『狂った果実』

1956年日本映画 86分

監督:中平康

脚本:石原慎太郎

出演:石原裕次郎 津川雅彦 他


この当時、石原裕次郎22歳。輝いていらっしゃる。彼の魅力というものをこれまで実感したことはなかったが、そういうことだったんだな、と初めて理解。どことなく小栗旬に似てるような気もする。そして、弟役の津川雅彦は16歳。何と言うかクレイアニメのような質感。最近個人的にこの人に対して複雑な思いを抱いていたのだが、こんな時代もあったんですねと妙に大らかな気持ちになった。あと、岡田真澄も出てるんだが、これが大変カッコいい。しかし、岡田真澄と聞いて浮かぶあの姿(つまりファンファン)とは結びつかない。どういう経年変化をしてきたのか少し気になるところだ。


非常に不思議な映画だと思う。すごく変なんです。とんちんかんな柄シャツもハイウエストの海パンも、この人たちの暮らしぶりも何もかも。アメ車に乗ってクラブに行ってジャズで踊って「日本はつまらん国ですなあ」などとボヤいたりしてるのだが、どう見たって日本人。これ、狙いなんだろうか。ある意味とても残酷だ。こういうちぐはぐなイケてなさ、多分今だって何一つ変わってない。この映画に出てくる鎌倉の駅も逗子の駅も、今とほとんど変わりないのと同じように。


ラスト、モーターボートのシーンが凄い。男兄弟ってこういうもんなのか。うーむ。何か、今ある「嫌な感じ」の先駆けみたいな話だったなぁ。


   溜まり場で、退屈そうにしている夏久(石原裕次郎)の仲間たち。

仲間1「要するに、俺たちは退屈なんですよ」

春次(津川雅彦)「なら他にももっと何かすりゃいいじゃないか」

仲間2「他にって何を」

夏久「考えてみるとよ、その他にってのがねえんだよ。インテリどもが小うるさく言ってるものは言葉の紙屑みたいなもんさ。そんなものどんなに飾られて綺麗でもよ、結局はあの熱帯魚みたいに脆くて頼りねえものよ」

   夏久、インクのボトルを持って立ち上がる。

夏久「見ろよ。こうやって泳いじゃいてもよ、ちょっと水が濁ったり冷えたりすりゃ、じき死んじまうじゃねえかよ」

   熱帯魚の水槽にインクを入れる夏久。

春次「あっ…!」

夏久「昔と違って今の俺たちはよ、そんな上品な思想に溺れてられっかってんだよ。話すにしても考えるにしてもよ、もっと別にピリッとした言葉が欲しいじゃねえかよ」

   

★★★★★★☆☆☆☆