討されている、
遺産課税方式とはどういうものでしょうか?
これは、相続人の数に関係なく、被相続人(遺産を残した人)
の遺産額に対して課税する方式です。
⇒ 遺産の総額×α%
これは、亡くなった人が一生の間に蓄えた財産の一部を清算して、
社会に還元すると言う考え方に基づいています。
財産の全体に累進税率が適用されるので、
相続人の間で遺産をどのように分けても、
支払う税金の総額は同じになります。
そういう意味では、
相続税の支払いを少なくすることができなくなりますね。
アメリカやイギリスではこの方式が採用されています。
遺産取得課税方式とは![]()
最後に、かつて導入が検討されていた、
遺産取得課税方式について。
これは、各相続人に対して、それぞれが取得した
財産の額に応じた税率(累進税率)を適用する方式です。
妻:遺産総額のうち、取得分×α%
子:遺産総額のうち、取得分×β%
相続という偶然の理由で財産を得たという事実に着目し、
財産を取得した側に課税することで、
富が一部の人に集中することを抑制しよう
という考え方に基づいています。
累進税率が適用されるため、
遺産の分け方によって全体の税負担が違ってきます。
計算してみると、支払う相続税の総額を最も少なくするには、
各相続人間で均等に分けるのが一番良いという結果になります。
よって租税回避が図られやすいという欠点があります。
ドイツやフランスではこの方式が採用されています。
最後に・・・
今、みてきたように、遺産課税方式になれば、
各自が支払う相続税額は増えるでしょう。
今でこそ、相続税の納付義務を負う人は全体の4%ですが
申告義務を負う人も増やす方向のようですから、
「相続税の問題は、私には関係ないわ」
とはいってられなくなりそうですね。