『未知への飛行』
1964年アメリカ映画 101分
監督:シドニー・ルメット
脚本:ウォルター・バーンスタイン
出演:ヘンリー・フォンダ ダン・オハーリヒー 他
こういう後味の悪い映画は久しぶり。ガーンと終わってゾゾーっと動けなくなる感じ。
闘牛場のオープニングから不吉。もっと言うと、画質が微妙に悪いところが不吉(狙い?)。冷戦下、間違って水爆を投下することになってしまったアメリカの苦悩を描いたサスペンスなんだが、世界規模の生きるか死ぬかがかかっているのに、ずーっと室内で限られた人たちが話しているだけ。死ぬほど息苦しくて地味な場面が続くのだけれど、実際地球の命運はこんな風にして決まっちゃうんだろうな、と思うとまた背筋が凍る。
この映画、「博士の異常な愛情」と題材と公開年度が全く同じ。原作が同じだったのか、その辺りの問題でひと悶着あったらしい。「博士の異常な愛情」は、映画を見始めたごくごく最初の頃に「これは好き!」と思った記憶があるのだが、その時の印象と、今回この映画を見た印象とは全然重ならない。たぶん、昔の私はキューブリック独特の外連味に反応したのだと思うけど、今一度「博士」を見返して違いを探ってみるのも面白いかもしれない。
キャラらしいキャラがいない。それぞれの場面の切り返しもとても速い。ちょっとした人間味は描かれているんだけど、誰かの感情を追うという形になっていないところが息苦しさを煽ってる。だけどそこがリアルなんだよな。当時の政治的緊張関係が感覚的に分からないというのもあって、とっつきにくさは感じるけど、考えてみれば北朝鮮のミサイル話だってこういうことだし…。ま、それを映画にしてもこういう端正な緊迫感は出ないんだろうけど。
モスクワとのホットラインで話すアメリカ大統領(ヘンリー・フォンダ)。
会話は通訳と。
通訳「これは、誰の罪でもない」
大統領「反対です」
通訳「誰も悪くないし…誰の責任でもない」
大統領「これは双方の責任です。我々は機械に頼りすぎた」
通訳「でも、これは事故だ」
大統領「二大都市が破壊され、数百万の人々が死ぬんだ。言い訳はきかん!認めんぞ!」
通訳「…分かってる。我々が兵器を持つ限り…」
大統領「起きたことには必ず責任が付いて回るものだ。このことから学ぶのか?同じことを続けるのか?我々はどうする?死者に何と言う?」
通訳「人間ならば…言うべきだ。二度と起こさんと。だが可能か?溝は深すぎる…」
大統領「努力して埋めるんです。壁を壊せばいいんです…!」
と、反応がなくなる。
大統領「どうした…?」
交換手「北東からの爆発音が聞こえます…!空が明るい、光ってる…!」
大統領「!…」
不快な高音と共に途切れる電話。
★★★★★★☆☆☆☆