『ハンナとその姉妹』
1986年アメリカ映画 103分
監督:ウディ・アレン
脚本:ウディ・アレン
出演:ミア・ファロー ダイアン・ウィースト 他
著名な俳優である両親から生まれた長女ハンナ(ミア・ファロー)、次女ホリー(ダイアン・ウィースト)、三女リー(バーバラ・ハーシー)という三姉妹と、それを巡る男たちの悩み多き人間模様。
ストーリーというよりも、人物を丁寧に描いていく感じ。ハンナの夫エリオット(マイケル・ケイン)は、妻を愛しているのにリーにも夢中だし、売れない女優ホリーはクスリやったりケータリングの店出してみたり、人生迷走中。ハンナの前夫ミッキー(ウディ・アレン)は売れっ子テレビ演出家だけど、病気と死の恐怖に取りつかれて近頃は仕事も手につかない。
建前と、Mとして呟かれる本音の対比が粋で面白い。テロップの入れ方も洗練されている。そして、多弁、雄弁。あんなに気弱なルックスだけど、ウディ・アレンは本当によく喋る。俳優としてもそうだけど、脚本家としてもまー喋る喋る。言葉に支えてもらわないと立っていられないというこの感じ、もちろん個人の才能でもあるんだろうけど、ユダヤ系作家に共通する印象でもある(ラリー・デイヴィッドなんかそっくり)。あと、一度は死のうかとまで思いつめてたミッキーがまた生きてみようと思ったきっかけがマルクス兄弟の映画だったっていうのも、いかにもユダヤ的でいい。
冒頭から最後までをくるんでいるエリオットの浮気ラインが面白い。ズルすぎだし勝手すぎだし馬鹿すぎ!と思うんだけど、きっと男の浮気の理屈を正直に描くとこういうことになるんだろうな。のめり込んだ女の方が馬鹿を見るんだな。なるほど、心に留めておきます。
次女ホリーの跳ねっ返りぶりと、しっかり者の長女ハンナへのコンプレックスは、伯母を思い出す。この話、個人的には母姉妹とすごい被る話だった。私の母は姉二人兄一人の末っ子で、伯母たちとの関係がちょうどこの三姉妹みたいだったので。
覚書として少し書いておく。母の一番上の姉はしっかり者で完璧な人だったらしいが、二番目の姉は性格も見た目も上の姉に劣る(とハッキリ皆に言われてるのも凄い)人。しかし完璧な姉の方は出産で亡くなり、生まれたばかりの赤ちゃんに母親がいないのも可哀想だからってことなのか、三女である私の母が、亡くなった姉の夫と結婚させられることになったらしい(二番目の伯母はその候補にも挙がらなかったらしい…よっぽどだったのでしょう)。
でもそんな風に結婚させられるのは嫌だ、ってことで、母、後先考えずに結婚した相手が他ならぬ父…。っていうか、結婚が先なのか、私という既成事実が先だったのかは不明である。それで父がいい人だったら白馬の王子様的な美談になるのだろうが、「お父さんを選んだのはただの勢い。人生最大の失敗」と私に語られても困るなぁと思うのだった。
リーが恋人と暮らしている家に来ているエリオット。
エリオットが好きなバッハがかかっている。
エリオットはリーに詩集を渡していた。その感想を聞く。
エリオット「カミングスの詩を読んだ?」
リー「ええ…すごく素敵」
いい雰囲気になるのを避けようと、あえて話題をそらすリー。
リー「それはそうと…私の通う歯医者には、ゲイの患者が多いの。先生たちは、みんなゴムの手袋をしてるのよ」
エリオット「そう…」
リー「……」
エリオット「詩集の112ページは読んだ?」
リー「ええ…。泣いたわ。美しくてロマンティックで…」
エリオット、その横顔を見つめながら、
エリオットM「キスしたい。ここはダメだ、場所を選べ…」
リー、本棚の方へ歩いていく。
そんなリーを見ながら、
エリオットM「微妙な状況だ。慎重に行動せねば…。そうだ、まず明日の昼食にでも誘ってみよう。断られた時の対応も考えておかねば。必要なのは、高度な駆け引きだ…」
本を持ってきたリー。
リー「これ読んだこと…」
と、リーが言い終わらないうちに、強引にキスをするエリオット。
リー「!!…」
★★★★★★★☆☆☆