古典探訪㉚ 六韜三略 | 四柱推命日記

四柱推命日記

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六韜と三略はそれぞれ

武経七書(孫子、呉子、六韜、三略、

司馬法、李衛公問法、尉繚子)に数えられ、

古来、兵法書として重用されてきた。

共に周の呂尚(太公望)が書いたとされる為、

六韜三略と併称されることが多い。

 

六韜は現実的武略を多く扱い、

呂尚が文王、武王に

軍事や政治について教える形式をとっている。

 

韜とは弓を入れる弓衣の事であり、

ここでは用兵の策略を意味する。

六韜即ち六つの策略であり

文韜、武韜、竜韜、虎韜、豹韜、犬韜

から成る。

 


三略は上略、中略、下略から成り

具体的な戦略よりも君主を対象として

政治的な理念を説いている。

その内容には儒家、法家、墨家、

陰陽家等の思想も見られる。

 

三略は前漢の張良が

黄石公から授かったとされ

その時の不思議な話が

史記の留候世家に見られる。

 

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太公望呂尚は周の軍師

(紀元前11世紀頃の人)であり、

周の文王、武王を助けて周王朝を成立させ

斉の国に封じられたとされる。

 

六韜三略の内容は

周初の当時なかったとされる

騎兵戦の内容を扱っていたり、“将軍”

という熟語も左伝に初めて見られるもので

この当時にはなかった筈、等の理由から

太公望の作ではなく、漢魏以降の

後世の仮託であるという学者が主流であった。

 

※しかし1972年には銀雀山漢墓から

六韜の一部の竹簡が出土したことで

その成立年代は漢初以前、戦国末期には

既に存在していたであろうとされる。

 

要は古くから六韜三略は太公望が

書いたものではない偽書である、

という見立てがされてきたわけだが、

一方で偽書であってもその内容には価値があり、

歴史上、孫子や呉子と並んで

歴代兵法家の教科書として機能してきた。

 

則ち儒家における四書五経と同様に

兵家の経典として武経七書に選定され

貴ばれてきたのである。

 

日本においても歴代兵法家の

参考書として尊ばれ、藤原仲麻呂の

鎌足伝などによれば藤原鎌足が

六韜を暗記するほど愛読しており、

後の大化の改新の実現にも

機能したであろうとされる。

 

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六守と三宝

 

文王が太公に諮問していう。

「国家万民の主がその国や民を

失うのは何故であろうか」

 

太公がいう。

「それは共に国を守る人物を

慎重に選択しないからです。

人君には六つの守りと三つの宝があります。」

 

文王がいう。

「六つの守りとは何であるか」

 

太公がいう。

「第一に仁、第二に義、第三に忠、

第四に信、第五に勇、第六に謀、

これを六守というのです。」

 

文王がいう。

「臣下にこの六守があるか否かを

慎重に選択するにはどのようにしたら

良いであろうか」

 

太公がいう。

「試みに彼らを富ませてみて、

彼らが富に任せて礼を犯すことが

無いかどうかを見る。

 

高位高官に任じてみて傲慢になるか

ならないかを見る。

 

重職を付与して見て意思を動転し

逆心を抱きはしないかどうかを見る。

 

用いてみて何事も少しも隠す事が

ないかどうかをみる。

 

危険な立場においてみて

恐れないかどうかを見る。

 

種々の事変に当たらせてみて

行き詰まることがないかどうかを

観察する。

 

富ませてみても礼を犯さないようであれば

仁のある人であります。

 

高位高官に就けても驕らないようであれば

義のある人であります。

 

重職に就けても志を変えない人物は

忠のある人であります。

 

用いてみて何事も隠しだてしないようであれば

信のある人であります。

 

危険な立場に置かれても恐れないようであれば

勇のある人であります。

 

種々の事変に応じて窮することの

ないようであれば

臨機応変の謀才を備えた人であります。

 

君主はこの三つの宝を

人に貸してはなりません。

人に貸すと君主としての

威力を失ってしまいます。

 

 

文王がいう。

「三つの宝とはなんであろうか」

 

太公が言う。

「農、工、商を三つの宝というのです。

農民が愛郷心をもって一致団結するなら

穀物は充足し、工人が愛郷心をもって

一致団結するようであれば器具は充足し

商人が愛郷心をもって一致団結すれば

貨財は安定します。

 

農工商の三宝がそれぞれ郷里に安住し

その家業に励むことが出来れば

人民は何の心配もなく、郷里も乱れることなく、

その一族も安定するのです。

 

かくして臣下が君主よりも

富み栄えて威力をふるう事もなく、

臣下の邑都が国都より大きくなって

国を乱す事も無いのです。

 

この六守、仁義忠信勇謀が伸長し

賢士適材を得れば君主は栄え、

三宝、則ちの農工商が完全に保たれれば

国家は安泰となるのです。」