『断崖』

1941年アメリカ映画 99分

監督:アルフレッド・ヒッチコック

脚本:サムソン・ラファエルソン ジョーン・ハリソン アルマ・レヴィル

出演:ケーリー・グラント ジョーン・フォンテーン 他


ダメな優男ジョニー(ケーリー・グラント)と駆け落ち同然で結婚したお嬢様育ちのリナ(ジョーン・フォンテーン)だが、あまりにも金にだらしなく口先ばっかのジョニーと暮らすうち、殺されるんじゃないかとだんだん思い始めるという話。


ハリウッドに渡って4作目の初期作品ということもあり、牧歌的っちゃ牧歌的。これ言っちゃうとおしまいな気もするが「ごめん!勘違いだった」で終わる話。進化の途上だったのだろう、「サイコ」の衝撃などとは比べるべくもない。でも最後の崖暴走のシーンは観覧車が物凄い勢いでぐるぐる回るやつ(「見知らぬ乗客」だったっけ…妙なテンションで面白かった覚えはあるんだが)を彷彿とさせる。ケーリー・グラントのダメ男っぷりも妙にリアルだし。個人的にはあんまり関わり合いにならないタイプのキャラだけど、こういう男いそう。こういう男に引っかかる女も。前情報なしに見たので、途中まではサイコスリラーっていうより「夫婦善哉」的な、ダメ恋愛を延々追ってく話なのかと思ってたくらい。


それにしても、やっぱりケーリー・グラントという人が不思議。この時代から既におっさんなんだよなぁ。「北北西に進路を取れ」とか「シャレード」より全然前なのに、印象がまるっきり同じなんだよなぁ。そしてやっぱり問答無用にカッコよく、女という女がメロメロになる、ってキャラ設定なんだよなぁ。男前の基準が違ったんだろうけど、よく分からない。大体、今こういう顔立ちの人自体あんまりいない気がする。強いて言えばジョージ・クルーニーか?


冒頭、二人が出会う列車の一等客室で、ジョニーが「切手だって通貨だ」と言って切符代を切手で払うくだりがあるんだけど、BBC版の「the office」でも同じような台詞があった。何か深い意味があるんだろうか。


ところで、脚本にクレジットされているアルマ・レヴィルはヒッチコックの嫁。ヒッチコックってほとんど自分じゃ脚本書いてなくて、なのに作品に一貫性があるのがいつもすごく不思議だったのだが、少し謎が解けた。


ヒッチコック作品はとにかく大事だと言われるのでちょくちょく見てはいるのだが、ハマるってことはない。でも何かの役には立っている…はず。その存在感は、まるで「今使っとくと絶対いい!」と言われて何となく使ってる高い美容液のよう。別に違いは感じないけど…とりあえずリピします。


   パーティを抜け出し、二人で車に乗ったジョニーとリナ。

ジョニー「車でキスしたことは?」

リナ「ジョニー…」

ジョニー「何?」

リナ「冗談は言わないで。答えに困るから」

ジョニー「冗談じゃないよ。車でキスしたことあるの?」

リナ「ないわ」

   ジョニー、車を止めてリナに向き合い、

ジョニー「してみたい?」

   頷くリナ。

   キスをする二人。

ジョニー「本心を素直に言った女性は初めてだ」

リナ「他の女性は?」

ジョニー「”イヤ”と言う」

リナ「でも…キスするのね」

ジョニー「普通はね」

リナ「たくさん…」

ジョニー「?」

リナ「たくさんしたの?」

ジョニー「まあね。かなりの数だ。眠れぬ夜に数えてみた。そしたら73で眠れたよ」


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