先日のレッスンでの一コマ。

 

「あなたらしく歌ってみて!」

 

と投げかけた一言に

生徒が困惑していました。

 

今までクラシックの声楽をしていたこの方は、

他のジャンルの曲も歌ってみたいということで

ミュージカル曲に挑戦していました。

 

発声や体の使い方など

技術的なことはまだトレーニングが必要ですが

音程やリズムは完璧。

暗譜までしてみたけれど

いつこの曲を合格にするのか、

私は思い悩んでいました。

 

何かが足りない。

 

幼い頃から、ピアノや声楽を鍛錬してきたこの方はとても真面目で

練習もしっかりしてきます。

 

いろいろな音源の研究もして”より正確に”ということに気を配っています。

 

ただ、その結果、曲が完成しなかったのです。

 

歌っている本人の心が

その曲になかったからです。

 

彼女は私に

「クラシックの曲を歌う時、作曲家の意図することは?この曲の作られた時代背景は?

ということは言われてきたけれど、自分らしく歌うことなど考えた事が無かった。」

 

と言いました。

 

どうしたら自分らしく歌えるのだろう?

 

私は言いました。

 

「もっと自由に、表現してほしいの。

 頭で考えるのではなく、

 心が先行して、あふれだした物が声になり歌になってほしい。」

 

私はこう言って、曲の歌詞に対する彼女なりの解釈を話し合い

その状況を彼女の中で映像化していきました。

 

そして、彼女が歌う表現の一つ一つに質問をしていきました。

 

なぜそのブレスなのか。

なぜその子音のスピードなのか。

なぜその強弱なのか。

 

すると、曲の表現が言語として彼女の中に落とし込まれていき

初めてこの曲が彼女のものになっていきました。

 

誰かが作って、

誰かが演奏している曲を歌うとき、

 

自分の演奏までも、原曲側に置いて来ていませんか?

あなたの曲にして良いのです。

 

 

だって、芸術は自由なのですから♪