『キッズ・リターン』
1996年日本映画 108分
監督:北野武
脚本:北野武
出演:金子賢 安藤政信 他
青春映画。有名なラストシーンだけは何かで知ってたけど、実はちゃんと観るのは初めて。
悪戯したりカツアゲしたり喫茶店に入り浸ったりと無軌道な高校生活を送るマーちゃん(金子賢)とシンジ(安藤政信)は教師たちからも完全に見放された存在。そんな中、マーちゃんはカツアゲした学生が連れてきた男に殴られたことにショックを受け、ボクシングジムに入る。しかし、一緒に入ったシンジの方が筋がよく、プライドが傷ついたマーちゃんは辞めてやくざの世界へ。シンジもマーちゃんもそれぞれの世界で成り上がるが、大人の狡さ、社会の醜さに傷つくことになる。
淡々と来ててこの奇跡的なラスト。ガツンとやられてしまった。何だか「ガキ帝国」の松本竜介を思い出してしまった。ボクシングとやくざの話だし、漫才師を目指す(やや浅薄な)同級生たちのエピソードは挿話の一つとしてしか描かれていないのだけれど、これは紛れもなく芸人の話だと思う。
そして、どこまでも男の話。シンジの方が強いからという理由であっさりボクシングを辞め、やくざの世界でちょっと認められたらそれを見せたく現れるマーちゃんにしろ、シンジを陥れる陰湿なジムの先輩ハヤシ(モロ師岡)にしろ、そして結局他人に流されてばかりのシンジにしろ、ほとほと弱い。
こういうダメさって男だなぁと思う。女より男の自殺者の方が断然多いという事実も、たぶんこういう弱さに起因しているんだと思う。女の方が男よりきっと、孤独や絶望に対する耐性はずっと強い。ガツンと来たけど基本的には遠い話だという気がするのは、おそらくそのせいだと思う。
私はそういう「男の弱さ」に厳しい。慰めたり癒したり安らぎを与えたりなどしない。冷笑を柔らかく加工した微笑みをふんわり浮かべるだけである。鈍感な男はその表情だけを見て私のことを優しいと言うし、敏感な男は馬鹿にされているのではないかと慌てる。この映画で北野が描こうとしたものを私が描くとするならば、だから、そういう目線からということになる。
しかし迷惑してるのは私に日頃から関係してる男の人たちである。根性悪くてごめんなさいね。だけど変わる気もないので、そして(物凄く美しく言えば)そういう対応が私の愛情でもあるので、「私=荒療治」とでも思って今後ともよろしくお願いします。
やくざへの夢が潰えたマーちゃんと、
ボクサーへの道を諦めたシンジ。
シンジの漕ぐ自転車にマーちゃんが二人乗りし、
母校のグラウンドをぐるぐると回る。
マーちゃん「俺たちみたいな馬鹿、まだいるかな?」
シンジ「もういないんじゃないすか?(校舎に)おーい馬鹿、勉強してるかー!」
こだまする声。
マーちゃん「シンジ、やめろよ…」
笑う二人。
教室からは苦い顔で教師が見ている。
シンジ「マーちゃん。俺たちもう、終わっちゃったのかな」
マーちゃん「馬鹿野郎。まだ始まっちゃいねえよ」
笑いながら進む二人。
★★★★★★★★☆☆