ドラマ『地獄に堕ちるわよ』
[ドラマ紹介]Netflix のオリジナル・ドラマ。あの細木数子の生涯を描く。細木の自伝小説を依頼された新人作家のインタビューに答える形で展開する。戦後の焼け野原で飢えを知り、貧しさから脱するために高校を中退して夜の街で働きはじめ、20歳そこそこでクラブを次々と成功させて「銀座の女王」と呼ばれる。その過程で、田舎の資産家の息子と結婚したが、数子を跡継ぎを生む機械と見ていたことに気づいて一週間で逃げ帰る。ナイトクラブの共同出資者に騙され、裏世界の人物と関わりを持つ。やがて、占いに目覚め、10年かかると言われる学習を1年で終了し、夜の街で培った人心掌握術を駆使して" ズバリ言うわよ" と歯に絹着せぬ言葉で一世を風靡。数々の預言と、" 大殺界" や" 地獄に堕ちるわよ" などの不吉で無遠慮な警告を発して、高い視聴率を持つタレントとしてテレビ局に君臨したが、先祖供養に名を借りた高額な墓の購入など、占いに付随した霊感商法や裏社会とのつながりといった、黒い噂が囁かれ、テレビから引退。その後も占い本が売れに売れ、著書がギネス世界記録を樹立するほどだった。という過程を戦後復興期の新橋、銀座、赤坂を舞台に描き、戦後日本史と重ねて描写する。高度成長期とオイルショック、バブル経済期といった、昭和から平成にかけての60年にわたる風景を背景にして厚みがある。原点を聞かれて「飢え」と答えたように、戦後の混乱期に少女時代を過ごしたことが原点。「だます方より、だまされる方が悪い」という世界観で人を騙し、利用する。普通、こういうドラマは、感情移入させるもので、自然、主人公に好感がもたれるものだが、全く共感はできなかった。視聴者の関心である占い師としての部分は、全9話のうち、ようやく8話で登場する。島倉千代子との関わり、政界に影響力のある思想家・安岡正篤(やすおかまさひろ)との結婚騒動など、初めて知った。島倉千代子は実名で、安岡正篤は安永正隆と名前を変えているのは、いかなる配慮か。認知症につけこんで、結婚の約束をさせて、安岡正篤のような人物の晩節を汚すなど、許されることではない。細木数子は戸田恵梨香が演ずるが、最後まで違和感がつきまとう。島倉千代子役は三浦透子。これも適役とは言えず。自伝小説を執筆する作家・魚澄美乃里を伊藤沙莉が演ずる。細木が生涯愛した江戸川一家総長・堀田雅也役に生田斗真、監督(瀧本智行、大庭功睦)のセンスはいい。初めてキャバレーにデビューする時のカメラワークや島倉千代子のコンサートで控室から通路を通って舞台までを私の好物・ワンカットで描くなど、かなりの工夫の跡が見える。脚本は真中もなか、音楽を手掛けたのは、稲本響で、意表をつく音楽を展開する。Netflixオリジナルドラマなので、制作費は潤沢らしく、銀座の町やナイトクラブはセットを組んだようだ。全9話、8時間18分。細木は2021年11月8日、呼吸不全で都内の自宅で死去。83歳。「呼吸不全」とは?なお、私は四柱推命は多少真実を突いている気はするが、あらゆる占いには否定的で、阪神・淡路大震災や東日本大震災を予見できなかったことで、全員占い師をやめて他の職業につくべきだと思っている。