『キッド』

1921年アメリカ映画 56分

監督:チャーリー・チャップリン

脚本:チャーリー・チャップリン

出演:チャーリー・チャップリン ジャッキー・クーガン 他


サイレント。浮浪者(チャーリー・チャップリン)が偶然捨て子(ジャッキー・クーガン)を拾ってしまい、育てているうちに情が移っていくんだけど、母親がそれを連れ戻そうとして、別れなければならなくなるという話。


ただそれだけなのに、なんでこうまで泣けるのか。もういいじゃんこれで。映画これでいいじゃん、宇宙人に「何?映画って」って聞かれたらこれ見せりゃいいじゃん。


などと思っていたら本編後になぜかイランの映画監督アッバス・キアロスタミのインタビューが入っていた。キアロスタミ…!!彼の「ともだちのうちはどこ?」こそ「映画ってこれでいいじゃん映画」の最高傑作で、私のベスト映画の一つでもあるんだが(でもDVD売ってない…こればっかりは是が非でも手元に置いときたいのでもう長いこと探し続けてるんですが)、そのキアロスタミが影響を受けたと語っていてなるほどと思った。


大体、台詞がないのにキャラクターやストーリーが完全に理解できるっていうのが凄い、と脚本を仕事にしている私は思う。矛盾して聞こえるかもしれないが、脚本で伝えるべきものって本当は言葉ではない。気の利いた台詞なんてものは表現のうちのほんの一部でしかない。ずーーっとパソコンに向かって書く作業ばっか続けてると、つい言葉で全てを語り尽くしてしまいたくなるけど、この映画やキアロスタミの作品を見てると、ああ映像表現の本質ってそういうもんだったなぁ、と、フッと視界が開けてくるような感じがする。


そしてそういう言葉を超えた映画ってなぜか可愛らしいのだよな。赤ん坊が無条件に可愛いのと同じで、そこには説明がいらない。ハリウッドの超有名子役となったジャッキー・クーガンのまー愛らしいこと。着てる服も何だかzuccaっぽくてお洒落。それと、寝てるチャップリンにジャッキー・クーガンがホットケーキ焼いてあげるシーンがあるんだけど、5歳でなんでこんなことできる?ちょっとこんな子私も欲しいんですけど。


そしてそれを見守る当時30歳のチャップリンが意外と凛々しいのにも気付く。連れ去られそうになる子供を追いかけるシーンは第一子を亡くしたばかりの彼のリアルな気持ちが反映されてるようで、ちょっと他のチャップリン映画では見ない切迫感がある。


うーむ。私も、うちの白猫が母猫に連れ去られたら泣くな。8年前、歌舞伎町の溝に生み捨てられ死にかけてたうちの白猫。兄弟たちに模様の統一性が全然なかったうちの白猫。ビッチな母猫が「やっぱあたし育てるわ。返して」って来たら…いや、もう死んでるか。


夢のシーンに出てくる天使の女はリタ・グレイ!チャップリンを破滅に至らしめた女として有名な人ですが、当時若干12歳。この頃から目つけてたんだもんな…。作品の良しあしはともかく、チャップリン映画ってそういうところでしんみりしてしまうことも多い。


   施設から子供を連れ戻しに来た職員二人と

   もみ合いになるチャップリン。

   子供が、職員の頭を殴る。

   その隙に立ち上がり、小麦粉の入ったボウルを持って

   職員たちを威嚇するチャップリン。

   そこへ警官も入ってくる。

   粉をかけるチャップリン。

   辺りは粉まみれ。

   だが職員たちは混乱の隙に子供を連れ去る。

   車に乗せられ、連れ去られる子供。

   チャップリン、追いすがる警官を払いながら、

   屋根伝いにそれを追いかける。

   先回りして車を見つけ、職員の一人を殴り落とす。

   抱き合う子供とチャップリン。

   キスをする二人。

   もう一人の職員がそれに気づいて振り向く。

   チャップリン、それを威嚇し、職員は走って逃げていく。


★★★★★★★★★☆