[映画紹介]



今、最も注目される日本人監督、
「ドライブ・マイ・カー」の濱口竜介監督の最新作。

おかしな題名だな、と思ったら、
原作通りの題名なのだった。(意味は、後述)

パリ郊外の介護施設「自由の庭」で
施設長を務めるマリー=ルー・フォンテーヌは、
入居者を人間らしくケアすることを理想として、
就任後改革を目指していたが、
人手不足やスタッフの無理解に悩まされていた。
特に経験豊かな古参の介護師の反発がきつかった。

そんな中、観劇の誘いを受け、
日本人の舞台演出家・森崎真理と出会う。
「マリ」という同じ響きの名前を持つ二人は
急速に交流を深める。
真理はステージⅣのガンを患い、転移もあり、
“急に具合が悪くなる”と、もう長くない、
と医者から宣告されている。

マリーの介護施設改革の奮闘、
独創的な舞台劇を作り続ける真里の活躍の中、
二人の関係は深まり、魂がふれあうようになっていく。

原作はがんの転移を経験しながら生き抜く哲学者・故宮野真生子と、
臨床現場の調査を積み重ねた人類学者・磯野真穂が交わした
20通の往復書簡「急に具合が悪くなる」が原作。


偶然出会った二人の女性の交流と世界に対峙する姿を描き出す。
原作は未読のため、なんとも言えないのだが、
日本人の哲学者と人類学者の交流だから、
介護施設、劇団などは関係なく、
フランス人と日本人の交流への置き換えなど、
かなりの脚色が加えられているのだろう。
脚本は濱口竜介とルディムナ玲亜

認知症の入居者を多数抱える介護施設の内情と軋轢という、
あまり目にすることのない設定が目を引く。
異国での一人芝居と即興演劇も興味深い。
3時間16分と、かなり長い作品だが、
設定がユニークなため、特に退屈はしなかった。
(眠くならなかった)
フランス語と日本語が混在するという
難しい撮影だが、
濱口竜介の演出力で見せる。
ただ、資本論と民主主義の考察など、
刈り込める部分はあるのではないか。
それとも、原作でそういう展開があるのだろうか。

舞台を日本に移して、
京都の田舎で二人暮らしをする姿が美しい。


“急に具合が悪くな”った後なので、
真理には死の恐怖があったはずだが、
友情がそれを超越する。
故郷の田舎の景色を遠景に、二人が語り合う場面は胸を打つ。
足裏マッサージという手法が、後で介護の現場でも取り入れられる。

ビルジニー・エフィラがマリー=ルーを


TAOこと岡本多緒が真理を演じ、


二人揃ってカンヌ国際映画祭の女優賞を受賞。
一人芝居の俳優役で長塚京三が出演。
フランス語はどこで習得したのだろうか。

日本、フランス、ベルギー、ドイツによる国際共同製作。
濱口竜介監督らしい作品を堪能した。

5段階評価の「4」

TOHOシネマズ他で上映中。