前回の記事を書いた時にはまだ言語化できていなかった部分についてつらつらと書いていきます。

 なお、現在は漫画を確認できない状態ですので記憶を頼りに書いていきます。覚え違いや抜けている描写があるかもしれませんがご容赦ください。どうしても許容できない間違いがある場合、優しく教えてください。

 

 私がフォスのことを「一生懸命やった、精一杯がんばった」と思えない一番の理由は、フォスがただみんなの役に立ちたいわけではなく「ある日突然大活躍できるようになってみんなをあっと言わせたい」という思いを動機としているように感じられるからです。もっと言うと、「大活躍だと感じられない仕事やみんなが感嘆してくれない仕事はやりたくない」という態度がわがままに見えるのです。

 どういう仕事なのか理解し分析した結果として「それはやっても意味がない」と判断したならまだわかります。あるいは手を付けてみた結果誰の助けにもならなかったのならその時点で投げ出したくなるのも納得がいきます。でも、博物誌の編纂を任されたフォスは最初からたいしてやる気も出さずに「地味でかっこよくない」という理由で嫌がるのです。

 さらに、重い腰を上げて仕事に取り掛かってからも新しいものを見つけることばかり考えて本来の仕事である「事物の詳細な記録をつけること」をしている様子がありません。できることをやりもしないで文句ばかり口にし、できないことを追いかける姿を見せられては何をどう頑張ったというのかわかりません。

 

 それでもフォスだけが地味で成果のわかりにくい仕事を任されたのであればまだ理解できます。でも、一度も襲撃があったことのない夜の見回りはどうでしょうか? ほとんど誰も読まない本を管理する仕事は? 大活躍に見えなかったり誰も感嘆してくれなかったりといった仕事は他にもあって、他の宝石たちはその仕事を全うしています。

 また、花形に見える戦闘員も「大活躍できるすごい仕事」というばかりではありません。強いが故に周りの粗が見えてしまって軋轢を生んだり本当はあまり向いていないんだけど硬度が高いからせざるを得なかったりと、みんな何かしらの葛藤を抱えながら戦っているのです。

 もちろん趣味と実益を兼ねた仕事に熱中している宝石もいますが、心の痛みを抱えながらもできることを全うしようとしている宝石たちもいる。そんな中でできることすらやろうとしないから「なんだコイツ……」と感じてしまうのです。

 

 フォスが自分から宝石たちとの関係を悪化させていったというのも引っかかるポイントです。

 最初の頃、何もできなかったフォスを宝石たちは気にかけていたし先生もそのままでいいと言っていました。「すごい、かっこいい、頼りになる」なんて言われることはなかっただろうけど、悪しざまに言われるようなこともなく存在を肯定されていたはずです。それで満足せず仕事をねだったのはフォス、そうまでして手に入れた仕事を気に入らないと放りだしたのもフォスです。

 そうやって不満ばかり口にしながら華やかそうなところに首を突っ込み、結果として周りの仕事が増えるのですからだんだんと腫れ物扱いになっていくのも当然だと思うのです。少なくとも私の記憶している範囲では、「ただ一生懸命やっているだけ」の誰かを疎む宝石はいません。

 

 SNSで、「誰の方が強いとか役に立つとかいった比較や承認は本来宝石生命体に必要ないはずのもので、人間が持ち込んだものだからフォスは『人間の価値観』という異物に振り回された被害者だ」という意見を見ました。確かにフォスは本来自分たちに馴染まないはずの概念がきっかけでずいぶん苦労したと思います。

 ですが、宝石たちは基本的に強さや貢献度に関係なく相手を理解し受け入れようとするキャラクターだったように思います。自分たちの心身を蝕む相手を持て余すことはあっても、「強いから好き」とか「地味でパッとしないから仲良くしない」といった価値判断はしていなかったのではないでしょうか。

 だから、フォスが他者と自分を比較して承認欲求に苦しんだとしても、それはフォスの心の問題で周囲に負わせるものではないと思います。周りはありのままのフォスをきちんと受け入れていて、それに対して「自分は弱いし役に立ってない」と人間の価値観を振りかざしていたのはフォスの方だと思うのです。

 

 人間の心と宝石の心が自分の中で衝突していたとしたら、それは望みだってわからなくなって当然だよな……と気の毒には思います。でもやっぱり周りの気持ちと向き合わなかった結果周りから気にかけてもらえなくなっていったことは自業自得。フォスに100%責任があるといった意味ではなく、「事情があったとはいえ周りにやってきたことが返ってきちゃったね。かわいそうだけど仕方ないね」ぐらいの感覚でいます。

 以上、長々とした追記でした。